令和3年度学校関係者評価結果に対する今後の取組について

 

1.統合ネットワークシステムを中心とするICT利活用による業務の効率化について

 平成30年度以来の課題である厚生労働省内LAN(統合ネットワーク)システムの主な課題は、視覚障害を持つ教官のユーザビリティに起因するものとなっています。

 来年度中に予定される次期厚生労働省内LANシステムの更改にあたり、システム仕様書に反映させるべき要件の確認を昨年度末までに終えている中で、特に、今後のシステム設計や開発上で大切なことは、視覚障害を持つ教官らの使用する補償ソフトウェアとシステム親和性です。

 この課題については、情報通信における機器、ソフトウェア及びサービスに求められる標準規格である「高齢者・障害者等配慮設計指針」を遵守すること、納品前システムにおける視覚補償ソフトウェアの動作検証を徹底することを本センター企画・情報部情報システム課及び厚生労働省施設管理室と連携・協力して本省システム担当課に意見し、開発中次期システムの完成を待っているところです。

 今後、視覚補償ソフトウェアの利活用により、視覚に障害を持つ教官を含む業務環境の改善や更なる業務の効率化を図り、より充実した学生(利用者)支援の提供に努めてまいります。

2.コロナ禍の影響とICT利活用によるオンライン授業等の一層の活用

 令和2年初めから続く新型コロナウイルス感染症拡大の大きな影響により、昨年度の進路支援事業の中心である職場見学や施術所見学、外部講師を招聘した進路支援講座、職場開拓等は対外的な活動の制約を受け、実施形態の変更や取りやめを余儀なくされました。その反面、オンライン授業を導入、実践する好機を得ました。

 オンライン授業の導入にあたりiPadやSkypeの職員研修に取り組み、年度末の約1か月間に受験学年生に対するオンライン授業を一部導入して実施したところ、コロナ禍に国家試験の受験を目前に控えた学生(利用者)からの好評を得ました。また、他センターの取組の実績から、卒業後の研修会の実施形態として有効に活用できることが示唆されています。

 今年度7月末から8月初めにかけて開催される自立支援局教官研修会では、函館、所沢、神戸、福岡4センターの各教官がオンライン開催として参加して取り組んでいます。「新時代の理療教育のあり方を考える」という全体テーマの下に、現行カリキュラム指導上の課題、高年齢教官の知識や経験の生かし方、最近の視覚障害者をめぐる法制度の動向等の内容を企画・準備したものです。

 同時に、このオンライン研修を通してその効果や利点とともに、内在する課題や問題点を学生(利用者)の視線から各教官が体感することにより、ICTへの理解を深めてそれぞれの活用指導力の向上を図れるようにプログラムしました。

 オンライン教育はコロナ禍が過ぎてしまえば無用となるものではありません。学生(利用者)が自ら考え、自力で取り組む能動的学習体制の確立のための環境整備の一つとして重要となるばかりではなく、卒業生の国家試験の再受験指導や障害者の生涯学習や技能研修の新たな形態として、障害福祉サービスの一層の充実という観点からも、取り組んでまいります。

3.特別指導教官の増員への取組について

 委員の方には、理療教育における個々に応じた支援の中核となる特別指導教官配置の重要性を理解していただき、特別指導教官の配置促進にも触れていただきました。

 特別指導教官の役割として、一例を示します。

 専門課程3年間、あるいは高等課程5年間という理療教育の標準修学期間は、他の就労移行支援サービスに比べても長期間に及びます。聴覚や肢体の障害のような目に見える障害の重複に限らず、長期的な学習活動の経験を経て、自身の目に見えない障害や困難に改めて気づく、気づかされることがあります。それらに発達障害、高次脳機能障害、協調運動障害等があります。それぞれに原因や特性、対処法を深く理解して、他の教官、生活支援員らとの連携の中核として、より高度で専門的な教育支援を効果的に提供することが特別指導教官に求められます。

 学生(利用者)が学習の継続を断念したり、自信を喪失しないように配慮しながら行った特別指導教官の本センターにおける支援実績を積極的に発信することにより、更なる配置促進に関する関係各方面の理解を得て、新たな特別指導教官の育成や更なる活用に引き続き取り組み、個別的支援の質的向上を図ってまいります。

令和3年7月30日(金)

国立障害者リハビリテーションセンター

理療教育・就労支援部 理療教育課