学院情報
学院視覚障害学科紹介
身体障害者生活訓練等事業(平成13年4月試行)
の担い手としてご活用ください!
学 院


 本学科は平成2年に、視覚障害生活訓練専門職員養成 課程として1年課程として発足しました。視覚障害生活 訓練とは視覚障害リハビリテーションの社会適応を担う サービスで、視覚障害者の日常生活におけるQOL向上 には不可欠のものです。平成11年4月には名称を視覚 障害学科に変更し2年課程になりました。視覚障害原因 は多岐にわたり、重複障害を持つ人、加齢に伴い視覚障 害を持つ人たちもリハビリテーションの対象になります 。それらの視覚に障害をもつすべての人々をサービス対 象とするため、関連分野の科目が加わりました。

視覚に障害をもつ人の数は?
 平成8年に実施された全国身体障害者実態調査によれ ば、身体障害者手帳を取得している視覚障害者数は30 .5万人といわれています。その一方で、日本眼科医会 の推計によると、ロービジョン(弱視)ケアを要する人 口は約100万人といわれています。この数値を裏付け るようにChiang、Bassi、Javittらによれば、1990 年の米国における法定視覚障害者数は110万人である のに対し、Nelson、Dimitrovaによれば視力を矯正して も新聞が読めない程度のロービジョン者は約430万人 と推定されています。米国は近年の高齢化に伴い視覚障 害者の数が増加し、全視覚障害者のうち65歳以上の高 齢者が約68%を占めています。この事実により二つの ことが示唆されます。一つは同じ高齢化をたどる日本も 視覚障害者の数が増えていくことと、もう一つは日本眼 科医会の発表の通り、ケアを必要とする視覚に障害を持 つ人は、身体障害者手帳を持った視覚障害者の数倍存在 する可能性があることです。

新聞が読めない程度の不便さとは?
 加齢性の視覚障害により新聞の文字が読めなくなって いる人は、単純に視力が低下しただけではなく、低コン トラストのものが見えにくくなっていたり、羞明と呼ば れるひどいまぶしさを感じる状態になることがあります 。このような状態になると、ちょっとした段差が発見で きなくて足を踏み外したり躓いたりして転倒、骨折とい う事故が発生しやすくなります。テーブルの上の食器が 見えにくかったり、建物の入り口がわからなかったり、 とにかくコントラストの低いものはすべて見えにくくな ります。また、羞明があると天気の良い日は眩しいばか りではなく、暗い夜道で明るすぎる街灯があってもまぶ しくて見えないことがあります。これらの人々が安心し て外出したり、家事をしたり、新聞を読むなどするため には視覚障害リハビリテーションサービスの提供が必要 です。

視覚障害学科のカリキュラム
 視覚障害生活訓練専門職は専門的な技術指導を行いま すが、技術論のみではなく豊富な周辺関連領域の理論を 学びます。まず「人」のメカニズムを理解するために眼 の解剖・生理学、運動学、眼科学、老年病医学、発達心 理学、知覚心理学、感覚生理学、感覚情報処理理論(視 覚・触覚・聴覚)などについて学びます。次に、人間を より深く理解するために学習心理学、臨床心理学、老年 心理学、視覚障害者の心理、盲老人、重複障害などにつ いて学びます。対人援助サービスを行う基礎として社会 福祉援助技術論、カウンセリングなどについて学びます 。また、各リハビリテーション専門技術や知見の発展の ために視覚障害リハビリテーション統計法、研究法を学 んだ上で卒業研究に取り組みます。専門臨床科目の内容 については以下にまとめます。

歩行技術の理論と教授法
 視覚障害者が安全かつ効率的に歩くためにはオリエン テーション(方向定位)の技能が不可欠となります。つ まり、自分は今どこにいるのか?どちらを向いているの か?目的地はどこにあるのか?という問いがすべて解決 できなければ意図した移動はできません。このオリエン テーションの原理、活用法、指導法およびモビリティ( 移動)の技術、理論、指導法を講義、実技、実習を通じ て獲得します。

コミュニケーション技能の理論と教授法・視覚障害者の パソコン活用法
 視覚障害者が使用するコミュニケーション手段は点字 、ハンドライティング、ワープロ、パソコンなどがあり ます。点字ではパソコンによる教材の作成法も含みます 。ハンドライティングでは視覚が使えなくても文字の記 入を可能にする「罫プレート」と呼ばれる補助具の作成 法も獲得します。ワープロは音声出力、拡大画面、高コ ントラスト画面による活用法、指導法を獲得します。音 声が活用できない盲ろう者には触覚で情報を確認できる ピンディスプレイを活用した指導法を獲得します。パソ コンではワープロ以外のアプリケーション活用、インタ ーネット、Eメールの活用方法および指導法を獲得しま す。

日常生活技術の理論と教授法
 個人にとってもっとも身近な問題である身辺処理課題 、単身生活者や主婦に必要となる掃除、洗濯、調理など の家事課題など、安全で確実な技術理論と指導法を獲得 します。全盲者は視覚以外の感覚を最大限に活用する方 法、ロービジョン者はコントラストと視覚運動技能を活 用する指導法を獲得します。

ロービジョンの理論と教授法
 視覚障害者の中の多数を占めるロービジョン者にニー ズに応じたサービスが提供できるように、ロービジョン の特性を理解するとともに、その評価法、困難課題を解 決するための原理について学びます。さらに補助具の選 定に不可欠な屈折理論、拡大の原理、レンズ光学、補助 具理論と活用法、訓練理論と教授法などを獲得します。

レクリエーション訓練の理論と教授法
 視覚障害者の余暇活動について、スポーツ的なレクリ エーションと文化活動的なレクリエーションに分け理論 と指導法を獲得します。

盲ろう者(児)を対象としたリハビリテーション技能
 日本では遅れをとっている盲ろう者(児)に対するリ ハビリテーションを提供できる専門職の養成を目的とし ます。特に直接訓練を提供できる人材育成のために、盲 ろうコミュニケーション技能獲得に重点を置いています 。これにより手話の基礎が獲得でき、聴覚障害者とのコ ミュニケーションも可能になります。

 以上主だった視覚障害学科の特色をご紹介いたしまし た。本学科は視覚障害リハビリテーションを提供するた めの専門技術を獲得する場ではありますが、リハビリテ ーションは対人福祉サービスであるとも言えます。視覚 障害者のみならず高齢者、運動機能障害者、聴覚障害者 、知的障害者なども対象とし、かつ、各個人に質の高い 快適なサービスを提供するための、対人技能をベースと した福祉援助技術法にも重点を置いています。援助を必 要とする人が、目標を達成するために必要とするすべて のサービスが受けられるように、キーパーソンとして機 能できる人材の育成を目指しています。今年は12名の 学生が卒業します。仕事がございましたらぜひご採用を ご検討下さい。