介助用ロボットアームにおける接触動作の安全性の向上に関する基礎的研究

研究所 障害工学研究部 中井徹志・中山剛

 現在、食事介助ロボットのようなロボットアーム型の介助装置において問題となっているのは、人体への接触状態ならびに接触力のコントロールが難しいことである。その一つの理由として、ロボットが人体とどのような接触状態にあるのか検出できない点があげられる。この場合の接触状態とは、特にロボットアームで保持された物体と人体との接触位置と各々の接触位置における幾何学的な基本接触関係のことを指す。
 そこで、ロボットアームで保持された物体と人体との接触状態を検出するために、センシング方法とそのセンサデータのフィルタリング方法を考案した。センシング方法としては、操作対象物体がロボットアームで保持されていることに着目し、探り動作を行なった。本研究において採用した探り動作は、人間が行なう方法と異なり、探る方向への回転ないしは並進振動を加え、その振動による応答を検出するものである。加振によるセンサシグナルの応答から接触状態変化を検出するために、ロボットに取り付けられた力覚センサの応答信号に対して新たに考案した非線形フィルタリングを適用し、接触状態変化時の特徴を抽出した。
 また、最適な探り動作を示す指標を考案した。まず、接触状態の状態遷移をモデル化し、接触状態を基本接触関係の接触状態記述要素を要素項としてもつ拘束行列で記述した。つぎに、誤差が生じた接触状態遷移の時点でのすべて接触状態に対してそれぞれ対応する接触拘束行列を導き出した。導出した複数の行列に対して、基本的な探り動作である並進方向動作ないしは回転方向動作に対応するベクトルを用いて演算を施す評価関数を適用してもっとも大きな変化が現れる方向を探り動作方向として選択した。
 これらのセンシング手法ならびに動作選択法を用いた探り動作を、環境と対象物体に関しておおよその形状情報がロボットに対して教授されている条件のもとで、実機を用いて検証した。その結果、本法は接触状態を推定するのに有効であることが示された。今後、被験者に対する接触実験を行う予定である。




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