補装具製作部における義肢装具の改良点

研究所 補装具製作部 小池雅俊・岡本晋・高橋功次・山崎伸也・三田友記・佐々木一彦・小川淳夫・松原裕幸

 補装具製作部ではハチームワークの中で患者、障害者の初期評価を行い、それを元に製作方針を決定し、最終的に適合評価を行っている。またこれら臨床業務は、患者・障害者のニード把握及び研究テーマを開拓する為の最も重要な手段である。今回は臨床的要素の強い課題と研究について、ソフトとハードの改良点の視点から報告する。


A. 軟部組織が少ない股離断症例のソケット採型手技 (ソフト面の臨床的課題に対する改良)

 義肢の適合で最も重要なソケットを製作する際に、通常の股関節離断の患者に対しては、台の上で、前後から圧迫を加える加重採型を行っている。しかし坐骨周りに軟部組織が少なく坐骨部に圧が集中する症例には十分な効果が得られない。このような症例に対して採型台を使わずに座骨周囲の形状を採型したうえで、骨盤周囲の採型を行う2段階採型で良好な結果を得た。現在3名の症例に試しており快適にソケットが装着できるようになった。


B. PFFD(大腿骨近位限局性欠損症)用装具の改善(ハード面の臨床的課題に対する改良)

 右股関節臼蓋不全と大腿骨欠損に伴う脚長差と欠損部分の動揺が著しいPFFDの症例に対し装具の改善を行った。生後10ヶ月時点に民間の業者で骨盤帯付長下肢装具を製作していたが、装着と支持性に難があり独歩は困難であった。そこで支持性を高めるため、臀部周囲の軟部組織を覆うソケット形式とし、着脱も容易にした。装着開始から2週間で独歩を可能とした。


C. スキー用足部の試作(ハード面の開発研究に伴う臨床的評価)

 従来から補装具製作部の研究計画の中で障害者のQOL向上を目的にスキー用義足の開発を行っている。レクリエーション用の義足を検討する中で、市販部品による足部構造の試験モデルを製作し臨床的評価を行っている。歩行とスキー操作における足継ぎ手の制御範囲の相違をふまえ、背屈中心の制御を行い良好な操作性を獲得した。


 以上のように臨床業務から生まれてきた課題を発展させ、スキー用義足のような研究テーマを推進している。今後も障害者の社会復帰とQOL向上のため臨床を基にした調査と開発を進める。




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