高次脳機能障害の診療に係る実態把握と課題の検討のための研究

研究代表者 今橋久美子

研究の目的

 高次脳機能障害は、早期に診断や治療につながらない例や、その後の支援が途絶する例も少なくない。本研究は、診断・支援の実態と支援途絶の要因を明らかにし、課題を検討することを目的とした。

研究でわかったこと

 全国の高次脳機能障害支援拠点機関等約120か所を対象に質問紙調査を行い、令和5年度来談者のうち診断を受けた1,271例について、基本属性、診断までの経過、相談機関、支援途絶の状況、生活状況等を記録に基づき収集した。初診遅延要因はロジスティック回帰分析で検討した。
 対象者の75%は発症から2年以内に診断可能な医療機関へ到達したが、支援が途絶えた時期は急性期治療終了後(28%)が最も多く、次に回復期終了後(16%)が続いた。急性期病院退院時に支援機関等の情報提供があった割合は22%にとどまり、半数が不明であった。一方で回復期病院退院時には60%が情報提供を受けていた。初診遅延には①退院時情報提供の欠如、②若年発症、③頭部外傷・脳腫瘍が有意に関連した。途絶理由は「障害の指摘なし」「本人の必要性の欠如」「問題の未顕在化」が多く、影響として就労困難や家族関係悪化があり、約9割に社会参加の制限が認められた。
 急性期・回復期から生活期への移行時に情報提供が不十分であることが、診断・支援開始の遅れを招く主要因であった。また、頭部外傷・脳腫瘍、小児例では診断・支援につながりにくく、医療・福祉・行政・教育・就労支援機関等との連携不足が背景にあると考えられた。

結論

 本研究は、診断・支援の実態と構造的課題を明確にした。特に医療機関退院時情報提供の不足は支援開始遅延の中心的要因であり、制度的標準化、連携強化、地域ハブ機能の整備が早期支援と社会参加促進に寄与すると考えられる。
 研究報告書は、厚生労働科学研究成果データベースに掲載されている。