研究所障害工学研究部 | 外山滋、青木一仁、加藤誠志 |
東洋大学工学部 | 中村正紀、宇佐美論 |
現在、在宅で使用できるセンサの研究としては非侵襲、さらには無拘束計測を目指した
ものが多いが、それだけで身体の情報を正確に得るには限界がある。血液の成分を調べる
ことによって初めて詳しい状況を知ることができるものも多い。そこで、我々は化学成分等
を簡単な操作で測定できる各種センサの開発を目指している。測定対象となるサンプルと
しては血液、尿、唾液、汗などが考えられるが、特に血液の場合、個人レベルで扱える様
にするには、1滴で測定ができるものでなくてはならない。現在、1滴の血液でその性質
あるいは成分を調べるセンサとして血糖値センサが多いに役立っているものの、他の成分
のレパートリーは未だ狭く、これから開拓されるべきものと考えている。一例として、
我々は1滴の血液でその粘度に繋がる情報を知るためのセンサを開発中である。
これは例えば身体の脱水状態について定量的な情報を与えるものとして期待できる。
今回、その開発状況について報告する。
まず、浸透圧の推定方法として種々の方法を検討した結果、現在は血清ならその浸透圧
を容易に推定できる様になっている。また、1滴の血液の成分を測定するためには小型な
センサを作製する必要がある。殆どのセンサは電極を基礎とするものであるため、微小な
電極を一枚の基板上に集積化する必要があった。そして真空蒸着法とフォトリソグラフィ法
を組み合わせることによって、一滴の血液の操作ができる程度に小型な物を作製できる様
になった。
こうした諸技術の開発の結果、現在のところ一滴の血清の浸透圧を推定することが可能
となったため、次の段階として1滴の全血で浸透圧を推定する方法を検討中である。
血液の場合は測定結果がヘマトクリット値に左右されるため、血球の影響を排除する必要
がある。そのため、現在はセンサに組み込むための微小サイズの血球濾過フィルターの
開発を目指している。