21理療教育課程における情報教育の導入と今後の展開
 〜中途視覚障害者の高度情報通信ネットワーク社会参加支援への試み〜

理療教育部 太田浩之

初めに

 あはき師学校養成施設認定規則の改訂(12年3月告示、旧文部、厚生省)を受け、13年度、新教育課程移行に伴い理療教育課程に取り入れられた情報教育は、新盲学校等高等部学習指導要領(11年3月告示、旧文部省)にも見られるように、本来は「理療情報(処理)」として医療情報・電子カルテシステム、理療業管理・経営支援システム等の習得が想定されている。しかし、入所者実態や情報社会の進展の度合い等を考慮し、「ワープロ、メール、インターネットの活用」を当面の中心的な指導内容とする、情報基礎を扱う科目「情報概論」が導入された。
 13年度に実践された演習型授業に対する感想、要望等の調査結果等を踏まえ、現状から導き出される問題点、課題を明らかにするとともに今後の方向性を探る。

調査方法

 13年度二部1年生37名を対象として、同年度末最終授業時に調査票を読上げて一斉実施した。自ら記入できない者には、担当者が代筆して対応した。

調査結果と考察

 調査結果からみて、授業水準について当初予測が妥当であったといえる。また、各年代とも現在の情報技術への高い関心があるが、コンピュータの知識や技能に対する著しい較差が既に存在し、これが授業水準への「簡単すぎる」と「難しすぎる」という対照的な不満をもたらしている。「難しさ」を軽減して、今後の発展的展開を図るため、以下の二点が考察される。
 基礎段階からの情報教育を経験していない、現在の生産年齢世代を迎える理療教育課程の本来的な使命はあはき師の養成にあり、単に視覚障害者の「パソコン教室」の場ではない。多くの入所者が希望する習熟度別指導の実現は検討に値しても、根本的な解決を導かないだろう。中途視覚障害者がコンピュータを障害補償機器として、それぞれの日常生活の中に活用させ、職業人として高度情報通信ネットワーク社会を主体的に生きる力を獲得するには、「点字学習」や「歩行訓練」と同次元で「キーボード習得訓練」を理療教育以前に取り入れる必要がある。また、現在のコンピュータOSが提供するGUIが視覚障害者、特に全盲者にとって理解が困難なことはしばしばいわれるが、職員、卒業生の中には活用している例もある。GUIは、視覚障害者の越えることのできない障壁ではなく、全盲者に対する体系的、系統的な指導法の確立が求められている。

将来への視点

 近年の動向も踏まえ、次の三点を特に視野に入れておきたい。
(1) 理療教育の情報化:現在の文部科学行政の重点的施策でもある「教育の情報化」の観点から、すべての教官のICTスキルを向上させ、"わかる授業"、より効果的な授業を展開する。
(2) 部内の事務的業務の情報化:視覚障害者と晴眼者が協働する職場環境の一層の進展を図る。
(3) 臨床実習室業務の情報化:ネットワーク構築、施術録管理・予約管理システム等の開発及びこれらシステムの「情報概論」と連携ある指導体制の実現にある。




前頁へ戻る 目次へ戻る 次頁を読む