あはき師試験10年の評価と今後の展望

理療教育部 芦野純夫・丹澤章八・尾崎昭弘・杉山誠一・渡辺勇喜三(国家試験評価委員会)

 1.按摩師・鍼灸師の国家試験は、明治以来の営業免許制度が改められ、医師と同じく 法律に基づく国家資格となった昭和22年に逆上ることが出来る。但し、その資格試験の 実施と免許事務は、機関委任業務として国が都道府県知事に行わせてきた。昭和63年、 それが行政改革の流れに沿った形で、関係7団体の拠出により「東洋療法研修試験財団」 が設立され、医療関係では初の民間委託方式による全国統一試験が平成4年から始まり、 今年で10回目を経過したところである。

 2.財団による国家試験の委託実施にあたって、盲学校・視力障害センタ 教員で組織 する日本理療科教員連盟(理教連)は、国試対策部を設けて試験に関する改善、設問自体 の適否について、財団/試験委員会に毎回申し入れを行ってきた。厚生省と同財団におい ても、10回の実施を目処に内容を刷新する必要性から、平成10年に試験委員会とは別 に「国家試験評価委員会」を設け、過去10年の国試問題を総チェックすると共に、今後 方法とのあり方に向けて内容に関する提言を行うこととなった。

 3.上記5名の委員による検討は、第1回〜7回(当時)鍼灸師試験の全問題を、米国 の医学試験で採用されている評価法Taxonomy で洗い出す作業から始まった。その結果、 認知領域のT型(単純想起)が全問題中94.2%を占め、U型(理解・解釈)は5.3%で V型(分析・解決)は僅か0.1%、U・V連結型は0.4%であった。因みに、米国の医師 license 試験はT型20%、U型30%、V型50%が理想とされているが、日本の医師 国家試験(平成9年)ではT型57.8%、U型10.9%、V形31.3%であった。続いて 第7・8回の鍼灸師試験を修正イ ベル法で検討した。これは設問の必要度を必須・重要 ・疑問に、難易度を平易・中等・困難に分け、その縦横相関を見る。その結果、7/8回 での必須問題は60.5/60.2、重要31.3/34.8、疑問8.2/5.0で、難易度は平易 55.7/56.5、中等37.8/39.8、困難6.5/3.7となった。必要難易度指数を算出 すると必要・平易46.3/46.0、必須・中等14.2/14.2と驚く程の一致を示した。

 4.今年の第10回は按摩師試験の存亡が掛かって難易度がアップし、晴眼現役は依然 100%に近いものの、視力障害者は按摩師でも1/3が不合格となる時代に突入した。 当委員会でも改めて按摩師試験の評価を行ったが、それについては『医道の日本』平成15 年3月号に掲載されているのでご覧戴きたい。




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