網膜細胞の変性機構と変性抑制に関する研究


研究の背景

 視覚障害の多くは網膜細胞の変性に起因するので、網膜細胞の変性の原因を調べ、その機構を解明することは、病気の原因を解明し治療法を確立するうえで必須要件である。これらの障害の多くは遺伝的な素因を有している。すなわち、障害者の網膜細胞で発現している遺伝子に変異があるため蛋白質の構造異常が起こり、これが原因で細胞の変性が起こると考えられている。最近、網膜変性に関わる遺伝子がすでに100種類以上同定された。原因遺伝子がわかれば、欠陥遺伝子そのものを正常なもので置き換えるいわゆる遺伝子治療が行える。事実、網膜色素変性症のモデル動物を用いて遺伝子治療を試行し、視力の回復を認めたという報告もなされている。ただ、原因となる遺伝子が余りにも多様なため、個々の疾患に対応するには膨大な数の臨床試験が必要となる。将来的には個々の原因遺伝子を正常なものに置き換えるという遺伝子治療が実現するものと思われるが、まだ時間を要する。網膜変性症の多くは徐々に進行するものなので、完全な回復ではなくともその進行を抑えることができれば、視覚障害者にとっては福音となる。そのためにも網膜変性一般の治療に使えるような汎用性のある変性抑制法の開発が望まれる。

研究の目的

 本研究の目的は、視覚障害者の網膜変性の進行を抑止する医薬品をスクリーニングするためのアッセイ法を確立することである。網膜変性症のすべての症例に共通するのは、その名の示す通り細胞が変性することなので、この変性の進行を抑えることが出来れば症状を改善出来ると考えられる。そこで変性に関わる蛋白質群を同定し、これらの蛋白質群を用いて細胞変性を評価するアッセイ系を作る。この系を用いることによって変性のプロセスを阻害する医薬品を探索することができる。

研究の目標

 大きな目標は、網膜細胞由来の遺伝子の異常発現によって網膜細胞の変性を引き起こすモデル系を作製することである。これを実現するために、次の個別目標をかかげる。

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