脳卒中片麻痺患者の上肢機能  −MFTからみたSTEFの特徴−


第一機能回復訓練部 井上美紀 ・森山早苗・森田稲子
大塚 進・山本正浩・野月夕香理
伊藤 伸・渡辺資子

【はじめに】 我々は、患者の上肢機能を把握するために脳卒中上肢機能検査(Manual Function Test; MFT)と簡易上肢機能検査(Simple Test for Evaluating Hand Function; STEF)を実施してきた。MFTは脳卒中片麻痺患者の上肢機能の回復過程を経時的に測定・記録するために開発された検査である。STEFは大きさ・形・重さ・素材の異なる10種類の対象物をつまみ、種々の方向へ移動し、離す動作に要する時間測定から得点を算出する検査である。したがって、脳卒中片麻痺患者にSTEFを用いた場合得点可能な者は限定される。今回、STEFの得点可能なレベルをMFT得点(MFS)との関連から検討した。

【対象と方法】対象は1995年1月から1998年6月の間に入院した、発症から6月以内の脳卒中患者248例、右麻痺142、左麻痺106、男188、女60例であった。知能低下、失行・失認、精神障害の明らかな者および失明、RA、CP等の疾患を合併する者は除いた。MFTとSTEFは原則として入院から2週以内の同日に実施した。

【結果】

(1) MFSとSTEF得点は、いずれも0〜100の間に分布していた。MFS0は59例(23.8%)、STEF0は163例(65.7%)であった。

(2) STEF可、不可に関わらず同一MFSに対するSTEF得点のばらつきが大きいことから、MFS0、1〜30未満、30〜60未満、60〜100の4群に分け、各群のSTEF可、不可の人数を調べた。MFS0群と1〜30未満群は全例STEF不可、MFS30〜60未満群は不可26例、可24例と二分された。MFS60以上群62例では、不可は1例だけであった。

(3) MFS60以上群のSTEF得点は0〜100の間に分布していた。MFS10毎に4群(A〜D)に分け各群のSTEF平均得点を調べた。A−B間、C−D間に有意差はなく、A−C間(t=-4.427)、A−D間(t=-6.025)、B−C間(t=-4.299)、B−D間(t=-5.765)に有意差があった(各p<0.01)。A+B、C+Dの2群に分け、MFSとSTEF得点の関連をみた場合、後者にだけ有意な相関があった(r=0.5415, p<0.01)。

【結論】

(1) 脳卒中片麻痺患者248例中、STEF得点可能な者は1/3の85例であった。

(2) MFSを基準に群分けし、STEFとの関連をみた場合、有意な相関を示したのはMFS80以上群であった。

(3) STEFによる評価の適応は実用レベルに達した上肢(MFS80以上)であった。





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