理療教育課程入所者の学習手段モデルの作成(第1報)

更生訓練所理療教育部 伊藤 和之・中村 治・乙川 利夫・加藤 麦

 理療教育課程に学ぶ入所者個々に応じた学習手段モデルを提供するための基礎資料として、入所初期の学習手段の現状を把握することを目的に実態調査を行った。調査方法として、2001年度並びに2002年度1年生85名を対象に質問票を配布し、自筆回答を依頼した。両年度とも4月末と、7月半ばの2回実施し、2回目は授業時と自室での学習時(以下、自習時とする)に分けて回答を得た。視力については、左右眼及び両眼の裸眼視力・矯正視力のうち最も良い視力を採用した。
 入所者の平均年齢は40.7±12.6歳で、点字使用者は22名(25.9%)、墨字使用者は63名(74.1%)であった。また、視力0.01〜0.02が点字と墨字(普通文字)の境界視力であった。点字使用者の授業時の筆記具は主に点字盤であり、点字タイプライターの使用は少なく、自習時に併用する傾向が確認された。授業を録音する入所者が多いため、高い金属音を出す筆記具を避けると考えられる。また、点字使用者の63.6%は授業時に筆記具とテープレコーダーを、自習時には72.7%が筆記具・テープレコーダー・デイジー録音図書再生機を組合せていた。授業時は録音をしながら講義を聞き、自習時に学習補助具を用いてまとめる学習スタイルの傾向がうかがえる。
 一方、墨字使用者の筆記具と学習補助具の組合せは多様であった。授業時は筆記具・ルーペ・テープレコーダーの組合せが30.4%、自習時は更に拡大読書器・デイジー録音図書再生機を組合せる方の割合が比較的高いという程度の結果であった。授業時は録音をしながら教科書を眼で追い、ノートをとる傾向がみられたが、自習時の学習手段の特徴を見出すには至らなかった。
 学習補助具のうち顕著な特徴として、4月には未使用であるデイジー録音図書再生機を、7月の自習時には48人(76.2%)が使用していた。再生専用であることが影響していると考えられる。また、録音機器としてMDやICレコーダーも使用されていた。さらに、2002年度調査では電子辞書や携帯電話で漢字を確認する利用法がみられた。注目されているコンピュータの使用は点字使用者で31.8%、墨字使用者で38.1%であり、自習時に用いていた。
 今後は、学習手段の選択や活用の仕方、そして組合せにいかなる要件が関係しているのか、また、成績との関連はあるのかなどの課題について、学年進行とともに経時的な調査を行うこととする。




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