学院 | 高嶋孝倫 ・栗山明彦 |
補装具製作部 | 小池雅俊 |
糖尿病、その他の神経障害による足病変、重度の扁平足、外反母趾等を有する患者は靴型装具を用いることにより足底での体重支持、及び歩行機能の改善が見られる。この靴型装具の製作技術で最近我々がヨーロッパ方式と呼ぶ手法がある。今回はその基本的な概念を紹介する。
現行の一般的な靴型装具の製作方法は、市販の木型(靴を製作する基になる型)に若干の修正を加え、患足に適合した靴を製作する整形靴と、患足を採型しそのモデルから木型(多くは石膏型)を起こして靴を製作する特殊靴とがある。どちらも上記いずれかの木型を基に靴を製作し、完成後に靴内部にアーチ等の補正を行う方法が一般的である。
ここに述べるヨーロッパ方式の靴型装具の製作方法は、木型と足底板(フットベッド)とが一体となって初めて靴の木型となりうる方式のものである。日本の木型の底部が靴の中底の形状をしているのに対し、ここで紹介する方式の木型の底部は足底の骨の位置に適合した、いわゆるバイオメカニカルな形状をもつ点にある。いうなればフットベッドは足底と靴とのインターフェイスであり、変形を有し骨配列が乱れた足に対しては必要不可欠かつ重要な存在であるとの考えである。従って変形等を有する複雑な足底の形状を再現するために、精密な足の採型を必要とする。
平成6年度より当センターにおいてドイツ、オーストリアより講師を招きヨーロッパ方式による靴型装具の研修会を実施しており、今回の発表はその内容に基づいている。また機能的、技術的内容からは離れるが、その際の講師の言による「靴というものは足に適合させる以前に目に適合させなければならない」という言葉が印象に残っている。紹介されたサンプルはどれも装具としての機能を満たしていたことはいうまでもなく、加えて洗練されたデザインとセンスあふれる豊富なカラーバリエーションを持っており、靴型装具を必要とする方々に楽しみも与えてくれるものであった。