創造と変革 |
前総長 佐藤 德太郎 |
80か月に及ぶ在任期間には、リハセンター関係者のご協力を頂き、お陰様で
大過なく退官できますことに感謝致します。
岩谷新総長と各所属長はすばらしい経験と実力のある人々であり、リハセン
ターのさらなる発展を期待いたします。
さて、国内外からの多くの視察者はリハセンターのバランスの取れた構成が
すばらしいと言われます。病院、更生訓練所および職リハによる医療から就労
への連続的な支援体制とリハビリテーション医療技術や福祉機器等の研究・開
発とその実証を行う研究所からなる組織は理想的なものといえます。学院が併
設されていることの意義について私はあまり強調してまいりませんでした。し
かし、センターに教育機能があることも非常に重要なことと思っております。
学生を指導する立場で行う病院における実際の医療活動の中から新しい発見
をする。あるいは新しい、正確な知識を伝えて国家試験の合格に導く緊張感。
また、真摯に学ぼうとする学生が実習する姿をセンター内で目にできる。さら
に、色々の分野の方々がそのような学生への教育の一部を分担している。私は
学院における教育活動が醸し出すこのような無形の価値はリハセンターにとっ
て重要なものであると考えております。また、学院の教育活動をセンター全体
で支えて行くことに代表される各部所間の協力関係が極めて重要です。
センターの創設から約20年間に更生訓練所において訓練を受けた特殊ケース
の約50%が一般企業に就職していることについてはすでに昨年のリハニュース
に書いておりますが、脳原性運動機能障害でTIQ70未満では60%、精神障害合併
例では44%、外傷性脳損傷では54%が一般の企業に就職しております。この数
値は大変すばらしいものであり、国内外の報告と比べても決して引けを取らな
い1級のものと思います。
このような見事な成果の源流はどこにあろうかと考えるに、戦後の復興のエ
ネルギーではないかと思われます。経済大国に成長するまでの戦後復興のエネ
ルギーは福祉分野にもあり、統合された在京3国立施設の発展には多くの方々
の英知と情熱が注がれ、単に更生援護にとどまらず、そのための研究や教育に
も取り組まれており、そのような3施設の成果がリハセンターの創設とその後
の活動の母胎となっていたと思われます。私がセンターに参りました頃には統
合前の旧施設でも活躍された古武士が多くおられ、旧施設を充実させた自負を
もってリハセンターの運営に当たっておられました。旧施設時代の人は年々少
なくなっており、私が在任した期間は丁度潮の変わり目に相当する時期であっ
たように思います。また、新旧交代の時期が、社会福祉基礎構造改革のうねり
とほぼ一致していたようです。そして、今、医療・福祉制度が大きく舵を取っ
ており、変革期の真っ直中にあります。
創設期と変革期を建設に喩えれば、創設期は新しい場所への新設、変革期は
現地再開発と言えると思います。この変革期には現地再開発を進める際に遭遇
するような数々の困難が伴いますので、創設期に劣らぬエネルギーが必要です。
幸いにも、岩谷新総長をはじめ実行力のある人々が今後のリハセンターを導
いてくださいます。そして、すでに今後の活動の手始めとしての具体的プロジ
ェクトも新しく定められております。リハセンターの立派な伝統にさらにすば
らしい年輪が加えられて行くものと信じ、期待を持って見守らせていただきます。