感覚機能系障害研究部を紹介するページです。 【画像】 感覚機能系障害研究部のシンボルマークを左上に掲載しています。 耳のマークです。 【ミッション(使命)】 感覚障害、伝達障害に対するリハビリテーションと科学的基礎の確立をしています。 【研究方針】 聴覚障害、視覚障害、吃音のある者の障害(1次および2次)の予防・治療・ リハビリテーション技術の開発と社会参加の支援に寄与することを目的とし、 調査・研究を通じて科学的エビデンスの構築・発信を行うこと。 【部の詳細説明】 感覚機能系障害研究部には、3つのプロジェクトがあります。 各プロジェクト毎に説明します。 【聴覚障害の病態解明に関する研究】 加齢性難聴などで蝸牛の有毛細胞と聴神経の繋ぎ目であるシナプスの異常が指摘 されています。感音難聴には特効薬が無いため、病態を解明した上で創薬や補聴 器・人工内耳などのリハビリテーション開発を進める必要があります。私たちの 研究室では、難聴モデル動物を用いて聴覚障害の病態解明ならびにシナプス機能 診断法の開発に関する研究を進めています。 【画像】難聴の病態メカニズムを解明するために、ガラス電極を内耳にある有毛 細胞に当てて、有毛細胞の活動を記録しています。 耳の構造の説明です。外耳道の奥に鼓膜があり、鼓膜から奥が中耳と 言われます。鼓膜と内耳の間にある架橋構造の耳小骨があり、耳管によって 鼻の後ろ側につながっています。中耳のさらに奥にある内耳には、蝸牛 といううずまき状の器官があります。蝸牛の中には聴こえの感覚細胞である 有毛細胞が多数あり、有毛細胞はシナプスを介して聴神経とつながっています。 神経生理学的手法による聴覚障害の病態を解明するため、有毛細胞と 接しているシナプスに記録電極をあてることで、有毛細胞の活動を記録 しています。 これらの基礎研究のゴールとしては、難聴患者の方から採取した細胞を もとにiPS細胞を作製し、有毛細胞様iPS細胞を作製することで、病態診断 ができるようにするなど耳鼻科臨床への応用を目指します。 【網膜の変性と再生に関する研究】 外界の情報の多くを視覚を通して得ています。視覚刺激としての光は最初に網膜で 受容されるので、網膜が不可逆的な変性に陥ると見えにくくなります。網膜色素変性 は、網膜視細胞が徐々に変性脱落することによって、夜盲や視野狭窄などが徐々に 進み、見えにくくなる遺伝性の病気で特効薬がありません。分子生物学的手法によっ て網膜の変性と再生に関する研究を行い、新しい診断法・新しい治療法・新しいリハ ビリテーション方法の開発を目指しています。 ■網膜視細胞の再生に関する研究 ●ヒト体細胞(虹彩細胞、皮膚線維芽細胞、末梢血単核細胞)から“ダイレクト・リ プログラミング”(直接的な分化誘導)と呼ばれる方法で、光に応答する視細胞様 細胞に分化誘導することに成功 ●誘導視細胞の質の向上に取り組むとともに、この分化誘導の方法を網膜の変性に 関する研究に応用(変性視細胞モデルの作製と解析) ■網膜の変性に関する研究 ●網膜色素変性の新規診断法・治療法の開発を目指し、当センター病院眼科に受診 された患者様から血液の提供を受け、既知の原因候補遺伝子の塩基配列に変異が 無いかどうかを調べ、EYS遺伝子に高い頻度で変異がみられることを発見 (Iwanami et al., 2012, 2019) ●再生技術を応用し、網膜色素変性患者の皮膚線維芽細胞から視細胞様細胞(変性 モデル細胞)を作製・解析。さらに、ゼブラフィッシュで網膜色素変性モデルを 作製・解析。細胞モデルと動物モデルを解析することによって、網膜色素変性の 進行を遅くすることをめざしています。 【発達性吃音の機序解明と支援体制の確立】 言語障害の中でも、吃音に特化して研究を行っています。吃音の多くは、言語を含む 各側面の発達が急速に生じる幼児期に発症します。そして、その症状は成長とともに 消失することがある一方で、成人期まで続くこともあります。当研究室では、この 吃音のメカニズムを生理学的側面から明らかにするとともに、幼児期から成人期まで の各ライフステージにおいて、社会モデルにおける障害をなくすことを目的に研究を 進めています。 ■MRIによる吃音のある成人の脳計測 【画像】MRIで撮影した拡散テンソル画像です。 ●発話に関連する脳領域間の結合性の低さと吃音の関連が指摘されています ●MRIを使って神経線維の走行を調べます ■ライフステージに沿った支援の確立 【画像】ライフステージに沿った支援のイメージ図です。 幼児期向けには、情報提供資料を作成しています。 学齢から青年期に向けては、吃音がある人に対するいじめ対策と、 支援体制の確立を目指します。 また、成人期に向けては就労の支援を目指します。。 ●各ライフステージにおいて、吃音によって引き起こされる生活上の困難を 明らかにします(実態調査) ●それらの困難を解決するための支援方法・支援体制の確立を目指します (介入の効果検証、情報提供資料などの作成)