健康増進ひとくちコラム

季節の変わり目と痙縮

2017.10.16

気が付くと夏の暑さはどこへ行ったのか、冷え込む日が増えてきました。こうした気候の変化は手足のこわばりがある人にとっては症状が強く出やすい時期でもあります。「痙縮(けいしゅく)」は痙性(けいせい)症状とも呼ばれ、自分の意に反して手足の筋肉に力が入ってしまう症状で、痛みや疲れを伴うことがあります。脳や脊髄の障害による麻痺にみられることが多く、病気の発生から時間がたつとともに症状が出現する人、軽くなる人さまざまです。痙縮は手足の皮膚への感覚刺激がきっかけで出るものなので、急に寒くなるとそれが刺激になって症状が強く出ることもあります。痙縮によって体が動かしにくくなり、活動量がへったり、転倒の危険が高まることもあります。症状を軽くする飲み薬を処方されることもありますが、一日のはじめに手足のストレッチを行うだけでも体が動かしやすくなります。ストレッチをする際は目的の筋肉が軽く緊張するポジションで、息を止めずに10-15秒保持するのがポイントです。

障害者健康増進・運動医科学支援センター長 緒方 徹

視覚障害者の健康づくり講演会(於:江戸川区)

2017.9.11

今回は江戸川区福祉部障害者福祉課計画係に企画していただき、当事者と介助者の方々を対象に、中高齢以降の健康維持にむけて重要な筋力、持久力、バランス、柔軟性をテーマとした解説と屋内で安全に実施できるストレッチや運動を紹介しました。健康づくりには自分に合った目標を持つことが大事です。例えば肥満を解消したいと考えるなら、一定時間の有酸素運動を実施することになります。その際どの程度の強さの運動をすればよいのかが迷う点です。講演会では参加者に体を動かしてもらいながら自分で心拍数を測定し、ニコニコペースの運動(138-(年齢÷2)まで心拍数が上がる程度の運動)を体感してもらいました。健康づくりには何よりも継続が一番大事です。自分一人で取り組むよりも、知人・家族、ときには介助者とコミュニケーションしながら生活に運動を取り入れていくことができると楽しく実践することができます。

障害者健康増進・運動医科学支援センター長 緒方 徹

ノロウイルスの流行に備えて

2016.1.5

今回はマスコミなどでしばしば話題となるノロウイルスに関してのコラムです。冬季に流行しやすく、嘔吐、下痢、腹痛、微熱などの症状が数日間続き、ひどい場合は点滴での治療が必要なことがあります。残念ながら特効薬は無く、また予防のためのワクチンもありません。上記の症状が起こった場合は医療機関に早期受診し、確定診断を受けてください。ノロウイルスは感染力が非常に強く、吐物や便からの飛沫に10日間以上生存し、また罹患後に回復した人からも2~4週間排出されると言われています。家族内で感染することが多いことも知識として持ち、手洗いを石鹸と流水で30秒間を目標にして丁寧に長くの行う習慣をつけて感染を避けるよう心がけて下さい。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 医長 冨安幸志

血液中の脂(血清脂質)について

2015.10.26

私たちの血液中のコレステロールや中性脂肪は生命維持に必要なステロイドホルモンの原料となり、また全身の細胞の構築にも、エネルギーとしても使われる大切なものです。しかしながら血糖と同じで多すぎても少なすぎても困ります。人間は加齢とともに必ず動脈硬化が進みます。悪玉(LDL)コレステロールが増えすぎると血管の壁にたまり、動脈硬化の進行を速め心臓病や脳卒中になるリスクが上がると報告されています。自身の検査結果でコレステロールや中性脂肪の値をご存じの方も多いことでしょう。主な治療には食事療法、運動療法、薬物療法が行われています。健診などで基準値外の数値が気になる場合は気軽に内科外来受診をしてください。栄養士や運動療法士とともに生活習慣を見直し、必要なケースではお薬を服用して正常値を維持することも有益です。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 医長 冨安幸志


高血圧ガイドライン(血圧のおはなし)

2015.10.5

高血圧がなぜ「良くないか」といいますと腎不全や心不全、脳卒中、心臓血管病の原因の一つとなるからです。血圧を下げることでリスクが抑制されることから日本高血圧学会では140/ 90mgHgを高血圧の基準としています。多くの医師は学会の作成するガイドラインを参考に診療にあたります。最新版(2014年)では家庭血圧を重要視しています。家庭では朝夕それぞれ2回測って、その平均を記録することを推奨しています。緊張せず病院よりもやや低めに出ることから135/ 85mgHgが高血圧の基準となります。特に糖尿病患者さんでは130/ 80mmHgまで下げることが推奨されています。また医師の指示のもと24時間自宅で自動的に計測できる機械(ホルター血圧計)を使ってより繊細に血圧変動を把握することも可能です。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 医長 冨安幸志

糖尿病の食事指導は医師のもとで

2015.6.18

エネルギーの源となる栄養素には炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質の「三大栄養素」が知られています。最近話題の低炭水化物食はそもそも2008年にアメリカ糖尿病学会が「肥満の改善に効果がある」と提唱したことから始まったようです。その後に肥満でない日本人にも高血糖の改善に有効であるというデータが示されました。一方で栄養指導に用いる「糖尿病食事療法のための食品交換表」が11年6か月ぶりに改訂され(第7版)、配分例として炭水化物60%、55%、50%の3つが用意されました。注意すべきは自己流での偏食には危険が伴うことです。特に妊婦さん、小児、腎臓疾患の方には安全性の考慮された、食事指導を医師から受けるようにしていただきたいものです。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 医長 冨安幸志