補装具製作部 | 高橋功次 ・岡本 晋 |
福祉機器開発部 | 廣瀬秀行・井上剛伸 |
病院 | 岩崎 洋 ・伊集玲子・高橋博達
関 寛之 |
重度の身体障害者では残された身体機能が少なく、さまざまな福祉機器を利用しなければ日常生活動作の拡大は望めない。当センター病院では、重度の入院患者には身体機能回復訓練だけでなく、福祉機器の適応評価や操作習熟訓練もリハビリテーションプログラムの中に位置付けられている。今回、他県の療護施設に入所している重度CP者からの依頼により、電動車いすの適応評価と操作習熟訓練を実施するために入院した事例について報告する。
機能障害;アテトーゼ型CPによる四肢麻痺、体幹機能障害 年齢:21才 性別:女
ADL:食事、整容、入浴、更衣、排泄、移乗、移動において全介助
補装具:手押し型車いす(ティルト機構付き)
「電動車いすによる自立移動」の希望に対して地元の医療機関では、電動車いすの適応について評価してくれる機関がなかったため、本人は電動車いすでの移動をあきらめきれずにいた。
電動車いす上での安定した座位姿勢を保つための座位保持装置を適合させ、随意性と確実性を持った身体動作の評価を行った。不随意運動は、四肢、頭部において顕著であったが、右手の把持動作と頭部の動きが利用できること、左上肢に随意性があることを見つけ出し、電動車いすの操作が可能と判断したので操作習熟訓練を計画した。
チンコントローラー(顎でジョイスティックを動かす)と、左上肢のスイッチにより、前進、左折、右折、停止が可能となったが、走行安定性や確実性は低く自立移動は困難と思われたが、試行錯誤した結果、走査式コントローラーと右手の把持によるプッシュボタン操作によって自立移動が可能となった。なお、使用した座位保持装置付き電動車いすは、補装具交付基準額を超えるものであるため、基準外交付の手続きを行っている。
我々は、身体障害者リハビリセンターの役割として、このような福祉機器の適応評価や習熟訓練を実施することにより、重度障害者の日常生活を支援しQOLの向上が図られ、機器の効果的な供給にもつながるものと考える。今後は、他の関係機関とも提携して新たな機器供給システムの構築を目指していく。