国リハニュース

第374号(令和6年春号)トピックス

言語聴覚士研修会が盛況

学院 言語聴覚学科 教官 坂田 善政 

 去る3月11日、12日、22日の3日間にかけて、学院で実施している現任者研修の1つである言語聴覚士研修会「吃音の臨床【基礎編】」(オンライン)が開催されました。定員200名のところ331名の申込みがあり、抽選で選ばれた200名の言語聴覚士が、18時間にわたる講義・演習にオンラインの特性を生かして全国各地(例:北海道8名、沖縄6名)から参加し、好評を博しました。

  昨年度実施した言語聴覚士研修会「幼児吃音の臨床【実践編】」(定員20名)は、症例検討を中心とした実践的内容でしたが、(1)この研修会に166名の申込みがあったこと、(2)幅広い年齢層の吃音に対応する系統的な講義を望む声があったこと、の2点を受け、今年度の研修会は定員の枠を広げ、かつ吃音に関する基礎知識を系統的に講義するものとしました。

  吃音について当センターでは、第2期中期目標においてその評価法・支援法に関する研究の推進を、第3期中期目標においてそのリハビリテーションの充実をかかげ、取り組んできたところであり、森浩一前総長が研究代表を務められた研究課題「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」(日本医療研究開発機構(AMED)助成)等では、外部機関の共同研究者各位の多大なるご協力のもと、病院第三診療部・児童精神科の金樹英医長、研究所感覚機能系障害研究部・聴覚言語機能障害研究室の酒井奈緒美室長、病院リハビリテーション部の北條具仁副言語聴覚士長、角田航平言語聴覚士、学院の坂田が部門を越え連携して取り組み、その成果は「幼児吃音臨床ガイドライン」や様々な学術論文、学会発表として公表されてきました。また当センター病院リハビリテーション部には、先進的な吃音のリハビリテーションに関する研修の機会を求め、九州や関西など各地から、現任の言語聴覚士が見学に訪れている現状があります。

  今回の研修会は、全講義の講師を当センター職員(酒井室長、北條副言語聴覚士長、角田言語聴覚士、坂田)が務め、当センターで行われている研究、診療、専門職養成での知見や、当センター学院が持つ研修機能を活かし、当該領域に携わる専門職の知識・技能の向上に貢献した、当センターにおける部門間連携の好事例と考えております。

  残念ながら抽選に漏れ、今回の研修会を受講できなかった言語聴覚士からは、次年度に同内容での研修会開催を熱望する声も聞かれています。今後は、より多くの言語聴覚士が、吃音についての系統的な研修の機会を得られるよう、講義内容をオンデマンド化するといった工夫についても検討し、当センターの先進的な知見を当該領域の更なる発展につなげていけるよう努めてまいります。