[随想]
信州のミシュラン
指導部 相談判定課長 轟正克



 3月の声を聞くとわくわくする、何かよいことが いっぱいありそうな気がする。 数年前にある団体 に出向し、健康づくり・生きがいづくりの仕事をし ていたとき、趣味を持つのは多いほどよいと聞かさ れていた。
 趣味はいくつか持っているが、渓流釣りは数少な い楽しみの一つで、3月は釣りを兼ねて長野の実家 に行くことが多い。
 あのあたりでは少し山に入るとヤマメやイワナな どちょっと珍しい魚が釣れる。 @イワナ:河川の 上流域に棲息し非常に敏捷でどう猛、肉食性で小魚 や蛙はもちろんネズミやヘビまで食べることがある という。
 東京の飲み屋ではイワナの塩焼き2千円なんてと ころもあるとか、志賀高原では600円ほどで食べ られる、Aヤマメ:イワナの棲息域よりやや下流域 に棲息、養殖され、スーパーなどにも時々並ぶ、味 はイワナ以上とか以下とか議論のあるところ、ヤマ メの中に海に向かうのがいてこれが成長するとサク ラマスとなり、マス寿司になるとテレビでやってい た、Bニジマス:全国の河川に放流され、かなり大 型になるが釣人にはあまり歓迎されない。猿が露天 風呂に入っているポスターでおなじみの湯田中温泉 界隈で夕食に必ずついてくるのがこのニジマスの塩 焼。

筆者がつり上げた魚


 魚が釣れなくなると山菜を採ることになるが、こ れがまた結構楽しい。3月はフキノトウぐらい、4 月5月はコゴミ、カタクリ、タラの芽など種類が多 くいくらでもとれる。 6月の雪解けをまって山に入 るのは竹の子採り(小指ほどのネマガリタケ)、こ れはタケノコ汁にするとかなりうまい。ネマガリタ ケに鯖缶をいれて味噌で煮るだけというごく単純な ものであるがこれはおすすめ。
 好みにより、こんにゃく、里芋などを入れる家庭 もあるがシンプルがよい。 間違っても鮭缶やマグ ロフレークなどを使わないように、鯖缶、それも水 煮でなければいけないのです。


 このほか捨てがたいのがアケビの若芽のお浸し、 ほろ苦い若葉の香りはさすがというべきか、ただし 量がすぎると下痢をするらしい。 そういえば信州 のキノコという図鑑に「ベニテングタケ:一部の地 域では2ヶ月以上塩蔵し食用にすることもあるが本 来毒キノコである。中毒症状には個人差があり、下 痢が続いて苦しむ人と腹痛程度ですむ人とがある。 体調にもよるが重い症状になることもある」とあっ たが、むしろ「正しいベニテングタケの食べ方」を こそ記載してほしかった。北陸の方でフグの卵巣と かを数年間ぬか漬けして毒を抜き、珍重するとテレ ビでやってたけど、「その味一死に値す」ほどでは ないにしてもベニテングタケは美味だそうである。


 山菜も採れないときは、駅前で土産を買うことに なる。信州土産といえば、そば、野沢菜あたりが一 般的で無難だが、おすすめは栗かのこ。葛飾北斎と 町並みで有名な小布施町で作られる栗かのこは少々 値ははるが、おみやげにはかなり喜ばれるものであ る。
 小布施町は関東甲信越小さな旅でも何度か取り上 げられているところで、取材先の家庭にはNHKか らお礼にラジカセ、ポット、電気毛布が贈られるそ うだ。
 また、善光寺境内での七味唐辛子も好評である。  境内で買うと600円だが同じものがスーパーで4 00円で買える。
 変わったところでは蚕のさなぎ(製糸後にさなぎ が残るのです)や蜂の子、イナゴの缶詰があり、根 強い人気を持っている。
 特に蚕のさなぎは母乳の出がよくなるそうで、乳 児のいる家庭ではお母さんによく食べられていると か、また、蜂の子は昭和天皇が好まれたとかの話が 伝わっているそうだ。
 缶詰といえば数十年前、セミはリンゴの害虫とい うことにされて、子供たちが捕らまえたセミの幼虫 (羽化する前の殻をかぶっているもの、アブラゼミ が多かった)を農協が買い上げて缶詰にして売りだ したことがあったけど、全く売れなかったそうで1 回でやめたことがあった。


3月は釣りの解禁の季節であり、今年はどこの谷 に入ろうかと思案しつつ、雪の中で思いきり釣りを 楽しみ、英気を養ってこようと思っている。