[病院情報]
第三機能回復訓練部紹介
 



◆歴史・概要

 昭和54年のセンター開所時より後れて昭和56年4月に眼科が開設され、次いで第三機能回復訓練部(以下「三訓」と略す)は昭和58年10月に開設されました。第三機能の第三とは開設された順番の意味であり、視覚機能とは何の因果関係もありません。我々の部署の特色として、一般眼科診療の他にロービジョンクリニック:Low Vision Clinic(以下「LC」と略す)があります。LCは昭和60年10月に開設され、昭和63年10月に生活訓練専門職が専任で配置されてから、眼科医、視能訓練士、生活訓練専門職、ケースワーカーという現スタッフ体制で本格的なロービジョンケアが行われるようになりました。そして平成4年7月の新病棟開設に伴い、ロービジョン者の入院訓練がスタートし、患者の多様なニーズに対応可能となりました。



◆ロービジョン

 ロービジョンという用語は、1950年代に米国で生まれ、1980年代から日本でも用いられ、最近の医学界では、ロービジョンは視覚障害と同義語として認知され始めています。1997年に世界保健機構(WHO)はロービジョンついて、「良い方の眼が矯正で0.05以上0.3未満の視力に相応する」と定義しています。しかし、視力だけでなく視野の評価も重要であり、当LCの患者の中で半数近く占め、施設入所者の約20%を占める網膜色素変性患者は視野狭窄を伴い、視野障害だけで障害者手帳の認定を受けられます。また法律的に視覚障害者に該当しなくても、視覚的に日常生活において困っている人は少なくありません。したがって「ロービジョンとは、成長・発達あるいは日常生活および社会生活になんらかの支障を来す視機能または視覚である。」と定義されています。我々のLCでのケアは「見えにくい」ために起きる日常生活上の問題を解決していくのが目的です。



◆業務内容

 LCの流れは、原則一日一人の患者に対して、まず医学的リハビリテーションとして、医学的評価、病気に関する相談を行います。併発白内障などで治療が必要であれば手術を検討します。さらに残存視機能を評価し、視能訓練士が読み書き用のルーペ、あるいは眩しさを軽減させる遮光眼鏡などの光学的補助具の選定をし、視機能活用訓練を担当します。次に社会的リハビリテーションとして、心理・社会的相談、社会適応訓練の日常生活動作(ADL)訓練、歩行訓練、コミュニケーション訓練をケースワーカー、生活訓練専門職が担当します。医学的リハビリテーション、社会的リハビリテーションが両輪となり、同時進行で連携をしながらケアを行い、患者の就労・就学の継続、家庭生活への復帰等の社会復帰(現状復帰)を目的とします。
 三訓の大きな年間行事として、眼科医を対象にしたロービジョンの研修会という目的で、平成3年より「視覚障害者用補装具適合判定医師研修会」を行ってきております。修了者が100名以上にのぼり、全国の眼科にLCが広まっていることに大きく貢献しています。その修了者が中心となり、2000年という21世紀の幕開けに日本ロービジョン学会が設立されました。昨年の日本眼科医会のテーマとしてもロービジョンが取り上げられました。昨今の新聞・テレビなどのマスコミによるロービジョンの報道が、ロービジョン患者だけでなく、一般市民への啓発となり、ロービジョンに対する関心がますます大きくなっています。
 三訓はLCの普及だけでなく、LEDを用いた点字ブロック等の開発や、ロービジョン者に見やすいサイン(表示看板)の研究などロービジョン者のコミュニケーションに関する基礎的研究にも携っています。



◆展望

 ロービジョンケアでは患者の主訴の一つ一つに耳を傾け、そこから患者のニーズを聞き出し、そのニーズを解決してあげること、あるいは日常生活に問題が生じれば、その時その時に問題解決を最優先で考えることが基本的なスタイルであります。現在のLCの隆盛も三訓スタッフがチームとして地道に取り組んできたことが実ってきているためと認識しております。
 昨年4月から前任者との交代で中西生活訓練専門職が赴任し、新しいスタッフとして石山さん、小林さんが中西先生をサポートしています。さらに今年から秦Dr、米澤Drの眼科レジデント二人が加わって眼科医が倍増し、三訓スタッフも増えました。病院新館の最北端、暗く寒いこともありますが、メンバーは簗島部長を筆頭に、皆さん明るくにぎやかです。このチームワークを武器に21世紀に求められている患者主導(patient-oriented)の医療をフィロソフィに掲げ、我々は日々精進しております。



第三機能回復訓練部の皆さん