〔センター行事〕
第25回業績発表会優秀賞受賞者コメント
管理部企画課



 去る12月24日(水)に行われた第25回業績発表会で優秀賞を受賞された4名の方々からコメントをいただきましたのでご紹介いたします。

 

 

○優秀賞
  研究所感覚機能系障害研究部 髙野 弘二
  研究所補装具製作部 久保  勉
  病院第二機能回復訓練部 白坂 康俊
  更生訓練所自立訓練部 川嶋 陽平

 

 

研究所感覚機能系障害研究部 髙野 弘二

演題:「効率的なブレイン-マシン・インターフェイス(BMI)のための視覚刺激法」

 

 この度は過分な評価をいただきありがとうございました。
 私は本年度の4月に流動研究員として配属され忙しくも充実した日々を送ってきましたが、今回その成果について多大な評価をいただき嬉しく思っております。これも皆様のお力添えがあってのことです。また本研究は厚生労働科学研究費(活動領域拡張医療機器開発研究)による補助により充実した環境において研究を進めることが出来ました。この場を借りて感謝を申し上げます。
 私は科学や技術というものは"出来ない"を"出来る"に変えることで今と未来をより良いものにしていくものだと考えています。今回の主題となるブレイン-マシン・インターフェイス(BMI)の場合、脳活動から意図を推測する技術が基盤となり、コミュニケーションや生活環境の制御を行なえるようにし、それをもってより多くの人が自立した生活を可能とすることでより良い未来に向かうことを可能とする技術であると考えています。
 BMIは、身体を一切動作させずに機械を操作するという特徴から念力などと勘違いされることもありますが、実際は計測した脳活動からある特定の条件で観察される情報を取り出して運用する技術です。従って意図に対して再現性のある脳活動があれば運用することが可能であり、今回発表させていただいた内容はそのような脳活動を上手く引き出すための方法を模索したものです。私達はこの技術を生活環境の制御に利用することで、頚椎損傷やALS等で肢体不自由の方が自立した生活を行なえるようになることを目指して研究と開発を進めています。
 しかしながら実用化に向けては未だ多くの乗り越えなければならない問題があり、現在もその解決に向けた研究と開発を行なっている次第です。今回の受賞もその励みとし、より一層の進展が得られるように研究を行なっていきたいと思います。

 

研究所補装具製作部 久保 勉
演題:「脊髄損傷者に合併した下肢骨折に対する治療用装具に関する報告」

 

 今回発表いたしました「脊髄損傷者に合併した下肢骨折に対する治療用装具に関する報告」に評価をいただきまして誠にありがとうございます。
 一般的に機能的骨折装具といった場合は硬質なプラスチックで製作されることがほとんどです。しかし今回のケースでは骨折のみに注視すればよいのではなく、同時に脊髄損傷者であることから装具の使用状況も把握しなければならないというものでした。
 脊髄損傷者には褥瘡の発症リスクがあること。また、日中の大部分を車いす上で過ごすことなど、従来の硬質プラスチックで製作した装具を使用する骨折のみの場合とは自ずとその使用条件は異なります。そのような使用状況を十分考慮し装具の基本デザインを変えることなくその機能を十分に果たすものというコンセプトで製作する必要がありました。  
 当初は褥瘡を発症させず長時間使用に耐えうるものが出来るか不安もありましたが、硬質なプラスチックからフレキシブルなプラスチックに変更することで、褥瘡の発症リスクを軽減させることが可能となり、さらに装着の簡便化をもたらし使用者や看護者の負担を軽減させるといった点も改善することができました。固定観念に縛られず工夫したことでよい結果を得ることができたと思います。今後もより良い補装具を提供できるよう努力していきたいと考えています。

 

病院第二機能回復訓練部 白坂 康俊
演題:「病院でのボランティアの取り組み」

 

 平成20年度業績発表会において優秀賞を受賞いたしました。
 受賞のお知らせを頂いた時に、全く予想していなかったので大変驚きました。病院における、リハビリテーション専門職以外の方々によるボランティア活動の受け入れ報告ですので、先駆的な研究というわけではありません。一般の病院ではボランティアの受け入れを、恒常的に行っているところもあり、独創的な活動ともいえません。そのため賞を頂くことは全く考えておりませんでした。
 とはいえ、この活動自体の意義を低く考えていたわけではありません。医療という領域が果たすべき機能や公的機関の存在意義などにおいて、「地域連携」や「障害を持つ方のQOL」は、ますますその重要性を増しています。一方、国リハそして病院は、国立という性格上、特定の地域との連携をはばかるという伝統的な考え方もあり、なかなか所沢や埼玉といった地元との連携の難しさなどを感じているところでした。また、患者さまのQOLへの取り組みも、機能訓練面の取り組みに比べ、立ち遅れている印象はぬぐえません
 そんな中で、患者さまのQOLに向けた取り組みであり、地域の方々による、地域の方々にも楽しんで頂ける、地域に開かれた活動としてボランティアの方々の7回の公演を実現できたわけです。前例のない形式・規模でのボランティア活動でしたので、開始当初、各方面にご理解頂くのに苦労した覚えもあり、しかし、参加した患者さまや、障害を持つ方からのおほめのことばを励みに続けていくうちに、各部署からもご理解やご協力を得られるようになりました。結果的に、このような形で評価されたことは、この上ない喜びであります。
 あらためて、ボランティア公演をしてくださった皆様はじめ、共同演者の皆様、ご協力頂いた皆様、その他全ての関係各位にお礼申し上げます。

 

更生訓練所自立訓練部 川嶋 陽平
演題:「自立訓練における高次脳機能障害者への取り組み状況報告」

 

 今回の発表が優秀賞に選ばれるといった過分な評価をいただけた理由は、大きく分けて二つあると考えています。一つは平成18年10月から障害者自立支援法に基づく、新たな事業体系への移行にともない開始された自立訓練事業の今日までの取り組みへの評価。二つめは、今後も具体的プログラムの開発や効果測定に基づく有効な支援サービスを展開していくことへの期待と激励であったと理解しています。
 さて、今回発表した訓練プログラムは、平成13年度から5年間にわたって実施された高次脳機能障害支援モデル事業における標準的訓練プログラムに基づき、当課として具体化を図ったものでした。様々な訓練メニューがありますが、全体を通してメインテーマとしているのが「気づき」です。多くの高次脳機能障害のある方々が抱えている問題の一つとして自身の障害への「気づき」の不十分さがあります。自身の障害への認識と、周囲の人々からの認識との間にギャップがあるといった障害の自己認識や現実検討の不足が課題となっています。各々の高次脳機能障害の特性(記憶・注意・遂行機能・社会的行動等)により家庭生活や社会参加を行う上で問題となっている事柄が、体験等をとおした「気づき」により、様々な代償手段獲得のための訓練や環境調整に結びついていくものと考えます。「説得よりも納得」「人のふり見て、我がふり直す」等の他者との関わりの場を設定し、共に考えていく姿勢に立った支援を今後も訓練プログラムに反映していきたいと思います。
 課員自らも、自身の支援者としての役割や課題等への「気づき」を大切にし、自立訓練を通した有効な支援サービスの展開ができるよう努力していきたいと考えております。ありがとうございました。