高次脳機能障害患者のコミュニケーションの問題に関する意識調査

病院 第二機能回復訓練部 三刀屋由華・餅田亜希子・結城幸枝
学院 言語聴覚学科 阿部晶子

1.目的

 我々は昨年度の業績発表会において、高次脳機能障害に伴って生じる「認知・コミュニケーション障害」の患者を対象とした「コミュニケーショングループ訓練」の内容およびコミュニケーション評価の試みを紹介した。その結果、現在使用している評価方法について、今後臨床的にさらに有用なものにしていくために、評価領域、段階設定、日本語の言語文化的背景における信頼性・妥当性についての検討を行なう必要性が提起された。今回我々は、これらのうちコミュニケーション評価の評価領域を再検討する際の材料とするため、高次脳機能障害患者およびその家族に対してコミュニケーションに関する意識調査を実施し、認知・コミュニケーション障害を有する患者・家族がどのような援助を必要としているのかについて検討したので報告する。

2.方法

 対象:高次脳機能障害患者17名(男性15名、女性2名)および患者家族29名(男性5名、女性24名)。うち、10例は患者・家族の両方に調査を行なっている。意識調査の内容:アンケートにより、コミュニケーションの状態を病前・受傷前との変化を「非常に感じる」「やや感じる」「どちらとも言えない」「変化はない」の4段階の順序尺度で答える質問(患者・家族に共通の20項目と患者のみに対する3項目の質問)と、コミュニケーションの状態について記述する項目(全4問)の2部構成で調査した。

3.結果

 @「病気または事故の前と違いを感じるか」という質問に、「大いに感じる」と答えたのは患者が31%、家族が62%であった。A対象者全員について、コミュニケーションの諸側面に関する質問のうち、「非常に感じる」または「やや感じる」と答えた人が多かった質問は、患者本人では「話を要領よくまとめるのが苦手になった」「話が広がらない、深い話し合いができない」「おしゃべりをすることが楽しくなくなった」であり、家族では「話を要領よくまとめるのが苦手になった」「話が広がらない、深い話し合いができない」「細かい言い回しを気にする」であった。B同一症例について患者と家族両方から解答を得た9例のうち、患者、家族で共通した認識が見られる項目は「よく喋るようになった」、「ユーモアが分からない」であった。患者と家族の認識に食い違いが見られた項目で、「細かい言い回しを気にする」は家族のみ認識している傾向が見られた。

4.考察

 コミュニケーション行動についての患者・家族の認識や、気にしている問題とそうでない問題があることが分かった。現在使用している評価方法と比較すると、評価法には項目があるが認識は低いもの、あるいは患者や家族が気にしていても項目に無いものが確認された。この結果をふまえ、評価法を改変する必要性が示唆された。




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