当センターにおける人工内耳装用者の経過

第二機能回復訓練部 小林美穂・立石恒雄・美留町美希子
耳鼻咽喉科 田内 光・熊田政信・蒔田佐智子
学院 中村公枝

【はじめに】

 当センターでは平成4年から人工内耳(コクレア社製)埋め込み術およびリハビリテーションを行ってきた。ここでは、新しい人工内耳Nucleus24の埋め込み術および音入れを当センターで実施し、術後3か月以上が経過した人工内耳装用者について報告する。

【対象】

 平成12年4月から平成14年8月までにNucleus24の埋め込み術および音入れを実施し、術後3か月〜2年6か月が経過した37例を対象とした。内訳は言語獲得前および獲得期の失聴例が28例(2〜8歳)、言語獲得後・成人の失聴例が9例(9〜74歳)である。平均聴力レベルは94dB〜129dB以上で、ほとんどの症例が100dBを超える最重度難聴である。

【方法】

 術前の補聴器使用時および術後のNucleus24使用時の、矯正聴力、単音節語音聴取能(57S語表)、1/20選択のclosed-setでの単語聴取能(67語表)、open-setでの2音節単語聴取能、3音節単語聴取能および日常生活文聴取能(TY‐89)を測定した。ことばを用いた検査ができない幼児については、他の評価法あるいは行動観察法により評価した。

【結果】

 矯正聴力は、補聴器で平均61dBだったのが人工内耳では平均40dBとなった。成人・言語獲得後失聴例では、単音節聴取能が0〜2%から30〜84%に、2音節単語聴取能が0%から40〜92%になるなど、全ての検査において改善がみられた。先天性の難聴例では、単音節聴取能が10〜16%から50〜66%に、2音節単語聴取能が20〜28%から60〜92%になるなど全ての検査において改善がみられた。また幼少児では、包丁の音・虫の声など様々な種類の音が聞こえるようになった、呼びかけへの反応がよくなった、聴覚だけでわかることばが増えた、発話明瞭度があがったなどの効果が確認された。

【まとめ】

 Nucleus24を装用して3か月以上が経過している37症例すべてにおいて、補聴器では到底期待できない矯正聴力あるいはことばや環境音の聴取の改善がみられた。




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