[更生訓練情報]
第22回理療教育課程入所式
    〜心新たに再出発の春の日〜
理療教育部 教官 楠田房雄



佐藤更生訓練所長祝辞
佐藤更生訓練所長祝辞

 本年度は一部課程7名、二部課程42名、計49名 が新たに入所されました。入所式は去る4月17日午前 10時より当センター講堂にて行われました。当日は優 しい春の日差しが降り注ぎ、おりしも歴代の理療教育課 程卒業生・修了生から植樹贈呈されたアメリカハナミズ キが満開となり、これから始まる日々への不安な心を一 時癒してくれているかのようでした。
 入所式での祝辞や決意の言葉を紹介し、報告に代えま す。
 佐藤更生訓練所長は、ご自身の二つの思い出を例にあ げて、励ましとお祝いの言葉を述べられました。
 『センターの短歌クラブの作品集の「いぶき」のなか の、「臨床のあん摩を終えて疲れたる我が親指をなでて みる」という卒業生の作と思われる1首が印象に残って います。痛む親指を労るとともに、無事に実習を終えた という充実感が読み込まれているように思われます。か つてセンターの外来に通院して来たある卒業生の、臨床 のなかで鍛えあげられた太い腕が思い出されます。訓練 を通じて、痛みも克服されることでしょう。こうした充 実感を積み重ねて、どうか皆様もこのようなプロの道を 進んでいただきたい。
 もう一つは学生の頃、初めての臨床の講義のときに、 教授が言われた言葉であります。「諸君は仲間のぎこち なさや教授のおもしろい比喩に思わず笑ってしまうこと があるかもしれません。これから接するたくさんの患者 のなかには、こうした状況を把握できない患者もおられ るので、患者のいる所では決して笑わないで下さい。」 患者への思いやりや畏敬の念を表現された言葉です。
 また、今後保健・医療の現場に携わる皆様に、心構え としてこれから学ぶ技術への畏敬の念を是非培っていっ ていただきたい。やりがいのある尊い治療技術であり、 初心を忘れず励んでいただきたい。』
在所生代表池田さんの歓迎の言葉
在所生代表池田さんの歓迎の言葉
 在所生を代表して二部2年の池田定道さんが歓迎の言 葉を述べられました。
 『今はこれからの訓練への楽しみと不安で胸が一杯で あろうと思いますが、早く環境に慣れて、本分である学 習のスタイルを確立して下さい。
 私たちは不幸にして人生半ばで障害をもち、不本意な がら人生の進路変更を余儀なくされました。皆様もどう して自分だけがと思い悩み、周囲に当たり散らしたこと があるかもしれません。
 訓練が始まるとかつての学生時代と比べてすっかり衰 えた記憶力、自在に読みこなせたはずの教科書にも四苦 八苦するなど、やり場のない挫折感のなかで自暴自棄に 陥ることがあるかもしれません。
 しかし、私たちを支援してくださる多くのスタッフが います。そして1日も早い自立を待ち望む家族がいます 。また、一足早く卒業し一線で奮闘されている多くの先 輩たちがいます。
 「鍼って効くの」、「あん摩は免許がいるの」など、 「あ・は・き」に対する世間の認識は、決して充分とは いえません。入所するまで私自身もそう考えていました 。しかし健常者を対象とした学校の新増設が相次いでい ますが、これは一方で「あん摩・はり・きゅう」が伸び ゆくこれからの職業であると考えている人たちが増加し つつあるということではないでしょうか。
 センターでの訓練のなかで正しい知識と技術を身につ け、施術を通じて患者に感謝され、「あん摩・はり・き ゅう」はすばらしい技術であるという認識が広がるよう 、ともにがんばりましょう。』
 最後に新入所生49名を代表し、当センター生活訓練 科出身の清水泰代さんが決意を述べられました。
 『それぞれ異なる環境のなかで視覚障害という同じ悩 みを抱え、将来への不安を抱いていたことだろうと思い ます。私自身も進行性の眼疾患をもち、パソコンと拡大 読書機を使用して一般企業で働いていました。視力の低 下が進むなかで仕事が継続できるのかと悩み、友人のす すめもあって、退社しこの道に進むことを決断しました 。以前から人と接する仕事には興味があったので、それ がきっかけにもなりました。
 慣れない環境のなかでの初めての分野の学習、そして 目のことと、心配事はつきません。けれども3年、5年 後の社会復帰に向かって、助け合いながら同じ道を歩ん でいきたいと願っています。』
 新入生の不安や期待・決意を目の当たりにして、セン ターで始まる再出発への第1歩をともに歩む担任として 、改めて身の引き締まる思いで講堂を後にしました。