〔国際協力情報〕
国際協力セミナー
身体に障害を持つ人々に対する国際協力 〜今何が求められているか〜
管理部企画課



 去る2月14日(金)に当センターにおいて、国際協力セミナーを開催いたしましたので、報告いたします。
 当センターの役割の1つとして、リハビリテーションの技術や知識に関する国際協力がありますが、現在はセンター内の国際協力事業推進本部を中心に活動を進めています。国際協力を行なう際、最も重要な要素として相手国、地域のニーズを知る必要があります。これまで、アジア太平洋地域に対する様々な調査や研修員からの情報を通じてニーズを掘り起こす事をして参りましたが、より実践的な観点からの情報を得るために、日本人でこの分野の専門家に意見を聞くことも非常に重要なことであると考え、今回のセミナー開催に至りました。
 講師は、国際組織での活動をされている方、障害の分野における豊富な実践経験をお持ちの方、国が行なう国際協力の立場の方の3名により、以下のテーマによる講演とディスカッションを行ないました。

第1部 講演会
 1 「アジア地域における協力の観点から」
    松井 亮輔氏 RI副会長(リハビリテーションインターナショナル)
           北星学園大学社会福祉学部教授

 2 「ICT分野における国際協力」
    河村 宏 氏 (財)日本障害者リハビリテーション協会
              情報センター長

 3 「JICAのアジア地域における国際協力の現状と今後の方針」
    鈴木 規子氏 国際協力事業団企画・評価部
            環境・女性課長

第2部 ディスカッション
   松井氏、河村氏、鈴木氏、佐藤総長、山内研究所長(司会:寺島)


 第1部の講演会においては、松井氏からアジア太平洋地域の現状として、この地域において日本の関わりが多い所と太平洋地域の島や北・中央アジアのようなあまり知られていない地域がある事。世界の障害のある人々の内の6割近い人数がアジア太平洋地域にいて、必要な医療、リハビリ、福祉サービスを受けられない人々が多い事が報告されました。また、昨年開催された、アジア太平洋障害者の十年最終年ハイレベル政府間会合での今後取り組むべき課題、障害者の権利条約制定への動きなど、最新の国際的な動向に関する話がありました。このような状況の中で、当センターに求める役割としては、日本におけるリハビリテーションの中核センターとして全国的展開を視野に入れた方針作り、この分野における国際協力を担う人々に対する知識、技術の伝達と体制作りであるとの意見を述べられました。
 河村氏はICT(情報とコミュニケーションの技術)における最近の状況として、アクセシビリティの問題をあげられました。これは、単にコンピュータに関係する事柄のみならず、言語、経済といった様々な局面に関わってくるとのお話しがありました。近年のグローバル化の中で、障害を持つ人、持たない人が同じ情報、共通の手段を利用できるように、日本は欧米諸国と違う側面(言語、文化の特殊性)を持つ国として、途上国との掛け橋になるような役割を担えるのではないかとのご意見を述べられました。
 鈴木氏は、JICAの障害者支援において、アジア太平洋地域が重点地域である事、これまでの専門家・海外協力隊・プロジェクトの活動実績、NGOとの連携について報告されました。そして今後の方針として、“障害者のエパワメント”(個人が自覚し、自己決定能力、経済的・社会的・法的・政治的な力をつけ、能力を発揮していくこと。)を実現するための国際協力を推進していくとの説明がありました。
 第2部のディスカッションでは、はじめに、佐藤総長から当センターにおける国際協力の実績報告、研究分野での国際的な連携について山内研究所長から説明があり、全員によるディスカッションにおいては、国立リハセンターがアジア太平洋地域における人材育成とリファレンスセンター(障害分野の国際協力に携わる人々にとって照会・情報提供が受けられるセンター)の役割を担う立場であるとの意見が出されました。
 今回のセミナーで議論された事柄、ご意見に基づいて、今後当センターが担う役割を明確にし、世界において役に立つセンターとしての活動を行なえるよう事業を展開していきたいと考えております。

国際協力セミナー ディスカッションの様子