〔更生訓練情報〕
平成15年度理療教育課程入所式
更生訓練所理療教育部理療教育課 柴田均一



 例年になく長く厳しかった冬がようやく終り、春の息吹を 全身で感じられるようになってきたこの日、第24回理療教育 課程入所式が午前11時より講堂において行われた。4月15日 (火)当日は朝からあいにくの雨であったが、専門課程29名、 高等課程11名の計40名の新入所者を迎えて、会場には緊張感 の中にも卒業式とはまた一種違った独特の雰囲気が満ちていた。 それはやはり、様々な不安を抱えながらも三療という新しい世界 に飛び込んできた人達のフレッシュな活力のせいであろうか。
 今年度は旧来の措置制度から支援費制度(利用契約化)に 移行した変わり目の年であり、又、私自身も専門課程1年3組 の学級担任をはじめ新1年生の多くの授業を担当することになって いることもあって、いつにも増して新鮮な気持ちで参加した。
 快いBGMが静かに流れる中、新入所者の氏名点呼、総長式辞、 更生訓練所幹部職員の紹介と式典は滞りなく進行していったが、 最も印象に残ったのは学友会長の丸山さんからの恒例の新入所者 歓迎の言葉である。それはセンターでのご自身の2年間の生活体験 を踏まえ、これから三療の厳しい訓練が始まる後輩達を勇気づけ ようとするエールであり、特に強調されていたのは「明るく元気な 姿勢で事に臨むことの大切さ」、即ち全ての活動の基盤となる自分 自身の気持ちのあり様についてのアドバイスであった。これは私も 日々の教育活動の中で三療師の資質をいろいろな角度から考える時、 かなり重要な要素の一つであると感じている部分である。
 なぜなら、我々三療師という職業人は医療関係従事者のほとんど が本来そうであるように、患者の身体的トラブルのみならずその精 神的な側面までを含め相手と全人的に関わり、受け止める立場に 立たなければならないものだからである。社会構造と人間関係が 高度に複雑となり、人々の価値観は多様化し、超ストレス社会、 引きこもり、きれる若者、荒れる子供達、中高年の自殺の増加、 気分変調障害、メンタルヘルスケア等々の人の心の問題に深く 関わる言葉が日常茶飯のごとくに飛び交い、ある種誰しもが生き ていくこと自体が大変な現代社会においては、施術者自身がその 身体的健康を保持しなければならないのは無論のこと、心の面で も堅固な精神力と柔軟な感性を持つことが職業人として自立し ていく上での大前提となるのは疑いのないところであろう。
 新入所者の方々にとっては、慣れない環境の下でいかにして あん摩マッサージ指圧、鍼、灸の専門的知識と技術を学び修得 していくかということが当面最大の課題なのであろうが、それを 実行していくためには自分自身の心身の状態をしっかりと管理 することが不可欠であるし、早い段階でその意識を確立すること が何にもまして大事な最初のハードルであると思う。そうした 意味で、センター生活スタートの第一歩に当たって先輩から 直接この心がけの部分をコンパクトな言葉で訴えていただい たことは非常に意義深いことであったと思う。
 重要な感覚器であり、心の窓ともいわれる視覚に何らかの 障害を負うということは、一個の生物とりわけ動物である 「ヒト」にとっても、常に社会的存在である「人」にとっても かなり大きなハンディであることはまちがいのない事実であるが、 新たに我々の仲間に加わった40名の新入所者の方々にはなんとか この壁を乗り越え、三療の立派な施術者となるべく訓練に邁進 していただきたい。私も理療教育部の職員としてできる限りの サポートをさせていただくつもりである。


平成15年度理療教育課程入所式の様子