本年4月1日をもって、中村隆一前総長の後任として国立身体障害者リハビリテーションセンター総長に就任いたしましたご挨拶を申しあげます。
　本センターは、国立東京視力障害センター、国立身体障害センター、国立聴力言語障害センターの在京３施設を統合して1979年に発足致して以来23年になります。しかし、前身の３施設はそれぞれ1948年、1949年および1958年に発足していることから、本センターは約50年来の経験を基に活動を展開しておることになります。３施設統合時の本センターは、更生訓練所のほかに、50床の病院（1980開設時）、１部門の研究所、１学科の学院により構成されておりました。その後、病院病床数は1981年には100、1992年に150、1995年には200となり、研究所は1986年までに６部門、学院は1991年までに５学科へと拡大し、現在の体制となっております。また、更生訓練所は発足当初より、国立職業リハビリテーションセンターとの連携のもとに活動しておりますが、この体制は他に類を見ないもので、センター特に更生訓練所の活動レベルを高めております。現在の深刻な経済不況の時代にあっても約80％の一般就労としての就職率を確保できていることもそれを示すものです。
　この間にバブルの崩壊と経済成長の鈍化、急速な高齢化、経済をはじめとするグローバル化、技術革新、とりわけ医療技術や情報技術の急速な進歩などがございました。また、障害者の増加、障害の重複・重度化に加えて社会保障制度では、1982年の老人保健法施行や1990年の福祉八法の改正、1995年の障害者プランの策定、さらに2000年からの社会福祉基礎構造改革等が進められております。このような、本センターを取り巻く環境が激しく変化する時代に、関係者の努力によって、本センターは創生から1979年の統合、1995年までの総合化・拡大期を経て、輝かしい業績と伝統をうちたてて参っております。
　しかし、すでにスタートした21世紀の本センターの発展をより確かなものとするためには、今の時点でこれまでのセンター発展の軌跡と社会保障制度等の変遷とを対比しながら、改めて我々の足元を見つめ直すことも必要であると考えております。更生訓練所にあっては、重複・重度化するケースへの処遇の充実や新しい利用契約制度での支援の拡大と全国の援護施設との連携の強化、病院にあっては、病院としての基本的機能を確保しながら，リハビリテーション病院としての特殊性の発展、研究所にあっては障害者の社会参加促進に直結する情報・技術の発信における全国の中枢機能としての活動強化、学院にあっては各部門の専門職の協力による高い臨床力のある専門職の育成や関連職員の研修の充実等は主な課題であり目標でもあります。さらに、国際協力も益々重要な活動となっております。
　これらの課題に対して、研究マインドを持つ人材を広く求め、活動の効率化や費用対効果を視野に入れて、障害者の視点に立った運営を心がけたいと考えております。
　初代総長の若松栄一先生がセンター運営に対する基本方針として示された「信頼と協調」は、本センターがナショナルセンターとして、この大きく変革する時代の要請に応えるためには、一層重要となっております。各専門領域、各部署をはじめ関係各位に「信頼と協調」のもとご協力いただくことをお願い致しますとともに、３センター統合までの長い準備期間とその後のセンターの発展にご尽力された先人のご苦労を忘れることなく、微力ながらその任を果たしたいものと考えております。