声帯振動の観察と音声言語障害

病院診療部・耳鼻咽喉科 熊田政信・田内 光・蒔田佐智子

研究の背景

 発声障害やプロソディ障害等の音声言語障害の生理学的研究は、これらの症例の評価法や治療法を見出すためには不可欠である。その様な立場から我々は、高速度撮影システム(下図)による声帯振動の詳細な解析を行ってきた。現在我々は特にプロソディ障害に注目しており、それらを声帯振動という側面から捉える研究を開始したので、ここにその一部を報告する。なお、自由会話において声帯振動の変化は頻繁にみられ、それらはプロソディックな現象(アクセント、リズム、流暢性等)として聴覚的には聴取される。

目的と方法

 プロソディックな現象のモデルとして、持続発声における声区変換に注目し、高速度ディジタル撮影(毎秒4500コマ、256×256 ピクセル)を用いて、声区変換時の声帯振動を解析した。

タスク

 声区変換を含む持続発声。

結果

 声区変換における声帯振動の変化のパターンは大きく分けて2つみられた。 一つのパターンは、声帯振動が非常にスムーズに変化するもの、もう一つは、変化があまりスムーズではなく、付加的な現象を伴うパターンであった。付加的な現象としては、声帯の前後での位相のずれ、声帯の過外転、声帯振動の一時的な静止がみられた。

考察

 音声言語障害の生理学的研究における高速度ディジタル撮影システムの有用性が示された。




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