シーティングクリニックの紹介

病院 伊集玲子 ・岩崎 洋・関 寛之
研究所 廣瀬秀行・井上剛伸・高橋功次
岡本 晋

【はじめに】 姿勢保持能力低下のある障害者にとって「座位」は基本的な姿勢であり、一日のほとんどの時間を車いす上で過ごすことになる。その座位を整え、姿勢保持に対するアプローチは重要であり、そのためのシーティングクリニックの必要性は高くなってきている。

【クリニック開始までの経緯】 当院では1992年より不定期に、入院・外来患者と更生訓練入所生に対して、座位保持装置等の機器の処方、評価、製作を行ってきた。機器の処方、製作と言っても、ただ単に使用者の安楽性だけを満たすものではなく、機器をとりまくすべての人や環境のニーズに最大限応えつつも、医学的に根拠のある最適な、機器を作らなければならない。

 そのためにはまず、より正確な評価と、機器に対して専門性を持った各専門職が関与したチームアプローチによるクリニックの必要性が認識され、98年4月から毎月第1、3金曜日に、病院PT部門を中心にリハ科外来と連携する形で、クリニックが開催されることとなった。

【クリニックの内容】 システムはリハ科を受診し、Dr.からのオーダーによりクリニックでの検討が開始される。そして評価を初期評価、仮適合評価、試用評価の3段階に分け、各段階においてチェックを行う。中でも機器を貸し出し評価する試用評価は特徴的と言え、試用評価を設けることで、機器を決定・製作する前に体験でき、長所・短所がより具体的に挙げられ、機器製作後、身体的不適合や各環境下にて問題が生じ、結局使用できない、しないという状況を極力避けられるいう利点がある。

 スタッフはPT、リハエンジニア、義肢装具士各2名ずつと医師で対応し、症例に応じてOT、ST、Nrs.が加わり、使用者側からは、本人、家族や施設指導員などが立ち会う。多職種の関与で各専門職をいかし、多くの視点を持つことによって、最適な機器を選択していくことができる。

 クリニックでは98年9月までに、CP、筋ジス、頚損・脊損、褥瘡など計44名に対し、座位保持装置を含む車いす製作や、褥瘡頻発に対するクッションの検討など対応してきた。

【おわりに】 座位保持装置をはじめとする機器の製作はそのものだけを見るのではなく、それを使う人や環境、そして機器の3つを結び検討・選択していかなければならない。そして社会制度をいかにして利用するか、その情報の提供や、又不充分な面へは働きかけ、それをとりまく各専門職、関係者の関与があって製作されていく。




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