褥瘡の治療成績について


診療部 岡 敬之 ・関 寛之・高木道人
深谷英世・菊地 崇・清水 顕

 脊髄損傷及びその他の原因にて知覚麻痺がある場合、麻痺部位に圧迫が加わると、褥瘡が生じやすい。また褥瘡を悪化させる原因として長時間の圧迫、清潔でない環境などがあげられる。今回の研究において当院にて褥瘡の入院治療を必要とした患者の障害の部位、ADL、褥瘡の部位大きさ、深度、感染の有無について検討し、治療、創閉鎖の期間、再発の回数 について検討し文献的考察をくわえた。

【対象】
 1996年5月より1999年6月まで当院整形外科にて入院治療を必要とした患者80人に対し、褥瘡の部位、また同じ入院期間中に治療した褥瘡の数、大きさ、深度、以前の褥瘡の既往、創部の培養結果、障害部位、治療法、創閉鎖の期間について検討した。リハビリ科等で入院し短期間にて治癒した褥瘡については除外している。

【結果】
 障害部位が頸髄レベルであれば仙骨部に(56.3%)、胸腰髄レベルであれば坐骨部に(46.4%)褥瘡が出来やすい傾向にあったが、統計学的に優位な差はなかった。これはADLにも関係あり、車椅子でADLが自立している場合には、坐骨部結節に出来やすい傾向にあった。入院より褥瘡の創閉鎖までの期間については褥瘡の大きさよりも深度のほうが関係しており(p<0.05)、深度の深いもの程期間が長くなった。また細菌感染と創閉鎖の期間については優位な差はみられなかった。

【考察及び結論】
 知覚障害がある場合、同部位の皮膚に圧力が加わると褥瘡を生じる可能性が高くなる。 今回細菌の感染の有無と創閉鎖の期間についても検討したが、洗浄などにより創の二次閉鎖を期待した場合、優位な関係はなかった。また手術を行った場合、術後感染が起こると創閉鎖の時間が長くなる傾向にあったが、統計学的に優位な差はなかった。知覚障害がある患者では局所の酸素欠乏や血栓が起こりやすくなるとの報告があるが、このような原因により組織が壊死し、細菌の感染の頻度が一般よりも高いように思われる。





目次へ戻る 次頁を読む