重度障害者のためのコミュニケーション環境改善に関する研究  − 環境制御装置を中心に−

研究所 福祉機器開発部 横田恒一 ・数藤康雄
有限会社東光 南 浩一

1.はじめに

 重度障害者ための支援機器の1つとして環境制御装置がある。環境制御装置は、重度障害者が残存機能例えば息や頭などの動きを利用して、身の回りのベッド、テレビ、電話などの電気製品をコントロールすることを可能とする。環境制御装置に関するアンケート調査をおこない、環境制御装置の開発をおこなったので報告する。

2.アンケート調査

 環境制御装置に関する現状の把握と問題点を明らかにするために、頚髄損傷者の方を対象に、環境制御装置に関するアンケート調査を行った。環境制御装置の使用者は、全体の7%であり、環境制御装置が普及していないことが明らかとなった。現状の環境制御装置への不満点は「車いす上で使用できない」が最も多かった。一方で使用希望者は60%であった。使用していない理由は、「知ってはいたが自分にとってどのくらい役に立つのかわからなかったから」が最も多かった。また、多くの方が音声認識機能を用いた機器のコントロールを望んでいることが明らかになった。

3.パーソナルコンピュータ併用型環境制御装置の開発

 環境制御装置への不満点で最も多かった「車いす上で使用できない」という問題点を解決するため、使用する障害者も増えていると考えられるパーソナルコンピュータを使用した環境制御装置の開発をおこなった。この装置を使用することにより、環境制御装置への入力が従来の入力スイッチからだけでなくパーソナルコンピュータからも可能となる。この装置は、環境制御装置、パーソナルコンピュータ、デジタル入出力ボード、インターフェイスソフトから構成される。また、パーソナルコンピュータ上のインターフェイスソフトと市販の音声認識ソフトウェアと組み合わせることにより、音声による入力も可能とした。

4.おわりに

 今回のアンケート調査から、環境制御装置の現状を把握することができた。その結果から、環境制御装置は使用要望が多いにもかかわらず、普及するにはいたっていないことが明らかとなった。一方で、現状の環境制御装置に対する不満は多く、更なる改善が必要であると思われる。今後、開発した環境制御装置の評価をおこない問題点を明らかにし、使用者のニーズに合うように改善していく予定である。




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