高次脳機能障害患者の訓練に用いた作業活動の特徴
 −作業療法士が意図した訓練目的・介入方法・作業種目−

病院 第一機能回復訓練部 山本正浩・森田稲子・井上美紀・大塚進・野月夕香理・伊藤伸・深澤佳世

 高次脳機能障害患者に対する個別訓練について作業療法士(OTR)が意図した主たる訓練目的、介入方法、選択した作業種目について調査した。

【調査対象】

 2000年7月から2002年8月までの当院認知リハカンファレンス対象患者50(男性40)名。年齢は32.6±14.5歳。外傷性脳損傷が30名。訓練開始時のKohsIQは85.3±28.5、HDS-Rは23.3±5.9、患側MFSは79.0±22.1であった。

【方法】

 認知リハカンファレンス資料を基に、担当OTRが意図した訓練目的、介入方法(要求内容と援助のタイミング)、選択した作業種目について調査、分析した。

【結果】

 訓練目的を7項目に分類したところ、高頻度のものは「課題遂行力向上」「注意機能向上」「障害の自己認識改善」であった。  課題遂行力向上を目的とした場合は、要求内容は「計画的・効率的に行う」「正確に行う」が多かった。前者では援助のタイミングは結果のフィードバックが多く、木工や調理など工程が複数あり、その都度状況判断と適応行動が求められる作業を用いていた。後者も結果のフィードバックが多く、作業はパソコンや電卓を使用しての事務作業が多かった。
 注意機能向上を目的とした場合は、要求内容は「正確に行う」「一定時間続ける」が多かった。前者では結果のフィードバックが多く、事務作業、スティック細工など細部への注意が結果に影響する作業を用いていた。後者では誤りの無いように随時援助しながら持続時間が延長するように働きかけジグソーパズルやタイルモザイクなど工程の少ない作業を用いていた。
 障害の自己認識の改善を目的とした場合は、要求内容は「正確に行う」が大半で、援助は正誤を確認しての結果のフィードバックが多く、作業は電卓計算をはじめとする事務作業を多く用いていた。また半数が職業を考慮して作業種目を選択していた。

【まとめ】

 今回頻度の高かった3つの訓練目的を達成するために用いた作業種目は、計画性が要求されるもの、遂行時間を調整しやすいもの、結果の適否が客観的に確認できるものなどの特徴があった。また高次脳機能障害に対応するには作業種目の選択と同時に介入方法の工夫が重要であることが示唆された。




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