更生訓練情報
ゆとりと自主性の行事実践を目指して 聴覚障害野外訓練を実施して
指導部 指導課 生活指導専門職 森本行雄


 今年度の野外訓練のキーワードは「ゆとり」そして 、「自主性」・・・。平成13年度の聴覚障害入所 者の野外訓練は7月17日(火)から19日(木) の2泊3日、埼玉県秩父市にある彩の国グリーンビ レッジ(埼玉県青少年野外活動センター)で実施い たしました。
 今回は入所者37名と職員24名に加え、新たに学 院生(手話通訳学科)12名の総勢73名の参加とな りました。学院生が参加するのは今回が初めてではな く、手話通訳学科が開設された平成2年から3カ年間 野外訓練に参加していただいたことがあります。学院 生の参加については、更生訓練所からは入所者とのコ ミュニケーション面での様々な援助が期待できること、 さらに学院からは手話通訳学科の学生のリハビリテー ションに関する専門技術者になるための、貴重な技術 体験をできる場でもあるということから、準備の段階 から積極的に参画してもらいました。JICAを通じ て当センターで研修中のロドリゴ氏(チリ国立リハセ ンター)も通訳者と共に全日程に参加されました。
恵まれた自然環境の中で
 野外訓練初日の朝は快晴の中、バス2台でセンター を出発。西武池袋線芦ヶ久保駅からグリーンビレッジ までは、徒歩で約7キロの山道を登る予定でしたが、 今年は半分程登ったところで激しい雷雨に見舞われハ イキングを途中で中止し、再びバスでキャンプ場へ移 動するというハプニングがありました。
 キャンプ場のグリーンビレッジは、周辺を県立の4 つの自然公園に囲まれた緑豊かな森の中にあります。 総面積70万uの敷地(国リハ22万u)にクヌギ、 ナラ、クリ等を中心とした雑木林で覆われています。 全国的にも珍しいヤエガワカンバの分布も見られ、自 然環境に恵まれたキャンプ場です。一方で、キャンプ 場内の高低差も大きく移動には大変苦労する場所でも あります。
自主性をめざして
 この野外訓練の一番の目的は、「より多くの自然と 接する機会を通じて、入所者自らが企画し、実施する 行事に対しお互いが協力しあい自主的に取り組むことに より、社会性の向上を図ること。」をねらいとしてい ます。入所者で組織する実行委員会を中心として、企 画の段階から実施まで、入所者の主体性に重点をおい た指導援助をこころがけました。
ゆとりのプログラムに
 今年度は全体に「ゆとり」を持ったプログラムを構 成しました。例年では初日の夕食後にレクリエーショ ンとして「きもだめし」を行っていましたが、慌た だしい日程となったため、「もう少しゆっくり過ごし たかった。」との前年の反省もあり、実行委員会で検 討した結果、今年度は改善いたしました。時間にしば られず、焼き肉に舌鼓を打ちながら、交流を深めるこ とが出来ました。
 また、2日目午前中のレクリエーションについては 、レク係が中心となり様々な検討をした結果、「雨天 時でも実施可能で、参加者全員がゆったりと交流でき る内容」という視点から、野外訓練場内にある体育館 を使用してドッジボール競技を行いました。「血液型 別」「出身地別」等のグループに分け、入所者、学 院生、職員ともに年齢、男女を問わず全員が楽しめる 競技をとり入れました。また、午後の自由時間にはマ ウンテンバイクやフライングディスクゴルフ、卓球な どを行い、思い思いに過ごしました。
 プログラムの中で、最も注目を集め、盛り上がりま したのはキャンプファイアです。キャンプファイア係 の合図で、ひげをはやした美女達(?)2名によりフ ャイアに火が点り、開始となりました。
 恒例になっているスタンツの発表は、キャンプファ イアのメインイベントとしてコンクール形式で行うもの です。今年度は、入所者で構成する4つの班それぞれ に「ダンス」「寸劇」「ゲーム」等の趣向を凝らし た出し物を発表しました。村長(指導部長)をはじ め、職員、学院生が審査を担当し、その結果、今年 度は優れたダンスパフォーマンスで会場を沸かせたA 班が最優秀賞となりました。
 野外訓練は、春の体育祭、秋のリハ並木祭と並ぶ重 要な行事の一つです。そして、入所者の心にいつまで も残る貴重な体験となる機会でもあります。企画から 実施までの過程では、真剣に取り組んでいるからこそ 生まれる「意見の相違による激論」や「様々な衝突 」が起こることも珍しくはありません。このような経 験を踏まえ、人間としてさらに大きく成長できる絶好 の機会でもあると思っています。
 アンケート調査にも沢山の入所者から、野外訓練を 「忘れられない良い思い出となりました。」と記され てありました。
 今年度の野外訓練では、体調不良のためセンター病 院へ緊急入院となった方が1名いましたが、医療スタ ッフ等の敏速な対応により、大過なく適切に対処する ことができました。その他、センター各部署の多くの 方々にご支援、ご協力いただきましたことを、心より 御礼申し上げたいと思います。
 参加していただいた職員、学院生の皆さんからお寄 せいただいた貴重なご意見、ご感想を、今後生かして いきたいと思います。

キャンプファイアがメインイベント 村長を中心に全員集合
キャンプファイアがメインイベント 村長を中心に全員集合
炊事準備は炊事班を中心に全員参加で
炊事準備は炊事班を中心に全員参加で
食事はキャンプの最大の楽しみ?(右から2人目がロドリゴ)
食事はキャンプの最大の楽しみ?(右から2人目がロドリゴ)