病院 医療相談開発部 心理 | 四ノ宮美恵子・山田麗子・土屋和子・川嶋明子・緑川晶・尾崎聡子・乗越奈保子 |
高次脳機能障害を有する患者が自己の感情表出や他者の感情の読みとり・共感を困難とするところから、2000年秋より以下の目的でグループ指導を開始した。グループ指導のプログラムは心理で開発したオリジナルプログラムである。
(1)自己の感情の気づき・表出
(2)他者の感情の読みとり・共感
(3)対人関係スキルの向上
(4)障害認知・受容
(5)退院後の生活への動機付け
(6)記憶の補償手段の活用
(1)セルフイメージ・ワークショップ(@〜だった時の私 A自分史年表づくり):
発症前と現在の自己のイメージを家族、職場(学校)、友人関係など場面に分けて言語化(@)誕生から現在までの自分史を作成し様々なエピソードを想起する(A)などで患者のセルフイメージを視覚的に整理・統合して前後の違いを明確化し自己認知を促進する。
(2)今週の喜怒哀楽*:
グループ指導前1週間に体験した出来事の中に自分が感じた喜怒哀楽について3分間スピーチのかたちで発表する。特に日常生活の状況を掴みにくい外来患者に対して実施。
(3)フィーリング・フォーカス・グループメソッド(FFGM)*:
参加者全員に同じ刺激(かざぐるま 温かいお茶 波の音 テディベアの親子 蝋燭の火、等)を呈示し、思い浮かんだ感情について発表する。
*(2)(3)は発表の内容を聞き手はメモし、それに基づき話し手に発表の内容とどんな気持ちが伝わったかをフィードバックする。その後内容についてお互いにディスカッションを深める。
@スピーチやその後のディスカッションを通じて自己の感情表出が増え、さらに他者の感情に共感する言葉が出るようになる。
Aスピーチのメモの仕方が各人各様に工夫が見られるようになりメモの正確性が増す。
BセルフイメージワークショップやFFGMでは過去を思い出すことにより「今(現在)」が「過去の延長線上にある」という連続性の認識を深めることが出来る。
Cセルフイメージ・ワークショップでは時系列的記憶を整理することによって見当識障害の患者に現在の自己に対する認識を促すことが出来た。
今後は、患者に適したグループ指導開始時期の検討、プログラム開発、心理グループ指導の効果測定法についての検討を重ねていきたい。