[学院情報]
平成14年度学院入学式
学院



 去る4月4日(木)の10時から、当センター学院講堂において、新入生72名を迎え、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 佐藤孝一国立施設管理室長のご臨席のもと、平成14年度入学式を開催しました。
 この式典では、開会の冒頭、当センターの長岡学院長から次のとおり式辞がありました。



学院長式辞
 『入学おめでとうございます。

 皆様は、本日入学されこの学院での勉強、生活に期待や不安をお持ちでこの席についていらっしゃることと存じます。私もこの4月から学院長を拝命したばかりですが、私の経験を2つ程お話しします。これが多少なりとも皆様の勉学の参考になれば幸いと思います。

 私は、当センターの病院で神経学を担当しています。
 私の学んだ神経学では、例えば、ハンマーを持って患者さんの反射を調べて、診断を行なうという診察法があります。この教育の過程は本で読んだり聞いたりしただけではなかなか解りにくく、実際を見ながら説明されて始めて理解できるものです。私の先生によりますと、臨床医学は、伝授と伝受のくり返しと言っておられます。たくさんの情報を先輩から後輩が受け取り(伝受)、後輩はこれに何かを加えてさらに次の後輩に引き渡す(伝授)ということです。皆様が当学院で身に付けるものもこの伝授と伝受によって受け継がれるものに他なりません。学院は、更生訓練所、病院、研究所と一体となったセンターのひとつです。学院の教官、センター内の先輩を通じて本物の知識・技術を伝受されるよう期待いたします。
 次に、皆様が習得された技術を社会で役立てようとする場合、医療、福祉、その他の関連する職種やボランティアの方々との連携がすぐに必要になります。チームアプローチが大切と言われています。本学院は言語聴覚学科、義肢装具学科、視覚障害学科、手話通訳学科、リハビリテーション体育学科の5学科で構成されています。このように恵まれた環境で、各学科間・センター内各部門の交流を通じて障害者の問題について広い視点をもっていただきたいとおもいます。
 われわれを取り巻く医療福祉の環境は大きな変化をしています。きちんとした知識技術を獲得し、広い視野をもった専門家として卒業されることが、このような難しい時代にあっても専門職として活躍して頂くのに最も基本的で重要なことと信じています。

 最後に、この緑の豊な環境で充分に学院生活を楽しまれることを期待して式辞といたします。』



 続いて、当センターの佐藤総長より次のとおり祝辞が述べられました。



 『今年は、足早にやってきた新緑の季節に、国立身体障害者リハビリテーションセンターの平成14年度の入学式を行うにあたり、祝辞を申しあげます。
 皆さん、このたびの入学おめでとうございます。本日は、年度始めのお忙しい中、厚生労働省から佐藤国立施設管理室長もわざわざ皆さんの入学のお祝いに駆けつけて下さっております。
 この式典を持って皆さんの本学院での生活がスタートするわけですが、皆さんがこれから学ぶ社会福祉の領域は大変尊く、遣り甲斐のあるものです。病気や障害をもつ方々は、まず、その状態を受容することが必要です。それとともに、障害を乗り越えるための新しい手法を獲得するわけですので、単に手法を教える、あるいは装具等を作って差し上げれば良いと言うものではありません。患者さんあるいは障害を持たれる方々との共同作業となるわけで、その過程を通して、皆さんは大きな達成感を覚えることができるはずです。
 この社会福祉の領域では特にチームアプローチが重視されます。それは、それぞれの専門職がそれぞれの専門的技能を発揮することによって成し遂げられるものです。また、チーム内ではそれぞれの専門的活動が調和することが必須でもあります。すなわち、皆さんには、自分の専門領域の基本的知識と技能を十分にマスターすることが基本ですが、さらに他領域についても理解できることが求められます。
 本センターの学院は、幸いにも五学科から構成されておりますので、皆さんは他領域のことも見聞することが出来る訳です。また、本センターは、学院の他に、更生訓練所、病院、研究所をもつ総合センターですのであり、皆さんは、各専門領域がどのように協調して活動しているかを実際に見聞きできる恵まれた条件にあります。充実した実習の機会が用意されております。本学院の教育の目標は、優れた臨床能力を身に付けた人材の育成であり、このように、その教育環境が整備されていると考えております。
 最後に、皆さんにお願いがあります。それは、我々とともにこの領域の開拓者になっていただくことです。本センターは、社会福祉領域のナショナルセンターであります。本学院では、わが国に必要な専門職の教育を最初に始めるところでもあります。日頃のセンター活動の中から、その教育すべき内容と手法を編み出し、新しい教育を生み育てるところです。ある分野においては、それが国家試験資格を得ることの出来るレベルに達しておりますが、まだ完成途上の過程もあります。皆さんには、このことを十分に認識されて、それぞれの領域発展のための一端を担っていただくとともに各領域のリーダーになるよう自らも大いに研鑚されることを期待しております。
 現在、経済分野のグローバル化が急速に進み、この1日からは、ペイオフ制度もスタートしたところですが、医療・福祉の分野にもグローバル化の波が及んできております。我々は、皆さんがグローバルにも活躍できる人材となられることも、期待していることを申しあげ、私の祝辞と致します。』



新入生の皆さま



 引き続き、新入生紹介のあと、手話通訳学科2年遠藤栄太(音声)・伏原桃子(手話)が、次のとおり歓迎のことばを述べました。



歓迎の言葉
 『新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生一同、心より歓迎致します。

 皆さんが今日というこの日に至るまでの道のりは、それこそ十人十色かと思います。そのような個性的な人々が、今ここに、障害を持つ方のリハビリテーションについて学ぶという共通の目的で集まりました。このことは思いのほか、大変大切なことだと思います。共に学ぶ仲間たちとの交流を通じて、自分とは違うものの見方を知り、自分の幅を広げることができるからです。このことは、将来専門家として活躍していく上できっと役立つことでしょう。また、学院生活には、交流の機会がたくさんあります。例えば、春の球技大会や秋の交流会といった行事はもちろん、センター全体の行事として、6月の体育祭、10月の並木祭があります。またクラブ活動などを通じて、他の学科の仲間や先生方、センターの職員や入所生のみなさんなどとも接することができます。それらの出会いはきっと皆さんにとってかけがえのないものとなるでしょう。

 また、この学院では、専門分野に応じた臨床の場を経験することができます。私は新年度から手話通訳の現場に向かうことになりますが、この1年間に学んだことを生かせる機会に喜びながらも、果たして本当に耳の聞こえない方々と、そうでない方々との橋渡しをするだけの技術と知識を身につけているかどうか、不安がないといえば嘘になるでしょう。しかし、今新入生の皆さんを目の前にして、自分の1年前の初々しい情熱を思い返し、実習に臨むことができそうです。皆さんも、それぞれ一人一人の夢を心に抱いて、今ここにいらっしゃると思います。どうかその夢を大切にして、学院生活を、人生の宝にしてください。

 様々な人生を経て、リハビリテーションへの思いを胸に抱いた皆さんが、この学院に集まった今日という日を大切にして、お互いに高め合い、身体障害者リハビリテーションの分野の力になれるよう、さあ始めましょう。』



 最後に、来賓及び幹部職員紹介、並びに祝電披露を行って終了しました。
 以下、各学科の新入生の寸描など紹介します。






言語聴覚学科

 ST学科24期生は、2年制の11期生になります。平均年齢24.8歳。最近では珍しく30名中男性が6名おり、2年の男性陣からうらやましがられています。職歴のある学生が20名もおり、経歴も様々なら個性も様々。どんなクラスになるのか今から楽しみです。早くもレポート課題に遅くまで取り組む様子がみられ、講義でも活発な意見交換がなされています。新入生の新鮮な心意気に触発され、在校生も教官も気持ちを新たにしているところです。



義肢装具学科

 義肢装具学科はこの春に設立20周年を迎え、21期生が入学しました。男性6名、女性3名で関東圏の出身者が5名と多く、その他は関西、中国、四国となっています。合格者の内、数名いた高卒者が他大学合格でそちらに流れたためか1名もおらず、高専卒1名以外は大卒以上となっています。年齢は20〜28歳迄で、平均年齢は昨年より1歳下がり、24.2歳です。毎年のことですが、社会人経験者などは学生の中で自分が一番年長になることを恐れています。しかし、年齢差があることを生かして、年長者がうまくリードして雰囲気の良いクラスにして欲しいと願っています。



視覚障害学科

 平成14年度、視覚障害学科には12名の新入生を迎えた。内訳は男性5名、女性7名で、近年には珍しく男女比が近い。また、今年度の特徴としては新卒者が3名と少なく、平均年齢は26.3歳と、若干高めである。
 大学での専攻は社会系4名、文学系3名、教育2名、その他心理1名、美術1名、語学1名という内訳になっている。平均年齢が高い分社会経験のある人が多い。お互いが刺激になる個性豊かな集団に育ってくれることを期待している。



手話通訳学科

 昨年2年制に移行し、初めて先輩がいる状態で入学してきた新入生15名。最年長タイ記録の47歳から、大学新卒の22歳まで、さまざまな経歴をもつ学生たちが、一足早く勉強を始めた先輩たちとともに、手話通訳をめざして勉学に励んでいます。まずは基礎を固めるために、毎日毎日、手話のシャワーを浴びているところです。



リハビリテーション体育学科

 本年度の入学者は男性3名、女性3名の計6名です。平均年齢は22.8歳で、昨年より3歳ほど若返りました。入学者全員が保健体育の教諭免許状を取得しています。個々について見れば、健康運動実践指導者をはじめ、留学経験者、キャンプインストラクター、野球・ホッケーを得意とする者、スペイン語会話を特技とする者などがおり、なかなか個性的な面子が揃っています。人数の少なさを、若さとそれぞれの個性でカバーしてくれることと思います。すでに、2385時間あるカリキュラムの中に身を置いているのですが、基礎体力の高さを武器になんとかこなしているようです。






学院在籍状況(平成14年4月4日現在)
学科名 1学年 2学年 3学年
言語聴覚学科 30 31 61
義肢装具学科 10 8 11 29
視覚障害学科 14 12 27
手話通訳学科 16 12 28
リハビリテーション体育学科 7 11 18
77 74 11 162

(単位:人)