〔学院情報〕 |
盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者研修会について
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研修担当責任者:学院視覚障害学科 教官 松崎 純子 |
「平成20年度 盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者研修会」が前期6月2日(月)から6日(金)と後期11月17日(月)から21日(金)のあわせて10日間、当学院で開催されました。
今年度は東京都・埼玉県・千葉県の3県から9(8)人、鹿児島県を最南端に、関西以西から7人の、前期16名、後期15名の方が受講されました。
当研修会は、各自治体の盲ろう者通訳ガイドヘルパー養成のための指導者を研修することを目的に、平成9年度から始まりました。今年度で12回目を数え、盲ろう者福祉の発展にともない研修会の内容が少しずつ変わってまいりました。今回はその内容についてご報告致します。
第1回目の研修会は10月下旬に5日間開催され、全国から33名の参加がありました。実施内容は、盲ろうリハビリテーション論、盲ろうの言語理解・盲ろう児の教育・ろう文化・コミュニケーション論・全国盲ろう者協会についてなど(講義12時間)、盲ろう・弱視ろう疑似体験(実技10時間)、盲ろう者とのコミュニケーション体験(実技4時間)、コミュニケーション機器について(演習4時間)、盲ろう者との交流(1.5時間)というものでした。ハードな日程にもかかわらず、受講生から「盲ろう者のコミュニケーション手段の実際をもっと入れて欲しい」という強い要望があり、翌年より前後期あわせて10日間で実施することになりました。自らも通訳介助ができ、地域に戻って伝達講習ができる人材育成を目的として、前期は多様なコミュニケーション手段のガイダンスを、後期は通訳と移動介助技術の実技実習を中心に日程を組み立てました。
当時は、平成8年に東京都と大阪府で通訳介助者の派遣事業が始まり、地域に盲ろう者友の会などの団体が生まれ(平成9年度は準備会も含め全国に18ヶ所)、盲ろう者がようやく地域で注目され始めた頃でした。
そして、この10年ほどの間に、盲ろう者福祉もゆっくり、しかし着実に発展してまいりました。平成15年7月に「全国盲ろう教育研究会」、8月に盲ろう児と家族の会の「ふうわ」、平成18年には盲ろう当事者の組織である「全国盲ろう者団体連絡協議会」が設立され、友の会の結成も進められました。現在友の会は準備会も含めて43団体、通訳介助員派遣事業は31都府県、通訳介助員研修事業は39都道府県で行われております。
研修会の受講生も盲ろう者との係わりがほとんどない方から、経験者までも含むようになりました。それぞれの方から異なった要望が生まれ、受講生のターゲットをしぼる必要が生じてきました。
そこで、平成16年度より「指導者養成」という本来の目的を一層進めるために、通訳介助経験者を対象とした研修会に内容を変更致しました。
具体的には、今まで研修会の多くの時間を利用していた盲ろう者のコミュニケーションガイダンスはすでに知識を持っていると考え実施せず、その代わりに、盲ろう講師と実際にコミュニケーションをする実習や実技の時間を増やしました。さらに受講生の通訳介助技術を評価するために、経験豊かな盲ろう通訳介助者も講師として迎えています。これによって、当事者と通訳介助者の二つの役割の講師から、適切なフィードバックが得られるようなシステムをつくり、通訳技術のより一層のスキルアップをめざしています。
また、「養成研修会のカリキュラムの立て方」や「通訳介助方法の評価法」の講義を加えました。今年度は「ロールプレイ(盲ろう疑似体験)」の時間も増やし、「盲ろう」という障害の共感を目的としたロールプレイだけでなく、ロールプレイを通じて他の通訳者を観察し、評価しあうことがお互いの技術向上には欠かせないことや、評価のポイント・伝え方を学び、指導者として次に続く通訳者を育てるという役割を担っているという自覚を促しました。今年度の日程は別紙のとおりです。
この研修会は「主体は盲ろう者である」という支援の基本を軸に、熱意あふれる講師と熱心な受講生の相互作用によって、より実り多い研修会になっていると実感いたします。
回を重ねることでさらにプログラムの充実と、当研修会の内容とねらいが盲ろう関係者の中に広まっていくことを願っています。
最後に、受講生の皆様が今回の研修会で学んだ知識や技術、出会った方々とのつながりを生かして、ますます地域で、盲ろう者の支援のため、さらに地域のリーダーとして活躍されることを祈念して報告といたします。
![]() 「ロールプレイ」の様子 |
![]() グループごとに「ロールプレイ」についての話し合い |
![]() 「実技講習」の様子 |
平成20年度 盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者研修会日程表(前期)
月日 | 午前 |
午後 |
6月 2日 (月) |
・開講式・オリエンテーション (9:00~ 9:30) ① ガイダンス(9:30~12:00) |
② ロールプレイ1 (通訳介助模擬実習)
(13:00~17:00) |
3日 (火) |
③ 盲ろう者と情報保障 (9:00~10:30) (10:40~12:00) |
⑤ 移動介助の基礎 (13:00~16:00) (16:10~17:00) |
4日 (水) |
⑦ 視覚障害概論 (9:00~12:00) |
⑧ 養成講習会のカリキュラムの立て方
(13:00~17:00) |
5日 (木) |
⑨ 全国盲ろう者団体連絡協議会の役割
(9:00~10:15) (10:30~12:00) |
⑪ 疑似体験による盲ろう者の手引き歩行
(13:00~17:00) |
6日 (金) |
⑪ 盲ろう児のコミュニケーション (9:00~12:00) |
⑫ 前期のまとめ、後期に向けて
(13:00~14:30) |
平成20年度 盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者研修会日程表(後期)
月日 | 午前 |
午後 |
11月 17日 (月) |
・ 受付
( 9:30~10:00) ・ オリエンテーション(10:00~10:15) ① ガイダンス(10:30~12:00) |
② ロールプレイ2 (通訳介助模擬実習) (13:00~17:00) |
18日 (火) |
③ ロールプレイ3 (通訳介助模擬実習) (9:00~12:00)
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④ 実技講習1 (13:00~17:00) |
19日 (水) |
⑤ 実技講習1の反省 (9:00~10:30) ⑥ 実技講習2 (10:40~12:00) |
⑦ 実技講習3 (13:00~17:00) |
20日 (木) |
⑧実習 (9:00~17:00) 同上 森下 摩利 |
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21日 (金) |
⑨ 実習の反省とまとめ (9:00~12:00) |
・ 閉講式(12:00~12:15) |