

2026.4.21
令和7年度「第42回業績発表会」開催報告
業績発表会実行委員会事務局
令和7年12月19日(金)に開催された、令和7年度「第42回国立障害者リハビリテーションセンター業績発表会」について報告します。業績発表会は、職員が日ごろの取り組みや学術研究の成果を発表しあう場です。
職員相互の研鑽と連帯の強化を図る目的で、センター発足から5年後の昭和59年度(1984年度)に第1回が開催され、今年度は第42回目を迎えました。
令和2年度(2020年度)以降、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、職員用ネットワーク内に音声付き発表資料を掲載することで実施されていましたが、昨年度から会場での開催に切り替え、施設内および施設間での同時配信も行われました。
今回は40演題の発表がありました。発表の一覧と予稿(一部)を以下のページに掲載しています。
以下、今回の業績発表会で表彰された職員を受賞コメントと共に紹介します。
※受賞者一覧の名前をクリックすると受賞者コメントに移動します。
※抄録を公開している演題については、受賞者一覧の演題名をクリックすると抄録をご覧いただけます。
受賞者一覧
優秀賞(9名)
- 中川雅樹(病院リハビリテーション部 作業療法士)
演題:座圧計測が姿勢改善に有効であったフォコメリア児の一例 - 粕谷陽子(病院看護部 看護師長)
演題:脊髄損傷者のQOL向上を目的とした排便時間の短縮に向けた取り組み - 松井孝子(病院リハビリテーション部 視能訓練士長)
演題:眼科受診結果から考える、知的障害のある施設利用者への視覚支援の必要性 - 濱祐美(病院リハビリテーション部 主任理学療法士)
演題:2024年度まで3年間のシーティングクリニック活動報告~活動から感じた障害者高齢化の課題~ - 星野元訓(学院義肢装具学科 主任教官)
演題:学院義肢装具士研修会における筋電義手をテーマとした研修について - 須永貴之(秩父学園療育支援課 どんぐり寮長)
演題:突然走り出す行動がある児童への支援について - 多田由美子(病院看護部 看護師長)
演題:患者の尊厳を守るための身体的拘束最小化に向けたシステムの構築と取り組み - 近藤和弘(自立支援局理療教育・就労支援部就労移行支援課 主任職業指導専門職)
演題:就労移行支援における「オンラインによるリモート訓練(在宅訓練)」の現状について① - 髙野弘二(研究所脳機能系障害研究部 主任研究官)
演題:大阪・関西万博での国リハのとりくみ
奨励賞(1名)
- 矢野幸治(研究所脳機能系障害研究部 流動研究員)
演題:ASD者における道具の身体化の特徴:Virtual Realityを用いた評価ツールでの検討
特別賞(1名)
- 佐久間裕子(秩父学園療育支援課園生医務室 副看護師長)
演題:安全なワクチン接種のために~インフルエンザワクチンのマニュアル作成から実施まで~
受賞者コメント
優秀賞
中川雅樹(病院リハビリテーション部 作業療法士)
演題:座圧計測が姿勢改善に有効であったフォコメリア児の一例
【コメント】
この度は,私どもの発表に対し「優秀賞」という評価を賜り,心より感謝申し上げます.
今回は,右上肢フォコメリア児に見られ,ご家族から相談のあった「授業中の姿勢不良」および「右側腹部・右下肢の痛み」に対し,腹部ベルトや.触圧測定器を用いたアプローチを行いました. その結果,姿勢の改善が見られ,痛みの訴えも軽減しました.
先天性を含む片側上肢切断者には側弯の合併が多いことが指摘されており,幼少期から姿勢を評価し,本人およびご家族へフィードバックを行うことは,将来的な側弯の予防につながる可能性があります. 接触圧測定装置を用いた座圧計測は,そうした姿勢評価の一助となると考えています.
今後も,対象者およびご家族のニーズに寄り添いながら,より良い支援を提供できるよう努めてまいります. 引き続き,皆さまからのご指導・ご鞭撻を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます.
粕谷陽子(病院看護部 看護師長)
演題:脊髄損傷者のQOL向上を目的とした排便時間の短縮に向けた取り組み
【コメント】
この度は、優秀賞をいただきありがとうございました。関係者の皆さまにこの場をお借りして感謝申し上げます。
病院3階東病棟では、令和3年度から脊髄損傷者の排便時間の短縮に取り組んできました。脊髄損傷者の排便には時間を要し、退院後の日常生活に支障をきたしていることが課題でした。近年、受傷後10年以上経過している脊髄損傷者が、排便に時間を要するために褥瘡を形成し入院するケースが増えてきました。加齢による筋力の低下や肩の痛みにより排便中の除圧動作が不十分であることや、臀部の筋肉が減少することも褥瘡を形成する要因であることがわかりました。長時間の排便は、褥瘡リスクが高まるだけでなくQOLの低下にも繋がり、排便時間の短縮が課題でした。
時間短縮の取り組みは、患者さんだけでなく看護師に受け入れられるのにも時間がかかりました。根拠に基づき繰り返し説明し、薬剤調整や付加食品の使用、食事や水分摂取の見直しを行い、排便時間の短縮に繋がりました。今後も従来から行っている看護ケアについて新しい知見を基に見直し、脊髄損傷者の方々のQOLが向上するよう支援していきたいと思います。
濱祐美(病院リハビリテーション部 主任理学療法士)
演題:2024年度まで3年間のシーティングクリニック活動報告~活動から感じた障害者高齢化の課題~
【コメント】
この度は、発表内容に対し身に余る評価をいただき誠にありがとうございました。関係者の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。
発表でも申し上げましたが、シーティングクリニックは1998年より開始いたしました。“座る”ことは障害者にとって基本の姿勢であり、一般よりもその姿勢で長い時間を過ごすこととなります。今回は3年間という期間で活動内容を振り返りました。支援する対象や方針、切り口はケースによって様々なのですが、活動の中で障害者自身の高齢化による課題に対峙することがここ数年で増えたと感じ、発表させていただきました。加齢は万人に起こることです。「今までできていたことができなくなった」「何かがおかしいけれどどうしたらいいか分からない」などと生の声を聞き、どう方略を考えればよいのか、思案する日々です。
超高齢化社会となった現状ですので、今後もこの傾向は強まると予測しております。“伴走型支援”と評価していただいたように、障害者の安心安全な生活支援のため、今後もこの活動を継続、発展できるよう努力してまいります。
星野元訓(学院義肢装具学科 主任教官)
演題:学院義肢装具士研修会における筋電義手をテーマとした研修について
【コメント】
この度、優秀賞に選出いただいたこと、大変光栄に存じます。本研修会で筋電義手をテーマとしたのは、国の普及促進という背景の中、現場の義肢装具士が切実に必要としていた「実践の機会」を提供したいという思いからです。
筋電義手の製作技術向上には、理論だけでなく「実際に適合を経験すること」が不可欠です。しかし、国内の教育環境は十分とは言えず、技術の標準化が大きな課題です。本研修では、VOD講義による効率化と密度の濃い対面実習を組み合わせることで、短期間での確実な知識・技術の習得を目指しました。アンケートで「すぐに職場で活用できる」といった声をいただき、運営者として手応えを感じるものでした。
また、研修会運営には事務担当職員の下支えが欠かせませんが、内容を評価いただき受賞に至ったことは、学院研修部門としての取り組みを認めていただいたものと、大変嬉しく励みになる次第です。
最後になりますが、多大なご協力をいただいた講師の皆様、そしてユーザー様にこの場を借りて深謝申し上げます。今回の受賞を糧に、今後も研修内容をより質の高いものとし、筋電義手のさらなる普及と義肢装具士の技術向上に寄与してまいる所存です。
須永貴之(秩父学園療育支援課 どんぐり寮長)
演題:突然走り出す行動がある児童への支援について
【コメント】
この度は、優秀賞という栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。身の引き締まる思いです。
今回の発表は、自閉症児支援、とりわけ強度行動障害の状態にある児童への支援として、ご本人様が生涯に渡り、豊かな暮らしを送ることを考えた時、児童期にある今の段階から積み重ねるべき支援として取り組みを始めました。支援の過程では秩父学園の同僚の協力が非常に大きな支えとなっており、本当に支援チーム全員で取り組んだ結果としたいただいたものと思っております。
発達障害児・者への支援は日々刻々と変化し、正解の無い問いに向き合う場面も少なくないと感じております。しかし、今回の発表させていただいた支援方略が現場で奮闘する支援者の方々にとってどこかの場面にお役に立ち、最終的にご本人様の人生の豊かさにつながると幸甚です。
今回の受賞を糧に、現状に満足することなく、より一層研鑽を積んで参ります。根拠に基づいた実践をさらに深め、微力ながら今後も発達障害児・者福祉の発展に貢献できればと思っております。
最後になりますが、審査員の先生方、ならびに本発表の支援に携わりご指導いただいた全ての皆様に、厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
多田由美子(病院看護部 看護師長)
演題:患者の尊厳を守るための身体的拘束最小化に向けたシステムの構築と取り組み
【コメント】
この度は、発表内容に対し高い評価をいただき、ありがとうございました。関係者の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。
今回の発表は、令和6年度の診療報酬改定に伴い、当院で新たに発足した身体的拘束最小化チームによる取り組みをまとめたものです。身体的拘束は、患者さんの尊厳に関わる重要な課題です。原則禁止という基本理念を共有し、医師の治療的視点や訓練士の機能的視点を取り入れた多職種によるカンファレンスを行い、センサーの使用時間を短縮するなど、具体的な成果に繋げることができました。
専門性の異なる職種がひとつの課題に対して対話を重ね、患者さんの安全確保と尊厳の保持を両立させる過程は、私たち看護師にとって新たな視点もあり、学びとなりました。今回の受賞は、日々の業務の中で試行錯誤しながらケアを行っているスタッフ全員の努力であり、今後の実践への励みとなります。
現状では、まだ全職員への周知や倫理的・法的側面の理解など課題も残されています。今後も病院全体で身体的拘束最小化の考え方の定着を進め、より質の高い看護・ケアが提供できるよう、知識を深め努力をしていきたいと思います。
近藤和弘(自立支援局理療教育・就労支援部就労移行支援課 主任職業指導専門職)
演題:就労移行支援における「オンラインによるリモート訓練(在宅訓練)」の現状について①
【コメント】
この度は優秀賞という評価をいただき、誠にありがとうございます。本発表に関して、ご協力いただいた皆様に心より感謝を申し上げます。
「オンラインによるリモート訓練(在宅訓練)(以下、在宅訓練と略す)」は、過去11名(平成27年度~令和7年度)に実施しているサービスです。特に、令和6年度からは、障害特性上、公共交通機関での通所や入所による訓練参加が難しい利用者に対して、利用契約開始時から在宅で事務就労支援室の訓練が受けられるよう、マニュアルの作成、環境を整える体制、緊急時の対応、就職活動などについて整備を行い、令和7年度は2名を対象として実施しました。
在宅訓練の対象者は、(1) 在宅就労を希望する方で、訓練参加が可能な方。(2) 主に頚髄損傷者などの肢体不自由、高次脳機能障害、難病の方。(3) 市区町村が在宅訓練の実施を認め、障害福祉サービス受給者証の交付を受けた方としました。
近年、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に着目し、通勤困難や物理的な面で働く機会が得られなかった障害者に対して在宅勤務による雇用、また、法定雇用率も短時間労働者(週10時間以上20時間未満。令和6年4月以降)を雇用率の算定対象とするようになり働く機会が増えてきています。今後も重度の障害者が就職できるように在宅訓練の充実を図っていきたいです。
髙野弘二(研究所脳機能系障害研究部 主任研究官)
演題:大阪・関西万博での国リハのとりくみ
【コメント】
本発表は万博出展にかかるもので、受賞者は私の名前となっておりますが、実際には事前の準備や当日の出展に関わった方、そして来場された方や内部向け中継をご覧になった方を含めたすべての関係者に贈られた賞だと考えております。
国リハは素晴らしい取り組みや研究を行っている機関ではあります。しかし残念なことに出展時に実施したアンケートにおいても一般における国リハの知名度は高いとは言えず、このままではせっかくの取り組みが活かされる機会も限定されてしまいます。それはとてももったいないことです。ですので(今回程のものはそうそう無いでしょうが)今後もアピールの機会を逃がさず、広く国内外に情報発信をしていくことができればと考えております。
と、企画部の方のようなことを書きましたが私の本務は研究職ですので、次は自身の研究内容で受賞できるよう励んでいきたいと思います。
以上です。優秀賞への選出、まことにありがとうございました。
奨励賞
矢野幸治(研究所脳機能系障害研究部 流動研究員)
演題:ASD者における道具の身体化の特徴:Virtual Realityを用いた評価ツールでの検討
【コメント】
この度は、奨励賞を頂き、誠にありがとうございます。またこの場をお借りして、研究実施に際してご指導頂きました共同演者の皆様、そして研究に参加して頂きました協力者の方々に心より御礼申し上げます。
本研究は、神経発達症の方の中には、道具操作の困難さを抱えていらっしゃる方が多くいることを踏まえ、その要因を、「道具の身体化」に着目して解明することを目的に実施しました。Virtual reality(VR)という新たな道具を用いることで、今まで設定することが出来なかった条件(例えば、手や道具だけを任意のタイミングで見えない状態にするなど)を柔軟に設定できるようになりました。今後もこのVRの特徴を活かした実験を通し、道具操作の困難さの要因を様々な視点から解明していきたいと考えております。そして、道具操作の苦手さを解消できる介入方法の開発を最終目標として、今後も研究に取り組んでいきたいと思います。
特別賞
佐久間裕子(秩父学園療育支援課園生医務室 副看護師長)
演題:安全なワクチン接種のために~インフルエンザワクチンのマニュアル作成から実施まで~
【コメント】
このたび、私たち看護師が取り組んできた「安全なインフルエンザ接種を目指して」の実践報告について、特別賞をいただき大変光栄に思います。本取り組みは、施設内で発生した接種時のアクシデントをきっかけに、明確なマニュアルがなく経験に頼っていた体制や、生活の場で実施していたことによる役割分担の曖昧さなど、多くの課題を見直したことから始まりました。接種の流れを可視化し、場所を医務室に統一、受付からスクリーニング、接種、待機、モニタリングまでを整理・構造化したことで、安全性と効率の両面が大きく向上しました。この取り組みは、合理的配慮や意思決定支援の考え方にも通じ、児童が安心して医療行為を受けられる環境づくりにつながったと感じています。
今年度は、大きなトラブルなくインフルエンザワクチン接種を実施でき、職員間の連携や共通理解も深まりました。今後もマニュアルを継続的に見直しながら、将来地域の医療機関でも安心して医療を受けられる力につながる支援を目指し、取り組みを重ねてまいります。

