令和4年度臨床研修講座実施報告

 臨床研修講座は、当センターを卒業・修了されて5年以内の方に対して、卒業後の職場定着支援の一環として、理療技能について一層の向上を図ることを目的に開催しているものです。

 今年度は、「経絡を意識した手技療法」を演題として1日を通して実施しました。

 講師の鈴木格先生は、学校法人花田学園日本鍼灸理療専門学校の専任教員として14年間ご活躍されている一方、当センターの非常勤講師として5年間ご勤務いただいております。また、プロスポーツ選手のトレーナーなどの実績もあり、教育と臨床両方の現場で幅広くご活躍されています。

 はじめに総論として、実技を行う上で意識されている気血津液の考えを講義形式で話され、その後実際に体を使って実技指導という流れで行われました。

 実技では、前腕や肘、膝など大きな面を利用した施術方法をご指導いただきました。普段行ったことがない施術方法を体験した受講者からは、「今日、習ったことを安全に練習するにはどの部位がいいですか」、「脳血管障害の患者さんにはどのようにしたらいいですか」、「足がだるい患者さんにピンポイントに効果を出すにはどうしたらいいですか」、「肩が上がらない患者さんにはどうしたらいいですか」など、今の職場での悩みや相談も多数質問があり、今回学んだことを職場で活かそうとする受講者の意欲を感じる研修会となりました。

※気血津液(きけつしんえき)とは

 細かく気・血・津液に分けられます。それらは現代医学で言うエネルギー(気)や血液(血)、血液以外の水分(津液)と捉えることができ、生命活動に無くてはならないものです。東洋医学では、その気血津液のバランスが崩れると体に不調が生じ様々な症状が出てくるという考えがあります。

写真 講義の様子 写真 実技の様子

        講義の様子                 実技の様子

令和4年度卒後研修会実施報告

 当センターでは卒後支援の一環として毎年10月に卒後研修会を東光会(同窓会)との共催で開催しております。

 今回の研修会は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からオンラインで実施しました。全体テーマは「関節及び骨格筋、神経へのアプローチをとおして~運動器症状の緩和を中心として~」で企画しました。

 午前は、東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の坂井友実先生に「頚肩腕痛の病態の捉え方と病態に基づく鍼灸手技療法」のテーマでご講演いただきました。病態把握の重要性から、各疾患のエビデンスに基づいた内容により最新の鍼灸治療についてお話いただきました。

 午後は、筑波大学附属視覚特別支援学校高等部専攻科鍼灸手技療法科教諭の柴田健一先生に「上下肢における筋・関節のポジショニングに着目したあん摩実技法-視覚障害者が効率よく施術できるポイントを提示しながら-」のテーマでご講演いただきました。先生の長きにわたる治療経験から、各疾患にどのように向き合うことが効率的なのか、受講者の疑問が解決されていく大変有意義な時間となりました。

 オンラインという制約はあったものの、講師はお二人ともに視覚障害者の教育に精通しておられ、卒業生・修了生にとっても大変わかりやすく、実りの多い研修の場となりました。

1 日 時:令和4年10月1日(土)10:30~16:00

2 会 場:国立障害者リハビリテーションセンター

      本館4階中会議室(オンライン会場)

3 参加者:卒業・修了生      16名

       内訳:塩原視力障害センター        2名

                 国立障害者リハビリテーションセンター 14名

4 全体テーマ:

 「関節及び骨格筋、神経へのアプローチをとおして~運動器症状の緩和を中心として~」

5 演題・講師

 「頚肩腕痛の病態の捉え方と病態に基づく鍼灸手技療法」

  東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授 坂井友実先生

 「上下肢における筋・関節のポジショニングに着目したあん摩実技法

  -視覚障害者が効率よく施術できるポイントを提示しながら-」

  筑波大学附属視覚特別支援学校高等部専攻科鍼灸手技療法科教諭 柴田健一先生

6 研修会の様子

 坂井先生のご講演の様子柴田先生のご講演の様子

 左:坂井先生のご講演の様子

 右:柴田先生のご講演の様子

令和4年度国立障害者リハビリテーションセンター

自立支援局教官研修会実施報告

 

 当センター自立支援局においては、今般、新型コロナウイルスの感染対策を講じながら理療教育に携わる教官を対象に下記のとおり研修会を実施しました。

 今年度のテーマは、「教育現場に求められるマネジメント力」とし、函館・神戸・福岡の3つの視力障害センターと国立障害者リハビリテーションセンター理療教育課(所沢)の教官が、対面とオンラインで交流を持ちながら進められました。

 初日の冒頭、芳賀自立支援局長から開催に当たって、次のような挨拶がありました。

 「本研修会は、理療教育の教官の指導技術力の向上と、業務遂行上必要な幅広い知識を習得することによる教官の資質向上を目的として開催している。社会経済活動と感染症対策との両立を図りながら、一部ではあるが各視力障害センターから参加を得て、3年ぶりの対面による開催となった。今回の内容は、現在の社会の変革に理療教育がどう対応していくか、教官一人一人が日々の業務に反映させていくために重要であると共に、第3期中期目標で理療教育に上げられた8つの目標にも重なる部分がある。組織力を高め、国リハにしかできないこと、国リハだからできることに注力し、より障害者の役に立てるように、自ら変革し、共生社会の実現に寄与することを業務改革のコンセプトとするようお願いしている。第3中期目標の理療教育に関するプロジェクトに関することだけでなく、業務改革のコンセプトに関して、自ら当事者意識を持って取組んでいただきたい。本研修会で得られた成果を今後の理療教育の一助にしていただきたい。」

 次に、鳴門教育大学の藤村裕一教授から「ICTを活用した学校教育の情報化の現状と未来」というテーマで、神戸視力障害センターでご講演いただきました。函館・所沢・福岡の各センターの教官は、オンラインで参加しました。学校教育におけるICTの活用状況の諸外国との比較や、国内で情報化が進んでいる学校の実例を取り上げながらわかりやすくご説明いただきました。学生の支援や授業・業務の改善等の教育改革をするためには、ICT活用が不可欠であること、学校教育におけるICTの積極的な活用の結果が学力として現れることが示され、教官自身のICT機器利活用のスキルアップを求められていることを痛感させられる内容でした。

 2日目の午前は、筑波技術大学の村上佳久先生から「ICT教育の現状と今後~教材作成の工夫と提供方法~」というテーマでご講演いただきました。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師国家試験で使用されているデイジーCDの現状、出題傾向から考えられる教育方法やICTの活用方法について最新の情報を交えてご説明いただきました。また、視覚障害教育において利用者の学習方法を見極め、その上でパソコンを使用する際に最低限必要なこととして、読み上げ用専門辞書と日本語変換辞書をパソコンに設定し、学習環境を確保することが重要ということをご教授いただきました。国家試験の読み上げが合成音声になったことで、学習者が合成音声に慣れるための教材作成や、近い将来国家試験でのパソコン受験に備えた指導を行っていく必要性について再認識することができました。

 その後、函館・所沢・神戸・福岡の4センターの教官で情報交換を行いました。、令和3年度から試行的に始めた動画の共同コンテンツについて、各センターから取組状況の報告が行われました。どこでも簡単に視聴できる、分かりやすい学習教材の作成を目指し、昨年度の取組を参考に今年度、4センターの全教官が取組を進めている様子が窺えました。

 午後は、明治国際医療大学の矢野忠学長から「あはきの未来と視覚障害教育においてセンターに期待するもの」というテーマでご講演いただきました。あはき施術に関する最新の知見や社会の中での役割を具体的に示しながら、将来への道標を示していただいたように思いました。また、あはき手技療法の学術への貢献と質の高いあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師を養成することが、センターの役割であり、期待することという大切なメッセージをいただき、そのことを教官一同心に刻みました。今後の取組の一層の推進に繋がる内容でした。

 3日目の午前は、産業能率大学の荒井明教授から「キャリア設計について」というテーマでご講演いただきました。キャリアとは、自分で創るキャリア、キャリアアンカー、キャリアを取り巻く現状と多様化するキャリアデザインについて、わかりやすく解説していただきました。中でもキャリアアンカーは演習形式で行われ、キャリアとして譲れないものを各自で確認することができ、また、自身のキャリアを知ることができた有意義な時間となりました。

 午後は、千葉県立千葉盲学校の青木隆一校長から「盲学校の現状と学習指導要領における理療・保健理療の改訂のポイント」というテーマで講演いただきました。千葉盲学校の紹介の後、全国の盲学校の状況を過去と比較しながらお示しいただきました。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師を目指す視覚障害者が減少する昨今、彼らにあん摩マッサージ指圧、はり、きゅうの魅力を伝えることの重要性を述べられました。また、新学習指導要領(文部科学省)と養成施設指導要領(厚生労働省)との違いをわかりやすく解説いただくと共に、学校養成施設認定規則(文部科学省・厚生労働省との共同省令)改訂のポイントをご説明いただきました。当センターでは、令和6年度にカリキュラムの見直しを計画しており、大変参考になる内容でした。

 4日目の午前は、東京理科大学の渡辺雄貴教授から「カリキュラム・マネジメント~授業計画書の重要性と書き方~」というテーマで講演いただきました。各教官が今年度作成した授業計画書(シラバス)を使用してグループワークを行いながら、授業の入口、出口、それを繋ぐ方法についてご説明いただきました。出口にあたる学習(到達)目標の設定が重要でそれを基に評価方法を考えていくという手順と認知能動的学習の重要性についてお示しいただきました。グループワークでは参加者同士で熱い議論が行われ、日々の授業を振り返る良い機会となりました。

 閉会式では、太田教務統括官から次のような挨拶がありました。

 「今回、オンラインでのハイブリッドであるものの、対面での3年ぶりの開催となり、この4月に採用された3名の教官が、所沢に来て参加した。本研修会では、講師の先生方から貴重なお話をお聞きすることができ、現在我々が取り組んでいる組織目標にも資する研修内容であり、今後の参考にしていただきたい。また、今回のテーマの一つであった共同コンテンツの作成については、学習につまずく利用者に対する、効果的・効率的な学習プログラムの開発の一環として、取り組んでいる。利用者が能動的に学習できる環境の提供を目的に、3分ぐらいで、見てわかる、聞いてわかる、さらに教科書のイラスト、文章が動画で分かるというような、教科書の補助教材となるものを作っていただきたい。また、千葉県立盲学校の青木先生から、あはきの魅力発信とのお話があったが、あはきの国家試験受験者数をみると、視覚障害者の方は減少している。あはきの魅力を伝えていくことを各センターで積極的に行っていただきたい。」

 こうして実り多い4日間の研修会を終えることができました。

1 テーマ 「教育現場に求められるマネジメント力」

2 期 間 令和4年 8月1日(月) ~ 8月4日(木)

3 主会場

  国立障害者リハビリテーションセンター 本館4階大会議室

  オンライン(Zoom):函館・神戸・福岡の各センター

  ※一部、神戸視力障害センターが主会場となる。

4 対象者 自立支援局の全教官を対象とする。

5 内容及び日程

8月1日(月) 

 13:30 ~ 13:45  対面+オンライン

  開会式

  挨拶:芳賀 信彦 自立支援局長

 14:00 ~ 16:30 対面+オンライン ※主会場 神戸視力障害センター

  演題:「ICTを活用した学校教育の情報化の現状と未来」

  講師:国立大学法人 鳴門教育大学 大学院 学校教育研究科教授 藤村 裕一 先生

  司会(オンライン):今井  進 教官(神戸視力障害センター)

8月2日(火)

 9:00 ~ 11:30  対面+オンライン

  演題:「ICT教育の現状と今後~教材作成の工夫と提供方法~」

  講師:国立大学法人 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター障害者基礎教育研究部

     村上 佳久 先生

  司会(オンライン):河原塚 由紀 教官(函館視力障害センター)

 11:30 ~ 12:00  対面+オンライン

  【各センターと情報交換】「動画教材の扱い、その後」

  司会(オンライン):平瀬 芳美 教官(函館視力障害センター)

 13:30 ~ 16:30  対面+オンライン

  演題:【特別講演】「あはきの未来と視覚障害教育においてセンターに期待するもの」

  講師:明治国際医療大学学長 矢野  忠 先生

  司会:加藤  麦 教官(国立障害者リハビリテーションセンター)

8月3日(水)

 10:00 ~ 12:00  対面+オンライン

  演題:「キャリア設計について」

  講師:産業能率大学 経営学部教授 荒井  明 先生

  司会:池田 和久 主任教官(国立障害者リハビリテーションセンター)

 13:30 ~ 16:00  対面+オンライン

  演題:「盲学校の現状と学習指導要領における理療・保健理療の改訂のポイント」

  講師:千葉県立千葉盲学校校長 青木 隆一 先生

  司会:山本 浩二 教官(国立障害者リハビリテーションセンター)

8月4日(木)

 9:30 ~ 11:30 対面のみ

  演題:「カリキュラム・マネジメント~授業計画書の重要性と書き方~」 

  講師:東京理科大学 教育支援機構 教職教育センター大学院 理学研究科 科学教育専攻 教授

     渡辺 雄貴 先生

  司会:佐藤 智紀 教官(国立障害者リハビリテーションセンター)

 11:40 ~ 11:50 閉会式

  挨拶 太田 浩之 教務統括官

6.対面とオンラインのハイブリッド形式で行われた研修会の様子

開会式の芳賀自立支援局挨拶の様子の写真写真1 開会式の芳賀自立支援局挨拶の様子

鳴門教育大学教授藤村先生の講演の様子の写真

写真2 鳴門教育大学教授藤村先生の講演の様子

筑波技術大学村上先生の講演の様子の写真写真3 筑波技術大学村上先生の講演の様子

明治国際医療大学学長矢野先生の講演の様子の写真写真4 明治国際医療大学学長矢野先生の講演の様子  

産業能率大学教授荒井先生の講演の様子の写真写真5 産業能率大学教授荒井先生の講演の様子

千葉県立盲学校校長青木先生の講演の様子の写真写真6 千葉県立盲学校校長青木先生の講演の様子

東京理科大学教授渡辺先生講演のグループワークの様子の写真写真7 東京理科大学教授渡辺先生講演のグループワークの様子

閉会式の太田教務統括官挨拶の様子の写真写真8 閉会式の太田教務統括官挨拶の様子