3階病棟における脳損傷リハビリテーション看護の実際と課題

3階病棟 長島緑・川村のぶ子・金子育世・数野晴美・横田美恵子

はじめに

 3階病棟は平成9年より神経内科単科の病棟になり、脳損傷患者の看護が主である。
今日、脳損傷患者の障害は多様で個別性が大きく、看護のアプローチを模索しながら行っているのが現状である。平成13年度高次脳機能障害支援モデル事業の発足以前より当病棟は、脳損傷患者の看護の確立をめざし取り組んできた。ここでその取り組みと今後の課題について報告する。

T.方法

1.これまでの活動内容の報告、脳損傷リハビリテーションにおける看護の概要を表現する
2.今後の看護プログラムの課題を平成13年から14年に3階病棟に入院した無作為に抽出した
高次脳機能障害のある102名の脳損傷患者に対してプログラム施行前と後を比較することにより検討する。
@ 看護ステージ1〜4対象患者に看護婦が独自介入する項目の食事、排泄、入浴、内服自己管理、一人訓練出棟の5項目に対して自立と非自立の2群に分け、BI、FIM、HDS-R、高次脳機能項目の記憶障害、注意障害、遂行機能障害、半側空間無視、失語、病識欠落、失認、失行、易興奮性の9項目に対し、t検定、χ2乗検定により差があるかみる。
A看護テージ4の対象患者7名に訓練プログラム「モデルスケジュールA」施行前と後に介入した内容の変化について看護記録より抽出し比較する。

U.結果

1.主な活動、脳損傷患者の看護の概要
2.@対象患者102名は、看護ステージ別でみると入院時身体ステージ1,2,3,4が12名,32名,27名,31名であり、退院時身体ステージ1,2,3,4が4名,15名,17名,66名であった。入院時認知ステージ1,2,3,4が13名,29名,22名,38名であり、退院時認知ステージ1,2,3,4が6名,15名,22名,59名であった。入院時BI平均54.36退院時BI74.65、入院時FIM平均72.99、退院時90.58であった。食事自立85.29%、排泄自立70.58%、入浴自立46.07%、訓練出棟49.01%、内服自立25.49%であった。自立と非自立の2群比較では、t検定によりBI、FIM、HDS-Rにおいて有意差を認めた。ADLと高次脳機能項目では、χ2検定により、食事では半側空間無視、排泄では病識欠落、入浴では半側空間無視、失認、内服自己管理では記憶障害、注意障害、遂行機能障害、半側空間無視、病識欠落、訓練出棟では記憶障害、遂行機能障害、病識欠落に有意差を認めた。
A対象患者7名に介入したケア項目は、個別性が大きく、訓練モデルスケジュールA導入前は生活場所の移動、生活の管理に対する補償手段の援助が多く、導入後はケア項目が同じであっても患者が自信を持って行動するための同意や促し、ヒントを与えるなどの内容に変化があった。又、女性特有の健康管理の介入や、外泊指導後、家族の不安の相談が多かった。

V.考察

 今回、調査した内容から方略の検討、患者の認知機能を向上の手助けとして構造化の具体化。看護力の強化として手順の見直し、基準の明文化、院内教育と研修の充実を図る必要がある。




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