[病院情報]
第一機能回復訓練部 運動療法部門(体育)紹介
病院 第一機能回復訓練部 運動療法士長 北村昭子



 運動療法部門業務のこれまでの呼称は、理学療法 部門の運動療法との違いを明かにするために、「ス ポーツ」「リハスポーツ」「リハ体育」などと呼ばれ てきましたが、平成13年12月5日より、関連するセ ンター内の業務に対し「体育」と称することになり ました。
 一般的な体育の意義は歴史的に変化してきまし た。<身体による教育><身体運動を媒介とした人 間形成>と理解されますが、今日では、<教育とし ての体育>に限定することのできない活動や機能が 包括されるようになり、<運動の教育education in  movement or sport>ととらえられる傾向にあり ます。
 体育は元来、教育の一領域をさす名称でありまし たが、その機能は学校に限定されるものではなく、 人間の生涯に亘って活用しようとする意図と健康ブ ームが相まって、地域社会、職場、家庭などの中に 実現され、対象者は障害をもった人々や高齢者を含 む幼児から大人までと、その領域は広がっています。
 運動療法部門では、体育学をベースに、各種のト レーニング法やスポーツ、レクリェーション種目を 手段として、次にあげる「フィットネスレベルの維 持・強化」「移動能力の安定・向上」「規則の遵守・ 基本的マナー・協調の心・自主独立の精神などの社 会的適応能力の回復」「運動習慣の獲得」「QOL拡 大・定着に結びつく生涯スポーツの導入」を目的の 5本の柱として、健康、体力、楽しみ、交わる、支 え合う、挑む、競う、観るなどの多面に及ぶ要素と 運動やスポーツが持つ特性を用いて実施課題を決定 し、患者さんや入所者の問題点にアプローチするこ とにより、活動的で生き生きした生活を送るために 必要な健康作りのお手伝いをしています。
 運動療法士の業務範囲は、病院の運動療法部門と 学院のリハビリテーション体育学科の2つの部門が あります。運動療法士と教官の併任辞令で3名の専 従と1名の非常勤職員の構成をもって14年2月末ま で対応していました。多少の変動は有りますが、40 名の病院入院患者さんに対しては主治医の「指示」 をもって、また50名の更生訓練所職能部所属入所者 に対しては、担当医による「体育の意見」をもとに 体育を実施しています。そして2学年に在籍してい る学生の学院授業に関する業務や、その他、更生訓 練所入所者の運動系クラブ活動の指導、職業リハビ リテーションセンターの入所者体育授業、及び学院 義肢装具学科の体育授業にも係わっています。
 運動療法士が国の施設に配置された歴史は、昭和 24年と古くから存在するものの、理学療法士や作業 療法士、言語療法士のような国家資格は今だ有りま せん。理学療法が主として行う「基本的な動作能力 の回復」等の従来の療法を受け、それを補足・強化 し、健康作りやQOL向上へ繋がる「活動能力の回 復」にまで高めることを指導目的にやってきた運動 療法がこれまで果たしてきた役割は、改訂されたW HOの「生活機能と障害の国際分類」の概念にマッ チするものであり、多様化・重度化・重複化・高齢 化する障害をもった人々への健康対策と、高齢化社 会や医療費が深刻な問題となっている実状に、「健 康な障害者をつくる」という合い言葉で応えられる 専門職であると自負しております。病院や施設は無 論のこと地域社会においても、医学の知識を備えた 体育専門職である運動療法士配置の法的な整備が、 一日でも早く確立できるよう努力していきたいと、 学院リハビリテーション体育学科卒業生を含め、皆 で頑張っているところであります。



運動療法部門(体育)のみなさん