国リハニュース

第372号(令和5年春号)特集

特集『小児筋電義手の普及』

義手の種類と小児筋電義手の仕組み

研究所 義肢装具技術研究部 主任義肢装具士 三ツ本 敦子

1 義手の種類と筋電義手について

 義手の種類には「能動義手」、「作業用義手」、「装飾用義手」、「電動義手」があります(図1)。能動義手は肩の動きを利用し、手先を動かすシステムです。作業用義手は、手の先端が特徴的な形をしたものが多く、作業のしやすさを優先した義手であり、子どもの場合は運動時に装着することが多いです。装飾用義手は、外観を整えることを目的とし、手の形状をしています。電動義手は、バッテリー等の電源を搭載した義手です。

 筋電義手は電動義手に属します。最も普及している小児筋電義手は、手を「開く」、「閉じる」という2つの動作を子ども自らが制御することが可能です。2つの動きしか出来ない、と思われがちですが、単純な動きのほうが、子どもにとって学習しやすいというメリットがあります。小児筋電義手の部品とその動かし方について、ご紹介します。

図1 小児義手の種類
図1 a)能動義手の写真

図1 a)能動義手

図1 b)作業用義手の写真

図1 b)作業用義手(マット運動や鉄棒で使用)

図1 c)装飾用義手の写真

図1 c)装飾用義手

図1 d)電動義手の一種である筋電義手の写真

図1 d)電動義手(写真は筋電義手)

2 小児筋電義手の部品について

 日本で提供されている小児筋電義手は、ドイツのオットーボック社の部品で構成されています(図2)。その構成は、手に相当する電動ハンド、手首に相当するリストユニット、生体信号を読み取る電極、そしてコントローラーとバッテリーです。これらをケーブルで繋ぎ、グローブを着けると、図1 d)のような見た目になります。

 充電方法は、携帯電話と同じです。小児筋電義手のバッテリーは、家庭用のコンセントにつないだ専用の充電器の先端を電源スイッチに繋ぐことで、充電されます。

 小児用の電動ハンドは4つのサイズがあります。一番小さなハンドは、1、2歳から使います。その後、成長に応じてサイズを大きくしていき、小学校の高学年になると、サイズが合わなくなるため、成人用の電動ハンドへ移行します。

図2 オットーボック社の小児筋電義手の部品の写真

図2 オットーボック社の小児筋電義手の部品

3 筋電義手の動かし方

 筋電義手は、腕の筋肉を動かしたときに発生する微弱な電位を利用して、電動ハンドを動かします。皮膚の表面でこの微弱な電位を検知することができ、電極と呼ばれる部品で検出しています。よって筋肉を動かすと、これがスイッチとなり、電動ハンドが閉じたり、開いたりします。この筋肉の動かし方を学習するには、一定期間の訓練が必要です。

4 技術の限界について

 人の手の関節はたくさんあり、巧緻な動きをすることができます。しかし現代の義手の技術では、まだ人の手のような複雑な動きまでは再現できていません。それでも、筋電義手を使っている子どもたちにとって、筋電義手は便利な相棒と感じ、遊ぶ時や勉強する時に使われています。