令和元年度 ヘルスキーパー従事者卒後研修会(進路別卒後研修会)実施報告

 

 この研修会は、当センター理療教育の各課程を卒業、修了し、企業内ヘルスキーパーとして勤務する方に対し、施術に関する知識、技能の向上を図り、職場への定着を確実なものにするため、毎年3回実施しております。

 今年度は、「トリガーポイント療法・技術編」として、アナトミートレインを用いてトリガーポイントを改善させることをテーマに、3回シリーズで実施しました。

 

【第1回】

日 時:令和元年6月9日(日)13時00分~16時00分

講 師:トリガーポイント研究所  篠原 裕之 氏

テーマ:「筋膜痛と機能障害を解放する理論とスキル~トリガーポイント療法~」

参加者:19名

 

 症状だけではなく、心身の全体を捉えることが必要であるとのお話から始まり、

 前半は、トリガーポイントを提唱されたトラベラー氏が指摘した栄養、運動、心理的側面からのケアについてのお話と、「筋筋膜疼痛症候群」の特徴及び発生機序、更に触診法がご教授いただきました。

 後半は、腰痛の参加者をモデルに、痛みがどのような姿勢や動きで現れるかを確認しながら、罹患筋とその関連領域を推定しての施術が紹介され、手技については先生が習得されたモビリゼーションなどのアプローチの説明を交えながら紹介されました。その後、参加者がペアで触診の実技を行い、先生が巡回しながら丁寧に指導されました。

 先生はこうした研修会の講師を務めるのは初めてとのことでしたが、大変落ち着いた様子でお話も分かりやすく、熱心な質疑応答を交えながらの3時間でした。

 

【第2回】

日 時:令和元年9月29日(日)13時00分 ~ 16時00分

講 師:アーク鍼灸治療院 院長  篠原 裕之 氏

テーマ:「トリガーポイント療法・技術編

~アナトミートレインを用いてトリガーポイントを改善させるKKR法~」

参加者:18名

 

 シリーズの2回目は、トリガーポイントの理論についての復習から始まり、触察法及び治療法を教えていただきました。序盤は、腰痛患者の大腰筋へのアプローチ方法です。

 先生が腹部の触察をデモンストレーションされた後に、ペアを作りお互いに行いました。中盤は、先生が各受講者に直接触れながら、上肢のしびれに対し、斜角筋のトリガーポイントの改善を目的とした触察法をご指導いただきました。

 終盤は、斜角筋のトリガーポイントの改善に対し、小円筋や上腕二頭筋にアプローチすることにより改善することをペアごとに確認しながらご指導いただきました。

 受講者からは「腰痛患者への触察法そして治療へと学ぶことができた」、「非常に応用的な内容で、早速実践したい」などの声が寄せられました。

 

【第3回】

日 時:令和2年3月1日(日)13時00分 ~ 16時00分

講 師:アーク鍼灸治療院 院長  篠原 裕之氏

テーマ:「筋膜の繋がりを使用した隔膜調整」

参加者:9名

 

 シリーズ3回目のテーマは「筋膜の繋がりを使用した隔膜調整」でした。

 身体各部の筋群をまとめて覆い隔てる隔膜を緩めることで、肩こり、腰、膝の痛みばかりでなく、内臓の不調の改善にもつながるとのことです。

 後頭下筋膜(後頸部と後頭部の境目)と横隔膜(胸部と腹部の境目)を同時に押さえて緩め、尿生殖隔膜(鼠径部)と足底筋膜(足の裏)を同時に押さえて緩める。

これらの手技を先生から受講者一人一人に直接、手を取ってご指導いただきました。

時節柄、受講者は全員マスクを着用し、頻繁に手指の消毒、換気を実施しました。

 皆さん熱心に受講し「今日教えてもらったことを早速、職場で活用したい」と話す声が多く聞かれました。

令和元年度 進路別卒後研修会(特別養護老人ホーム勤務者卒後研修会)実施報告

 

この研修会は、当センター理療教育の各課程を卒業、修了し、特別養護老人ホームに機能訓練指導員として勤務する方に対し、施術に関する知識、技能の向上を図り、職場への定着を確実なものにするため、毎年3回実施しております。

【第1回】

日 時:令和元年5月19日(日) 13時30分~16時30分

講 師:筑波技術大学保健学部 教授 藤井 亮輔 氏

テーマ:「関節障害とモビライゼーション」

参加者:15名

 

 関節モビライゼーションは、徒手で関節を他動的に動かし、本来あるべき関節の遊びを元に戻す手技療法です。関節の動きや痛みがある場合、即効性があり、方法を間違うと脱臼などを起こしかねない注意点があります。

 前半は、モビライゼーションの基礎理論の他に離開法、滑り法(凹凸の法則)の安全なテクニック法をご教授いただきました。

 後半は、変形性膝関節症に対する機能回復プログラムである①膝周囲のマッサージ、②運動療法、③モビライゼーション、④セルフケア(大腿四頭筋のマッスルセッティング)の方法を参加者1人ずつ丁寧にご指導いただきました。

 受講者は、明日からの仕事に早速活用しようと、応用するために熱心に受講し、講師との質疑応答も活発でした。

 

【第2回】

日 時:令和元年8月18日(日) 13時30分~16時30分

講 師:王子治療院 院長 与那嶺 岩男 氏

内 容:「介護保険について」及び「会員による意見交換会」

参加者:12名

 

 前半は、与那嶺岩男先生による「介護保険について」の講演が行われました。その要旨は下記のとおりです。

 〈急速な高齢化が進んだため、介護保険制度が導入された。しかし「年寄りの面倒は家族がみるべき」とする「日本型介護」が行われてきたため、介護保険制度の実施は先進国の中では遅かった。健康寿命は平均寿命より10年以上短く、10年以上、介護を受けなければならず、介護保険は重要である。しかし「よその人に入られたくない」という人が少なくなく、こういう人は介護保険制度の恩恵を受けられない。従来は複数の若者が一人の高齢者を支える騎馬戦型だったが、今後は一人の若者が一人の高齢者を支える肩車型になっていくと予想され、介護保険制度が維持できるか懸念される状況となっている。〉

 後半は、会員による意見交換が行われました。

 今回、当研修会に初めて参加した若いM氏から、「私は歩行・立位訓練をさせられているが弱視なので安全にできるか不安である」という悩みが出され、これをめぐって活発な意見が出されました。

※上司や職場のスタッフに相談するべきである。

※できないことはできないと、はっきり言ったほうがよい。

※歩行訓練ができなくても悲観することはない。マッサージ師でないとできないこともある。安心・快適な施設生活を過ごしてもらうことが、いちばん大事であり、そのためにマッサージは非常に役立っている。

などです。

このような先輩の意見にM氏は励まされた様子でした。経験者との交流も本研修会の意義の一つと思われます。

 会は和気藹々とした雰囲気の中で活発な意見交換が行われ、盛況のうちに終了しました。

 

【第3回】

日 時:令和元年11月17日(日) 13時30分~16時30分

講 師:元国立障害者リハビリテーションセンター厚生労働教官 柳澤 春樹 氏

テーマ:「高次脳機能障害の理解とリハビリテーション」

参加者:13名

 

 前半は、高次脳機能障害の概念と定義についての講義が行われました。

 後半は、講師の柳澤先生が当センターの教官になられる前に、都内の病院で理学療法士として働かれていた折に遭遇した様々な具体例についてお話しいただきました。

 受講者は、明日からの仕事に活用しようと熱心に受講し、先生との質疑応答も活発でした。

令和元年度 臨床研修講座 実施報告

 

 臨床研修講座は、当センターを卒業・修了されて5年以内の方に対して、卒業後の職場定着支援の一環として、理療技能について一層の向上を図ることを目的に開催しているものです。

 令和元年度は、「徒手を用いての、痛みの緩和の理論と実際」を全体テーマとして、計3回の講座を連続シリーズで実施しました。

 

実 施 日
講 座 内 容
第1回
令和元年度 9月  8日(日)
ZATメソッドに基づいた、呼吸法 基礎編
第2回
令和元年度 9月15日(日)
ZATメソッドに基づいた、姿勢法 基礎編
第3回
令和元年度10月20日(日)
ZATメソッドに基づいた、
呼吸法と姿勢法 応用編

 

 講師の内田先生は、神奈川衛生学園専門学校在籍時にドイツ、VPTアカデミーから招聘され、同アカデミーのフィジオ(理学療法科)に留学されました。そして、日本人初のスポーツフィジオ、PNF、スポーツフィジオの認定試験に合格されました。帰国後は、神奈川衛生学園専門学校臨床部横浜国際プールはりきゅうマッサージ室室長として、外来患者の治療、またアマチュアからプロアスリートまでの指導にあたっておいでです。

 今回の研修では、内田先生の国内外での幅広いご経験からのご講義と、手技療法が紹介されました。

 第1回は7名が受講し、内田先生から、「呼吸法が身体に与える影響について」の講義がありました。その後どのように臨床に活かすのかのデモストレーションを行い、2人組になり仰臥位で呼吸法を行いました。

 第2回は7名が受講し、内田先生のデモンストレーション後に、2人組になり手技を確認しました。仰臥位になり頭部の位置を確認し正しい位置へと調整しました。その後、胸郭のマッサージの手技を確認し、実践しました。第1回目の呼吸法とリンクする内容になり、呼吸と姿勢のつながりを受講者が体感できました。

 第3回は8名が受講し、前半は第1回、第2回を踏まえ、全体テーマの「徒手を用いての、痛みの緩和の理論と実際」について講義がありました。その後、内田先生との活発な質疑応答がなされました。

 実技指導では2人組になり、内田先生が受講者一人ひとりの手を取って施術方法を説明され、最後まで熱のこもった講座となりました。

 施術効果を実感した受講者からは、「ZATメソッドに基づいた、呼吸法と姿勢法を実際に体験できとても良い研修会だった」「貴重な体験の機会を得られて良かった」、「新しい視点で大変勉強になった」、「1回目の講座の後、実際に患者さんに施術し、即座に実践することができた」、「明日からすぐに実践できる手技があり非常に勉強になった」などの声が寄せられ、関心の高さをうかがわせ、時間が足りないほどの有意義な研修会となりました。

参加者へ実技指導される内田先生(右)

令和元年度 卒後研修会・東光会学術大会実施報告

 

 当センターでは卒後支援の一環として毎年10月に卒後研修会・東光会学術大会を東光会(同窓会)との共催で開催しております。

 今回の研修会は、共催となった平成2年から数えまして、この度で30回目を迎えました。全体テーマは「東洋療法におけるトータルコンディショニング~運動器症状の緩和を中心として~」で、午前は講演2題、午後は公開実技により、理療技術を広く深く学ぶことを目的として企画しました。

 講演1では、前半は藤井亮輔先生から「低周波鍼通電療法の基礎と実際」について、講演2では、内田真弘先生から「PNFとゼロ式姿勢調整法による痛みのコントロールの理論とその実際」について講演をいただきました。

 午後は、場所を実技室に移して実習が行われました。講師の先生方から直接、参加者に施術の一部を実施いただき、表面電極や鍼を用いたパルス療法、ゼロ式姿勢調整法といった実技について、貴重な体験ができました。

また、重度の視覚障害を有する参加者に対して、口頭での解りやすい説明や手を取って教えてくださるなど、懇切丁寧にご指導をいただきました。

 参加者からは、神経・筋の走行を確認しながら力の入れ方などを反復練習し、一つでも多くの技術を習得しようと、熱心に取り組む様子が見受けられました。

 終了時には、「筋パルスや神経パルスを取り入れるきっかけとなった」、「今まで意識していなかった呼吸の重要さを知ることができた」などの感想が寄せられ、有意義な卒後研修の場となりました。

1 日 時:令和元年10月5日(土)10:00~17:00

2 会 場:国立障害者リハビリテーションセンター

      本館4階中会議室及び訓練棟2階実技室

3 参加者:卒業・修了生  33名

       内訳:塩原視力障害センター  8名

                   国立障害者リハビリテーションセンター 25名

                                                    (現役利用者  2名)

4 全体テーマ:「東洋療法におけるトータルコンディショニング

                                     ~運動器症状の緩和を中心として~」

5 演題・講師

講演1: 「低周波鍼通電療法の基礎と実際」

一般財団法人 一枝のゆめ財団 専務理事

筑波技術大学保健科学部 教授   藤井 亮輔 先生

筑波技術大学附属東西医学統合医療センター

研修生 技術補佐員  堀田 直哉 先生

 

講演2:「PNFとゼロ式姿勢調整法による痛みのコントロールの理論とその実際」

神奈川衛生学園専門学校 臨床部 

横浜国際プールはりきゅうマッサージ室 室長  内田 真弘 先生

きゅうあん鍼灸院 院長  四元 智己 先生

令和元年度 国立障害者リハビリテーションセンター
自立支援局教官研修会 実施報告

 令和元年7月30日から8月2日までの日程で、自立支援局主催の教官研修会を実施しました。

 本研修会は、理療教育における教官の指導技術の向上及び業務遂行上必要な幅広い知識を修得し、教官の資質の向上を図ることを目的としています。

 全体テーマは、「実りある授業を実践するための工夫~発想の起点を求めて~」とし、函館、所沢、神戸、福岡の各センターから36名の教官が参加しました。

 自立支援局長の開会の挨拶とマインドフルネスの実践を受け、研修会は落着いた空気の中で始まりました。

 初日の基調講演は、筑波大学人間系教授の原田悦子先生から、「中高齢者における学習を考える~効果的・効率的な学習方法を目指して~」のご講演をいただきました。認知心理学・認知工学から中高齢者の「学習」を捉える内容に、参加者一同、刺激を受けました。

 2日目午前は、千葉大学大学院医学研究院の菅田陽太先生から、「解剖学の教育方法を考える」のご講演と演習をいただきました。心臓を素材に、教授法を考える演習は、各グループとも熱を帯びていました。

 2日目の午後は、平成30年度からの新カリキュラムに伴い、指導内容の増えた科目についての検証、検討をテーマに分科会を行いました。参加者は、科目毎8グループに分かれ、各センターの取組み状況や課題について、活発に議論しました。

 3日目の午前は、情報提供として、浮田正貴特別指導教官から、「特別指導教官の取組み~1年間の授業実践から~」の報告が行われたほか、「データ作成・管理に係るセンターの現状と課題」について情報交換が行われました。

 3日目の午後は、特別講演として、桃山学院教育大学学長の梶田叡一先生に、「優れた教師が備えるべき資質と条件」のテーマで、学ぶ側の「守・破・離」、教える側の「開示悟入」など、教育活動の軸について、貴重なご講演をいただきました。

 最終日の4日目は、筑波大学附属視覚特別支援学校鍼灸手技療法科教諭の岸本有紀先生に、「わかりやすい授業のための自作教材の作成法・活用法・評価法」のテーマで、自作模型のご紹介と、参加者が呼吸運動模型を作成する演習をいただきました。

 理療教育・就労支援部三浦部長から、激励を込めた結びの挨拶が行われ、研修会は充実感とともに閉会しました。

1 期 日

  令和元年7月30日(火)~8月2日(金)

2 会 場

  国立障害者リハビリテーションセンター

3 参加者

 国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 36名

  函館視力障害センター 教務課              6名

  神戸視力障害センター 教務課              6名

  福岡視力障害センター 教務課              2名

  理療教育・就労支援部 理療教育課(所沢)  22名

 

4 研修内容

 (1)基調講演:7月30日(火) 14:00~16:45

      演 題:「中高齢者における学習を考える
                ~効果的・効率的な学習方法を目指して~」

      講 師:筑波大学 人間系 教授 原田 悦子 先生

      司 会:柴田 均一 教官

 (2)講演・演習:7月31日(水) 9:15~12:00

      演 題:「解剖学の教育方法を考える」

      講 師:千葉大学大学院 医学研究院 環境生命医学 技術職員 菅田 陽太 先生

      司 会:藤原 太樹 教官

 (3)グループ協議:7月31日(水) 13:30~16:15

      演 題:「新カリキュラムにおける『○○を含む』科目についての検証、検討」

      進 行:滝 修 教官

 (4)情報提供: 8月1日(木) 9:15~9:55

      演 題:「特別指導教官の取組み ~1年間の授業実践から~」

      報告者:浮田 正貴 特別指導教官

      司 会:米田 裕和 教官

 (5)情報交換:8月1日(木) 10:10~12:00

      演 題:「データ作成・管理に係るセンターの現状と課題」

      進 行:柴原 繁俊 理療教育課長

      助言者:加藤 嘉輝 係長

 (6)特別講演:8月1日(木) 13:30~16:15

      演 題:「優れた教師が備えるべき資質と条件」

      講 師:桃山学院教育大学 学長 梶田 叡一 先生

      司 会:麻生 弘樹 教官

 (7)講演・演習:8月2日(金) 9:15~12:00

      演 題:「わかりやすい授業のための自作教材の作成法・活用法・評価法」

                ~簡単で安価な教材の作成をとおして~

      講 師:筑波大学附属視覚特別支援学校 鍼灸手技療法科 教諭 岸本 有紀 先生

      司 会:橋本 拓也 教官