リハビリテーション体育とは

<スポーツや運動を通した生活の再構築>

リハビリテーション体育とは、身体や精神などに障害のある方や疾病・加齢などによって心身機能に何らかの制限がある方に対して、体育やスポーツを手段に行動変容を促し、機能維持や二次障害の予防により健康の維持・増進を図り、積極的な身体活動により生活の質(QOL:Quality of Life)を高めるなど、その人らしい生活を再構築するための支援を探求し、実践する分野です。

リハビリテーション体育が必要な背景

多くの人々が健康で豊かな生活を願う中、障害のある方や心身の機能が低下した方はどのようにして「からだ」と「こころ」の健康づくりに取り組むべきか、その手段や情報は極めて乏しいのが現状です。

障害のある方にとって、健康の維持・増進のための運動習慣の確立や取り組みへの意識は健常者以上に重要です。例えば、障害を負うことにより長年培ってきた身体の使い方は少なからず失うことになります。再度、自らの体を知るためには(身体の再構築)、積極的に体を動かすことが必要となります。受動的なリハビリテーション初期から離脱し、能動的に自らが判断行動でき、こころとからだの健康を維持し続けるには、取り組みへの高いモチベーションを必要とします。

そのためには、できるだけ早期から運動やスポーツの意義を理解し、かつ主体的に地域社会に関わる力を身につけていくという生涯教育を推進する観点から、これらを支援できる専門家、すなわち「リハビリテーション体育」の役割が必要になると考えます。

沿革

国立障害者リハビリテーションセンター学院は、障害者のリハビリテーションに関する技術者の養成と各種専門職員の技術向上を目的とした研修を行う「教育・訓練担当部門」として、1979(昭和54)年に現在の所沢市内に設立されました。

本学科は1991(平成3)年に厚生労働省(旧厚生省)所管の国立専修学校「リハビリテーション体育専門職員養成課程」(2年課程)としてスタートし、1999(平成11)年からは「リハビリテーション体育学科」と名称が変更されました。平成26年4月現在までに141名を輩出し、各分野で先駆的及び指導的役割を果たしています。

平成元年5月リハビリテーション体育専門職員養成課程に関する委員会を設置
平成2年3月リハビリテーション体育専門職員(仮称)養成に関する委員会報告書を作成
平成3年4月リハビリテーション体育専門職員養成課程が2年間の過程で発足(厚生省告示第58号)
平成11年4月リハビリテーション体育学科に名称を変更
平成19年4月財団法人健康・体力づくり事業団が行っている健康運動指導士認定試験に関わる養成校として認定

リハビリテーション体育が誕生するまで

(1)治療体操からの発展 

病気や外傷の回復、運動障害の治療としての運動は、古くはギリシャ時代から行われていましたが、19世紀に入り体系化された「治療体操」が確立されました。この治療体操の流れは20世紀初期にはさらに二つに分かれ、一つは後の理学療法となり独自の発展をしていきます。もう一つは学校教育に導入され、身体による教育や人間形成を目指すことに有用であると考えられ「体育」として発展しました。

(2)諸外国における歴史

国際的には1944(昭和19)年、英国政府の要請により開設されたストーク・マンデビル(Stoke Mandevill)病院の脊髄損傷センターにおいて、「スポーツは障害をもつ者に対する身体的・心理的・社会的リハビリテーションとして最大の役割を果たす」とした“医療スポーツ”という新しい考えが導入されました。1957年には、イギリスのグッドマン博士(Sir. Ludwing Guttmann)が「身体障害者のリハビリテーションにおけるスポーツの重要性」を、ロンドンで開催された学会において発表しています。

 その後、諸外国においては、何世紀にもわたり医療の中に体育やスポーツを積極的に取り入れています。イギリスでは治療体操士が、アメリカではセラピューティック・レクリエーション・スペシャリストが、ドイツではスポーツ・セラピストが他の医療専門職と共にリハビリテーション領域で活躍しています。

(3)日本におけるリハビリテーション体育の歴史

わが国のリハビリテーション体育の前身は、旧厚生省社会局管下の国立身体障害者更生指導所(旧国立身体障害センター)において、1950(昭和25)年に体育教師の資格を有する増田弥太郎氏が、若年肢体不自由者に対し「運動療法を施す」ことを目的とした任務に任命され、この時代において他の施設には見られなかったスポーツを医療の中に取り入れたことが発端とされます。

(4)モデルとなったドイツにおけるスポーツセラピー

ドイツのリハビリテーション過程における運動療法は、急性期病院から地域社会の中で段階的かつ継続的に行われます。その中で、障害部分の機能的回復を重視する“理学療法”と、身体・精神・社会的にトータルな効果を期待する“リハビリテーションスポーツ”との中間に“スポーツセラピー”が位置し、さらに「専門的スポーツセラピー」と「一般的スポーツセラピー」に分けられています。

 「専門的スポーツセラピー」は身体能力の向上が目的とされ、主に急性期病院などの早い時期から行われています。一方、「一般的スポーツセラピー」はQOLの向上、社会的インテグレーション、職場復帰、健康的なライフスタイルの確立を目的とし、主にリハビリテーションセンターや地域の中で行われています。

 ドイツにおいてスポーツセラピーは、理学療法と共に「広義な運動療法」の中に包含されていますが、それぞれは独立した専門職であり、国家的に認められた制度で実施されています。

(5)わが国のリハビリテーション体育にかかわる人材養成

1964(昭和39)年には、厚生省(現:厚生労働省)が主管となり、パラリンピック東京大会(正式名称は第13回国際ストーク・マンデビル競技大会)が開催されました。この大会は、障害のある人々の社会復帰にスポーツが有用な手段であるとの認識をもたらし、日本における身体障害者の医療や福祉およびスポーツの向上・普及に多大な影響を与えると共に、身体障害者スポーツの全国的な発展の礎となりました。

 その後、国立施設や総合リハビリテーションセンター等で医療スポーツの専門職員が配置され、従事する専門家のイメージは浸透しましたが、訓練方法や内容については統一的、体系的に確立されておらず、その養成機関も存在しませんでした。

(6)リハビリテーション体育学科の設置目的

「身体障害者の治療から更生訓練、社会復帰に至るまで、体育・スポーツを通じて一貫して効果的な機能訓練、健康教育を円滑に実施するため、あるいは生きがいをもって充実した生活を送るための生活の質の確保」が社会的に要請され、1991(平成3)年に国立身体障害者リハビリテーションセンター(現在の国立障害者リハビリテーションセンター)にある学院にリハビリテーション体育専門職員養成課程(平成11年4月、リハビリテーション体育学科へ名称変更)が設置されました。

 「リハビリテーション体育」という名称は、ドイツのスポーツセラピーからリハビリテーションスポーツの領域を含む概念をモデルとして、治療体操から独自に発展した理学療法と、体育・矯正体育の2つの流れの中間に位置するとして、“リハビリテーション”と“体育”を合わせた造語として用いています。

リハビリテーション体育の専門職員の養成

リハビリテーション体育学科では、障害の範囲を身体障害のみならず、知的・発達障害や精神障害、老年期障害を対象としています。また近年は予防医学の推進により、生活習慣病の予防や介護予防の支援を含めたカリキュラムを組んでいます。

平成5年度から卒業生を輩出し、スポーツや運動を手段として障害のある方の行動変容を促し、運動機能や認知機能の向上や体力・健康・生きがいづくりなどを担う職種として、幅広い分野で活躍をしています。

リハビリテーション体育専門職には、医療・福祉・保健・教育に関する総合的知識を有し、かつ高い指導技術と活力ある豊かな人間性が求められます。そのため、本学科の教育課程では、各種科目と指導方法論を基礎にしながら、単に高度な知識と指導技術を習得するだけでなく、考える力と判断力、社会に生きる人としての豊かな人間性を育めるよう、実習(演習)にも多くの時間を費やしています。

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