ハイドロコロイドドレッシング剤を用いた褥瘡治療


病院 診療部 整形外科 深沢克康 ・関寛之・高木道人
長島賢二・菊池崇・小宮山千晴

 褥瘡の保存療法は近年様々な治療法が開発されてきた。 今回我々は新しいハイドロコロイド系密封型創傷被覆剤の有用性の有無を検討する目的で、 以前より行っている方法を対照として臨床比較試験を行った。

 この種のドレッシングの特徴は、貼付時の乾燥粘性と浸出液を吸収した状態での湿潤粘性を併せもつことであり、 患部に長期密着してその湿潤環境を保持し、痛みを和らげ、肉芽組織の新生を促進させる作用を有する。 また臨床的には早期治癒が期待できるほかに処置が簡便であり、交換回数が少ないなどから有用性が高く評価されている。 一方以前より行っている代表例としてポピドン・シュガーを用い乾燥環境を保持することで治療効果を期待する方法を採用した。

 対象は国立身体障害者リハビリテーションセンター病院に入院中の患者のうち明らかな感染徴候を示さない褥瘡とした。 入院時に局所所見(大きさ、深度、浸出液、ポケットの有無、壊死組織の有無、肉芽形成、表皮形成など)のほかブレーデンスケール、 血液検査、培養、写真撮影を行い以後1週ごとに再評価を行った。 大きさはclock methodに準じ計測、また深度はNPUAP分類を使用した。 壊死組織に関しては積極的に外科的デブリードマンを行い、安静度は車椅子乗車を禁止しベッド上にて2時間ごとに体位交換、 ヘッドアップは30度までとした。仙骨部、坐骨部、大転子部に存在する褥瘡を持つ患者は尿による創汚染を防ぐためすべて尿カテーテルを留置した。

 創処置の方法はハイドロコロイドドレッシング剤を用いた方法(以下HD法とする)では まず創内をこすらないように強酸水にて洗浄を行ったあとガーゼで周囲の水分を拭き取り創外をヒビテンで消毒し創縁から3cm以上覆うように ドレッシング剤(コムフィールアルカス?)を貼り、ポケット形成時はペースト状のハイドロコロイド剤を使用した。 汚染されたものや浸出液の漏れる際交換することとして最長7日間そのままとした。また以前からの方法(以下従来法とする) では上記同様洗浄、消毒後壊死組織が多い症例はユーパスタ・コーワ?を色調のよい肉芽の存在する症例ではアクトシン?を使用しガーゼにて覆い、 浸出液の多い時は毎日、多くないときは1日おきに交換を行った。

 その結果HD法において著名な肉芽形成を伴う褥瘡の縮小傾向が認められ、 また交換頻度も従来法に比べ少なく治療効果とともに処置の簡便性においても有用であった。 表皮形成という点では従来法よりも遷延する印象があり画一的に治療するのではなく病期により治療法を選択した方がよい。

 HD法は以前から推奨されていた病期よりも進行した病期に置いても十分治療効果を認めた。 また浸出液が被覆剤から漏れてやむなく早期交換を余儀なくされた症例があり、 今後粘着性の高い素材の開発と凹凸のある部位にもよく密着するような形状の多様化が望まれる。





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