脊髄損傷者の装具歩行における下肢筋電活動の末梢性調節について

研究所運動機能系障害研究部 小島成実 ・中澤公孝・矢野英雄

 筆者らは完全脊損者の長下肢装具歩行時の下腿の筋の活動の調節に、荷重に関わる感覚情報がいかなる貢献をしているのかを調べるため、免荷の量を様々に変化させた装具歩行中の下腿三頭筋、前脛骨筋の筋電図、足底荷重情報の間の関係を調べた。完全脊損者でも、長下肢装具歩行により、下肢のリズミカルな筋活動が発現するが、免荷量の増加により下腿三頭筋の活動は減少した。この結果は先行研究と同傾向にあったが、本研究では足、膝関節の固定により、自筋の伸張反射の影響を最小化できたと考えられ、ヒトの腰仙髄に内在する歩行の中枢リズム発生回路に、下肢の荷重に関わる外部入力が作用し、最終的な筋出力に影響を与えていると見ることができる。その作用の仕方が機能的であることから、健常者の歩行を司る神経・筋機構についても、このような脊髄自体の持つ歩行機能が大きく関与している可能性が示唆された。




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