コミュニケーション機器導入アプローチ


 重度障害者用意思伝達装置は意思の伝達に重点を置いていますが、パソコンやタブレット端末を使うと、意思の伝達を行うだけでなくインターネットの活用やメールのやり取り、音楽や動画の視聴など様々な活動を行うことが可能です。

 障害の発生初期から意思伝達装置等の専用機器を優先して利用する必要はなく、意思伝達以外の目的からパソコンやタブレット端末などの汎用IT機器を利用することも大いに考えられます。

 このサイトでは、コミュニケーション機器を導入する際の利用ニーズと身体機能を組み合わせた機器選択フローを紹介します。


 本研究は、平成27年度日本医療開発研究機構(AMED)研究費(委託費)長寿・障害総合研究事業(障害者対策総合研究開発事業)「音声言語機能変化を有する進行性難病等に対するコミュニケーション機器の支給体制の整備に関する研究」(15dk031002h003)の一部として実施しています。

 以下の内容は、分担研究報告「機能選択・支援者支援ツール、導入アプローチのマニュアル検討」(PDF形式(約350KB)としてまとめています。



■ 各評価項目
 コミュニケーション支援を行う場合、身体機能に基づく操作性評価や各種入力装置への身体適合といった医学的評価だけではなく、機器の利用ニーズや家族・支援者の理解を含めた生活要素を加味した社会モデルも考慮していく必要があります。パソコンやタブレット端末などの汎用IT機器は機能が多機能化しています。十分活用できると便利な機器ではありますが、それらを使用することだけを目標とせず、利用ニーズと身体機能を考慮し、意思伝達装置の使用も視野に入れて整理することも必要です。

◎本人の身体状況
 複数のスイッチ操作が可能であれば利用する機器のバリエーションも増えますが、パソコンやタブレット端末を操作するためのスイッチを操作の回数と疲労度との兼ね合いも考慮して操作機器を選択することも重要です。スイッチを押す押下力や手指の可動域、頭部操作や眼球運動が可能かどうか等、身体機能の評価が必要です。

◎ニーズ(相手、場面、機能)
 目の前の介護者に意思が伝えられれば良いのか、文字で残しておきたいのか(文書の保存、印刷)、メールなどで遠隔の相手に意思を伝えたいのか、テレビやDVDの操作などの環境制御的なニーズがあるのか、利用者のニーズは様々です。一つの機器で全てのニーズを叶えるのは難しいかもしれませんが、優先順位を考慮してニーズに合う機器を選択していきます。

◎PCの利用経験
 利用者にパソコン操作の経験があれば、これまで使用してきたパソコンをそのまま使い続けたいというニーズもあるでしょう。パソコンやタブレット端末を利用すると様々な活動が可能ですが、利用者の身体状況に合わせた入力機器を整える必要があります。

◎支援環境
 日常生活の中で、支援者の負担を少なくしつつ最適なコミュニケーション環境を整えることが課題となります。インターネットやメール機能を使う場合、インターネットの接続や各種の設定が必要となり、ネットワーク関連の知識も必要となります。家族だけでなく、ボランティアの協力なども考慮して支援環境を整えていきます。


■ 身体機能に合わせた操作方法
 身体機能評価(医学的な評価)においては、キーボードによる操作、視線やレーザーポインティングによる操作、タッチパネル、トラックボールやジョイスティック、代替マウス、スイッチ操作によるスキャン式等を考慮していきます。



 機器の利用ニーズは、意思伝達装置により意思伝達を主目的とするのか、パソコンやタブレット端末等の汎用IT機器を利用することを主目的とするのかに分けることができます。

 意思伝達装置にもメール機能やインターネット機能、環境制御機能などがあり、汎用機器と同じ活動を行うことが可能です。また、意思伝達装置の中にも意思伝達用のアプリケーションを終了するとパソコンやタブレット端末の操作が可能になるものがあります。




■ パソコンやタブレット端末を利用したい場合
 パソコンを操作する場合、キーボードを利用しなくてもマウス操作が可能であれば、オンスクリーンキーボードを使用してキー入力が可能です。

 マウス操作は、マウスカーソルの移動とクリック操作になり、
ポインティング操作は、
1)視線や頭部操作など直接選択操作が可能な場合、
2)トラックボールやジョイスティックが利用できる場合、
3)複数のスイッチ操作が可能でカーソルの移動を複数のスイッチ操作で割り当てることが可能な場合、
4)操作できるスイッチは一つだが、長短の押しわけが可能な場合、
5)長短の押しわけが難しい場合、
6)1-2個のスイッチ操作により走査入力で行う場合、
に分類できます。

 クリック操作はスイッチ操作を標準マウスの各クリック操作に代替するものと、マウスカーソルが停止してから設定時間後に自動的にクリック操作を行うなどのソフト的な代替方法があります。

 タブレット端末を利用する場合、
a)iOS端末に対してはスイッチコントロールによる操作、
b)Android端末に対しては外付けのマウスデバイスによる操作とスイッチアクセスによる操作があります。

スイッチコントロールとスイッチアクセスにおけるスイッチ操作は、走査(スキャン)入力式となります。







■ 意思伝達装置を利用する場合
 意思伝達装置を利用する場合、眼球運動やタッチ操作などの直接選択操作が可能な場合と、1-2個のスイッチを操作して走査(スキャン)入力する場合に分類できます。
 走査入力の場合には、専用機を使用するか、パソコンやタブレット端末で意思伝達専用のアプリケーションを使用します。意思伝達専用のアプリケーションを終了すると、パソコンやタブレット端末として汎用的に使用することが可能です。








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更新日:4月12日 2016年


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