平成16年度国立身体障害者更生援護施設理療科教官研修会を終えて |
理療教育部 教官 加藤 麦 |
去る7月26日(月)から30日(金)までの5日間、厚生労働省との共催で
「国立身体障害者更生援護施設理療科教官研修会」が当センター本館大会議室を中心に
開催されました。当センター理療教育部の教官をはじめ、函館視力障害センターから
3名、塩原視力障害センターから4名、神戸視力障害センターから2名、福岡視力
障害センターから3名の先生方が参加されました。また、今回は他施設への情報発信と
情報交換を目的として、厚生労働省所管の視覚障害者を対象とするあはき養成施設で
ある、ヘレン・ケラー学院と広島聖光学園の先生方も参加していただきました。
今年度は、「視覚障害リハビリテーションと教育の基本に立ち返る」というテーマ
を掲げ、研修会中期計画に基づき重点科目として衛生学・公衆衛生学、
リハビリテーション医学、臨床研修として健康医学及び産業衛生と理療施術の各分野
を中心としたプログラムを企画し、さらにワークショップと研究発表・研究討議を
盛込んだ幅広い内容となりました。
まず1日目は「ICF(WHO国際生活機能分類)の意義−障害者支援のための
共通言語として」というテーマのもと、日本社会事業大学の佐藤久夫教授の講演が
ありました。ICFの成り立ち・分類という基本的な内容から、具体的な活用の仕方まで
講演していただきました。障害者の支援に携わる理療科教官もこれらの国際的な動き
に対して、敏感に対応していかなければならないと痛感させられるものでした。
2日目の午前は研究発表と研究協議として分科会形式で行われました。「衛生学・
公衆衛生学」、「リハビリテーション医学」、「各科目における受験対策」の3つが
計画され、各センターからの発表をもとに研究協議が行われ、各センターや各科目に
おける問題点の抽出、あるいは授業の進め方や対策などディスカッションが活発に
行われました。また、午後からは昨年度の研修会からの継続で北京中医薬大学の
邱紅梅先生の講演が開催されました。「中医学的診断と食養生U」ということで、
日本人に多くみられる中医学的体質と身近な食材を用いた食生活の改善方法を紹介
していただきました。
3日目は「新しい臨床医学教育」として一日を通してワークショップ形式で
行われました。弘慈会加藤病院の植村研一院長をお招きし、教育目標や行動目標など
をグループ討議し、発表するカリキュラム・プランニングが行われました。
またグループ討議の間には植村先生からアメリカの医学教育や、浜松医大での医学教育
の実践などの紹介もあり、理療教育のあり方について考えさせられる示唆に富んだ
内容でした。
4日目は臨床研修として午前中は分科会形式、午後は全体での研修として行われました。
分科会は当センター理療教育部の柳澤主任教官による「基本動作訓練の評価と指導」、
芦野教官による「視覚障害者のための灸頭鍼施灸具の紹介」の2つであり、各会場とも
熱心に実技に取り組む参加者の姿が印象的でした。午後は「ニンニク灸の理論と実際」
について黒須鍼灸院の黒須幸男先生により実演していただきました。臨床経験豊富な
黒須先生の身近なものを使った工夫やアドバイスなど、すぐに臨床で実践でき教育の
なかでも活用できる講義と実技でした。
最終日の5日目は、翻訳家であり鍼灸師である上野圭一先生によるホリスティック
医学についての講演でした。上野先生はアンドルー・ワイルの著書の翻訳で有名であり、
講演の中でもワイルの経歴と功績について紹介していただきました。また、
ホリスティック医学の概要や自然治癒力というものについてもワイルの研究をもとに
お話していただきました。
今回の研修会では各センターからの発表やワークショップなどこれまでにない形での
研修会が開催できましたが、この研修会が各センターの研究・業績の発表や
ディスカッションの場として、また今後の理療教育のあり方について語り合える場として、
更に発展させて行きたいと考えております。
最後に、開催にご協力いただきました他部課の職員各位に感謝申し上げます。