理療教育課程入所者の学習手段モデルの作成(第2報)

更生訓練所理療教育部 伊藤和之、乙川利夫、加藤麦、南場榮ニ

1.目 的

 中途視覚障害者の中には、学習手段や学習方法について悩むケースが少なくない。 そこで、本研究においては主に学習手段の現状と問題点を明らかにして、今後の支援の 方向を見出す基礎資料を得ることを目的に調査を継続した。

2.方 法

 【調査1】調査方法:自記式質問紙調査 調査対象:理療教育課程2001年度から2003年度 1年生125名 調査内容: 学習時の(1)文字手段、(2)活用器機等、(3)筆記具・器機等の 使用上の悩みなど 調査期間:各年度4月末と、中間試験終了後の7月中旬(授業時・自習時)
 【調査2】調査方法:半構造化面接 調査対象:調査1の対象者から2名を選出 調査内容: (1)現在の手段に辿り着いた経緯、(2)工夫や悩み、(3)今後の見通しなど 調査時期:2003年9月

3.調査1の結果と考察

 平均年齢は40.9±11.7歳、使用文字は、7月時点で点字29名、墨字(普通の文字)85名、 点字と墨字の両用9名、その他2名である。視力0.01〜0.02で点字と墨字の使用比率が逆転して いる。点字使用者は聞くことに重点を置いている。主な筆記具は点字盤であり、点字タイプ ライターは操作音が高く、授業の録音と競合するため使用率は低い。自習時にはテープ レコーダー(以下、T.Rとする)とデイジー図書再生機の使用が多い。使用文字にばらつきが ある視力0.01〜0.08に属する墨字使用者38名、両用者9名では、サインペンやマジックと ルーペの組合せでノートを作り、T.R.を積極的に用いて学習する傾向がみられる。 今後、「聞く技術」を高める学習方略の獲得が重要となる。拡大読書器は自習時の活用が 目立つ。授業時にも使用できる環境整備が必要である。

4.調査2の結果と考察

 【事例1】A女(61歳) (1)入所時の学習手段:点字と拡大読書器 (2)問題点:点字による 学習が困難 (3)前期試験後の学習手段:墨字とT.R. (4)問題点:聞くだけでは知識が未定着  (5)2年次の学習手段:授業時はT.R.で録音、自習時は、録音テープと点字教科書とマジック を組合せている。
 【事例2】B女(49歳) (1)初めての試験で問題はテープ版、点字解答を選択 (2)問題点: T.R.と点字盤の同時操作に失敗 (3)次の試験時:フットスイッチをT.R.に装着し、全盲だが 罫プレートを用いて墨字解答 (4)結果:操作が安定して実力を出し切れた。
 以上から、入所後早期に適切な支援が必要であることが改めて示唆された。




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