マウス操作支援アプリケーション
神経・筋疾患等により手指の可動域が狭くなったりキーを押す力がなくなってくると、パソコンを操作するためのキーボードの操作が難しくなりますが、キーボードが使えなくてもマウスを操作できればオンスクリーンキーボードを併用することでパソコンの操作が可能になります。
障害者に限らず、マウスカーソルを大きく移動する際、1回の移動操作で目的箇所に移動しない場合、一度マウスを持ち上げ、少し戻してから再度マウスを移動することを繰り返す、という複数回の移動操作でマウスカーソルを移動させていると思います。
ですが、マウスを持ち上げられない場合、マウス本体を左右に動かしてもマウスカーソルはマウスの移動に合わせて左右に往復するのみで、マウスカーソルは初期位置からあまり移動しません。
マウスカーソルが画面の端に移動するまでマウスそのものを動かしていく方法もありますが、マウスを動かすだけの広い場所が確保されなければならず、障害がない状態であっても現実的な解決策にはなりません。
スライドパッドやトラックボールも同様で、スライドパッドでは一旦パッド面から指を離して(トラックボールでは一旦ボールから指を離して)、少し戻してから再度指を動かすことになります。
パッドの端やボールの保持具に指が触れた時点で指を離して少し戻さない限り、それ以上の操作は困難となります。
このような状況でも、スイッチ操作によりマウスカーソルを移動する方法が提案されています。
複数のスイッチが操作できる方
できマウス。シリーズ 、
らくらくマウスU、
顔マウス等
一つのスイッチが操作できて、長押し、短押しの区別ができる方
ワンキーマウス(符号入力式)
一つのスイッチが操作できて、長押し、短押しの区別が難しい方
オペレートナビ(スキャン式)
ジョイスティックタイプを操作できる場合には、
・
あごマウス Millet、
くちマウス、
ジョーズ3、
ジョイスティックプラス、
らくらくマウスU、等があります。
それぞれ特徴がありますので、好みや身体機能に合わせて試してみてください。
当研究所では、マウスを持ち上げずに(同様に、トラックボールやスライドパッドから指を離さなくても)マウスカーソルを移動するアプリケーションを作成しています。
標準マウスや市販のトラックボール、スライドパッドを利用しても動作しますので、お試しください。
注1)全てのデバイスを試しているわけではありませんが、Genius リングマウスプラス 400-MA040 ではうまく動作しませんでした。作成したアプリケーションではリングマウス上の指の動きがうまく検出できないのかもしれません(Genius リングマウスプラス 400-MA040 はレーザーセンサー方式となっています)。
注2)Windows7、8.1、では動作を確認しています。
Windows10では、まだ動作を確認していません。
以下に、どのように動作するか説明していきます。
●マニュアル方式
初期状態からマウスが最初に最も大きく移動した方向(上下左右の4方向)を検出して、それ以降はマウスが逆方向に動いてもマウスカーソルの逆方向への移動をキャンセルすることで、最初に検出した方向にのみマウスカーソルを移動させます。
初期状態を
サーチモード、移動方向に制限をかけた状態を
ガイドモードとします。
例えば、最初に検出した方向が右であれば、マウスカーソルは右にのみ移動します。マウスやスライドパッド、トラックボールを左向きに戻しても、マウスカーソルは左に戻らずその場にとどまり、マウスが再び右に移動した際にその動きに合わせてマウスカーソルが移動する、という方式です。
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マウスを戻したときにはカーソルは戻らず、再び動かしたマウスの動きに合わせてズリズリとカーソルが移動していくイメージになります。
マウスカーソルの移動方向を変えたい場合
最初にマウスを右に動かした場合、左方向や上下方向へ移動方向を変える必要がありますが、その場合、一旦マウスの操作を中断します。
マウスカーソルが停止してから設定した時間が経過すると初期状態(サーチモード)に戻ります。その時点で再度移動方向を検出することで別方向へマウスカーソルを移動させます。
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マニュアル方式では、マウス(トラックボール、スライドパッド)の4方向への動きでカーソルが4方向に動く
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ガイドモード:移動方向を検出したら、カーソルの移動方向を表示します(この場合はカーソルは右にしか移動しません)
●オート方式
マウスを4方向に動かすことが難しい場合、上下、または左右にマウスを動かすことでカーソルを自動的に移動させることを考えます。
例1)
マウス本体の左への動き、トラックボールやスライドパッド上の指の左への動きをカーソルの横移動(左に移動)、右への動きをカーソルの縦移動(上に移動)に変換します。
カーソルは自動的に移動し、画面の端に達すると画面の反対側から再度現れます。左右へのマウスの移動とカーソルの横(左右)・縦(上下)への移動は組み合わせを変えることができます。
例2)
例1は指の動きが左右の2方向ですが、前後左右に動かすことができる場合には、その動きをカーソルの上下左右の動きに変換します。カーソルが自動的に移動することは同じです
カーソルを停止させるには、もう一度マウスを動かします。マウスを動かすのはどの方向でもよく、マウスを動かした時点でカーソルがその場で停止します。
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オート方式では、
・マウスの2方向への動きでカーソルが2方向に、
(左図、左への動きが上方向へ、右への動きが右方向へ)
・4方向への動きでカーソルが4方向(右図)に、自動的に動く
アンロックモード
上記のように、初期状態(サーチモード)からマウスを動かすと、ガイドモードに移行します。
ガイドモードではカーソルの移動に制限をかけます。
ガイドモードから設定時間以上マウスを中断すると、
アンロックモードに移行します。
アンロックモードでは、カーソルの移動に制限をかけません。通常の操作で、マウスカーソルを移動させることができます。
マウスカーソルを大きく動かすのは難しいけれど、狭い範囲内であればマウスカーソルを移動させることができる場合には、カーソルの移動に制限をかけないアンロックモード内でマウスカーソルを自由に移動させます。
アンロックモードから設定時間以上マウス操作を中断すると、次に説明するように
クリックモードに移行します。
(設定により、アンロックモードは省略することができます)
クリックするには・・・
アンロックモードから設定時間以上マウス操作を中断すると、
クリックモードに移ります。
マウスの操作にはマウスカーソルの移動とクリック操作(左右クリック、ダブルクリック、左ドラッグ)があります。
・クリックモード1
クリックモード1では、左クリック、左ダブルクリック、右クリック、左ドラッグを順番に設定時間ごとに表示を変えます。
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表示の途中でマウスを動かすと、該当するクリック操作が実行されます。マウスを動かすことになりますが、マウスカーソルは停止した個所から移動せずにクリック操作を行います。
例)設定時間ごとに左クリック、左ダブルクリック、右クリック、左ドラッグの順に表示が変わるので、例えば右クリックのところでマウスを動かすと、右クリック操作を実行します。
クリック操作を行わなければ、設定時間ごとに左クリック、左ダブルクリック、右クリック、左ドラッグの順に表示を変えた後に初期状態(サーチモード)に戻ります。
・クリックモード2
設定時間ごとの表示変更では待ちきれない場合には、クリックモード2に設定します。
クリックモード2では、マウスを動かすごとに左クリック、左ダブルクリック、右クリック、左ドラッグの順に表示が変わります。
希望する表示が出たところで設定時間マウスを動かさずに待っていると、該当するクリック操作が実行されます。
例)マウスを動かすと左クリック、左ダブルクリック、右クリック、左ドラッグの順に表示が変わります。例えば右クリックの表示が出たところでマウスを動かさずに待っていると、設定時間後に右クリック操作が実行されます。
クリックモード2では、マウスを動かさないでいると左クリックだけ表示してからサーチモードに戻ります。
クリックモードは省略することができますし、左クリック、左ダブルクリック、右クリック、左ドラッグは必要なものだけを選択して実行させることができます。
クリックモードを省略して、クリック操作を自動的に行ってくれる、
できクリック。、
しのびクリック
等を利用しても良いでしょう。
概略
以上を概略すると図のようになります。
ガイドモードには、マニュアル方式とオート方式があります。
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1)アプリケーションを起動するとサーチモードに入る
2)マウス(トラックボール、スライドバッド)を動かすと移動方向を検出
→ガイドモードに入る
・最初に検出したマウスの方向にのみカーソルが移動するマニュアル方式
・設定したマウスの方向にカーソルが自動で移動するオート方式
3)ガイドモード内で希望の箇所までマウスカーソルを移動させたら、マウスを停止する
4)設定時間(T1)秒経過、サーチモードに戻る(→1へ)
5)これの繰り返しでマウスカーソルを移動させます
狭い範囲内であればマウスを自由に移動させることができる場合には、カーソルの移動に制限をかけないアンロックモード内でマウスカーソルを自由に移動させます。
6)サーチモードからマウス停止
7)設定時間(T2)秒後、アンロックモードに入る。マウスカーソルを自由に移動できる
8)マウスを停止する
9)設定時間(T3)秒後、クリックモード入る
10)クリック操作を行う
11)クリックモードが終了すると、サーチモードに戻る
これらの動作の詳細は、PDF形式でダウンロード(A4サイズ11枚、約300KB)できます。
アプリケーションを試したい方は、伊藤までご連絡ください
実行ファイルを含めたものを圧縮ファイルなどでお送りするか、CD-ROMにコピーして郵送します。
問い合わせ先:
〒359-8555 埼玉県所沢市並木4−1
国立障害者リハビリテーションセンター
研究所 福祉機器開発部 第2福祉機器試験評価室
伊藤 和幸( itoh-kazuyuki-0923@rehab.go.jp @は半角@に変更してください)
TEL:04-2995-3100(代)内線2534 FAX:04-2995-3132
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更新日:2016年 3月2日