不適応行動を改善していくための原因分析と職員の対応
〜唾吐き行為を中心に〜

国立秩父学園 内野桂子・木村加代子・松田啓生・治療教育寮職員

 本事例は、6歳まで家庭で生活しその後当学園に入所した自閉症児であり、不適応行動(唾を吐く、奇声を発する、物を投げる)を起こしやすく、家庭での養育に困難を生じていた。本児の入所にあたり、この不適応行動(特に最も頻度の多い唾はき行為)に対する療育を行うことにした。

1.目標:唾はき行為の減少

「唾吐き行為を起こす原因を明確にする」

「原因を取り除く計画に基づき、職員の対応方法を統一する」

2.実施方法

@唾吐き行為の記録

A唾吐き行為の原因分析

B計画立案とミーティングの開催(職員間での理解の統一と実施、計画)

C計画の実施(全職員で本児への統一した対応)

D評価・計画の修正

3.結果

 原因分析の結果最も多い原因は「職員の指示から逃れたいため」と「物や活動を獲得したいため」であった。そこで発達検査に基づき本児の理解レベルを検討し、写真カードでのコミュニケーション方法を取り入れた。さらに唾吐きの多い場面をルーチン化し、職員の対応方法を統一したことで、唾吐きの回数は1週間の中で22回から6ヶ月後には2回へと著しい減少をみた。

4.考察

 不適応行動はきちんと原因分析からアプローチすることが大切であり、また相手が理解できるコミュニケーション方法と行動しやすい物理的構造化等分りやすい援助が重要と考えられる。

参考文献:志賀利一著「発達障害児者の問題行動」




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