〔研究所情報〕 |
研究所 補装具製作部紹介 |
補装具製作部 |
歴史
補装具製作部の前身は、傷痍軍人に対する義肢供給のための陸軍
直轄工場としてスタートし、障害者に対する義肢装具の製作・修理、
技術者に対する研修の場として機能してきました。昭和54年に所沢
に移設後は研究所の部門として臨床だけでなく、調査・研究にも深
い関わりを持つようになりました。
現在は業務の中心を個人に対する製作修理から障害者のための
臨床業務と補装具に関する総合的な調査研究に移行して、補装具
ユーザー全体の貢献を目指しています。
業務
臨床では従来から切断症例が多く、病院のブレースクリニック
(平成5年開始)やシーティングクリニック(平成10年開始)での
検討をへて、質の高い義肢の提供を行っています。この中には少数
例や多肢切断等の特殊例も多く、調査研究を進める上でも重要な
要素となっています。製作に際しては作業環境の改善として、
集塵排気システム・衛生管理面の検討整備を進めています。
特に安全面の管理については学院義肢装具学科と共同で、検討整備
を行いマニュアル化しています。
上肢障害に関しては義手の構造的な改良や、自動車訓練室と共に
運転用の特殊な義肢装具を製作する等、日常生活の向上を目指して
います。また普及の遅れている電動義手の試用評価を行うと共に
電動義手の普及に関する調査等を行ってきています。
下肢障害に関しては、日常生活動作のサポートのみならずスポーツ
や、趣味に対応する義足の製作も行っています。一般的なスポーツの
中でもスキーなど特殊な機能を要求される場合には、障害者の立場で
問題点の調査とその対応法をまとめ、部品開発を行っています。
また人体と義肢のインターフェースとして重要なソケットついては
適合状態の客観的把握のための技術開発、迅速に適切なソケットを
製作するための機器開発を行っています。これら適合に関する研究を
進めるにあたり、評価基準に必要な要素の確定のために切断者の
個別性に適した足部の選択基準、義足全体の完成度に関する満足度
の調査等を進めています。
シーティングに関しても、臨床を通じて得た経験を生かし、
厚生労働省の座位保持装置試験評価基準の作成に協力しています。
また補装具・姿勢保持装置については厚生労働省の完成用部品
指定申請に関わり、基礎資料の作成を行い行政への協力も行って
います。
このように蓄積した技術は学院授業、各種研修会の講師として
伝達を行っていますが、毎年夏から冬に行っているJICA補装具
製作技術コース(昭和56年開始)では途上国に向け製作技術の
伝達を担当しています。今までの研修会の実施、過去のフォロー
アップやアンケート調査の結果から、各国の経済、技術レベルが
上がってきたこと、帰国研修生の所属機関の定着率が高く再研修の
要望が多いことが上げられています。今後は義肢の訓練を含め、
国情に合わせた技術伝達の検討が重要と思われます。
以上のように障害者福祉に広く貢献できるよう努めています。
最後になりましたが、昨年は展示室を設け、先に示した開発品や
歴史的価値のある義肢を閲覧できるようにしております。
是非お立ち寄りください。